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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
一章 ~龍の神子~
28/154

『いざ、火山へ突入!』

「ここがゼルタール火山かぁ。でっけー・・・」



そびえ立つ巨大な火山にたどり着くまでに、山を一つ越え、そして、ついた


その火山は富士山のような綺麗な形では無い


雪も、植物もない、ただただ荒れた岩場のような山であった


頂上からゆっくりと白煙が上昇しては風に流され消えてゆく



「坑道の入り口はもう少し先だ。そこから頂上近くまで通じている。一端そこから外に出てそのまま頂上まで向かうがそれでいいか?」



レイルが皆に移動通路を説明する


遠くに小さな穴が見える


そこがおそらく入り口なのだろう


外側を上るのはほぼ不可能といってもいい


ゴツゴツとした岩肌が、頂上までの道のりを拒むかのように存在しているため移動は火山内部の坑道を使うことになっている


坑道自体はもう使われておらず、火山ということで温暖な坑道内部には魔獣が居ることが予想される



「というわけで決して離れるなよ二人とも」


「いえっさー!」


「それ返事か?」


「イエス!いざ、火山へ突入!」



なんだか意外と一条さんはノリノリだった


まぁ元近衛隊隊長と魔術師の第三位、それに治癒術の仕える人が居るならたぶん大丈夫だろう


あれから順調に進んだ俺たちはシトレの森を抜け、山を一つ越えた


森を抜けるのに半日、山で野宿をしてその次の日にはこうして目的地にたどり着いていた


とはいえ本当の目的地はもっと上なのだけれども


坑道に入ると外とは違い、とても暖かな空気に包まれていた


亀裂の入った壁から白い煙がわずかに漏れている


壁に触れるとほんのりとした暖かさが伝わってきた



「にしても暗いですね」



松明を片手に俺はつぶやいた


坑道内に光りは届かない


上へ上へと上る道を照らすのは二本の松明のみ


先頭を照らす俺の光り、それと足下を照らす一条さんの松明だ


レイルさんとセルディアさんには護衛を頼んでいるので両手をあけておきたいと二人が言ってきたからだ


だがまだ魔獣には一匹も出会っていない


肩に止まるソーレは今は肩には止まっておらず、空をパタパタと羽ばたきながら俺の頭上をゆっくり飛んでいる



「お、最初の魔獣だ。危害は加えんから安心していいぞ」



レイルさんが前方を指さした


俺は持っている松明で少し先を照らす


そこに居たのはピンクっぽい毛をした生き物だった


見た目はまん丸でフワフワとしていて空気中に漂っている


丸い目が俺たちを見つけるやいなやゆらゆら揺れながら闇の奥へと消えていった



「何ですかアレ?」


「フモモっていう魔獣よ。ペットとして人気があるの」



シェルディさんが答えた


なんかうっとりとした目でフモモを見つめていたような・・・



「暖かい場所に居て熱を食ってるんだ」


「熱を?」


「正確には食っているというより取り込んでいるってのが近いな。熱を吸収して冷気を放出する生き物だ。ここがまだ使われていたときに大量の熱を和らげるために使われていた奴が野生化した、あるいは野生のフモモが火山の熱に引かれて坑道に住み着いたかのどちらかだな」


「なんか地球温暖化に貢献しそうな生物だな」


「それに可愛い〜」



一条さんもうっとりしていた



「あいつが居るからここも暑すぎない温度に保たれてる。そのおかげで魔獣も住み着く。坑道内にも生態系ができあがるわけだ。熱を取り込み、生き物が住める環境になって、そして新たに住み着いた生き物を食べる生き物が住み着いて、そして死んだ生き物は坑道内にマナを残して小さな生物によって土に帰る」


「死んだらマナになるんですか?」


「いや、魔獣は人間とは違って元から魔力を持っている。つまりマナを取り込み魔力にしなくてもいいわけだ。新たに魔力を取り込むには魔力を持つ魔獣を食らうしかない。だがそれは肉体にとけ込んだ微量の魔力しか取り入れられない。ということはだ、残った魔力は大気中に放出され、そしてそれはマナへと戻る。さて!そのマナを吸収するのは何か?分かるか?」


「え、ここで聞いてくるんですか!?」


「何事も学習学習。さ、なんだと思う?」



突然の事でちょっと驚きつつも俺は考える


魔力を吸収するのは何か?魔獣は取り込めないっていっていたし人間は違うよな


魔獣がマナを取り込むには魔力を持った魔獣を食べるしかない


そしてその行き着く先



「植物・・・ですか?」


「あー、惜しいっ!!」



く、はずしたようだ


いい線行っていると思ったんだけどなぁ



「一条さんはどう思います?」


「え、私!?突然振らないでよー・・・。うーん、そうだなぁ。たぶん草も魔力を多少持ってるとは思うんだけど、それを二酸化炭素や酸素みたいに呼吸や光合成のような取り込み方じゃないとすると・・・やっぱり土の養分からだよね」


「お!」


「答えは土・・・かな?」


「お見事!ズバリ、土なんだよ!」



わーぉ、当てちゃったよ。すげー


一条さんは恥ずかしそうにしながらもうれしがっている



「魔術師でもそうだが土はマナを吸収するんだ。ほら、土の魔術師でも言えることだがマナや魔力を感じる力が高いだろ?」


「あ、そういえばそうですね」



気づくのが少しばかり遅かったか


もう一歩踏み出せば答えだったんだけどなぁ



「あー、悔しい・・・」


「ほっほっほー!私の勝ちよっ!!」


「ぐっ・・・」



なんか悔しさが倍増したんっすけどー?


ふふーんと自分が上位であるかのように振る舞う仕草に俺は悔しさをかみしめる


レイルさんもシェルディさんも口には出してはいないが笑っている



「あ、また分かれ道」



俺は目の前にあらわれた二つの道を前にして脚を止めた


坑道内に入ってこれで何度目の分かれ道だろうか


坑道内は深く入り組んでおり、こういった分かれ道が沢山あった


とりあえずこの坑道が使われていた時期の人に譲ってもらった地図を元に進んでいる


俺は松明をレイルさんが出した地図に近づける



「ここは左か」



レイルさんは左の道へ向かって歩き出す


俺は松明を少し上にやって奥まで照らしてあげた


地図が合ったから迷わず進めているが、無かったらどうなっていたことか


ここに来るまでで一度、6本に分かれた分かれ道に出会った


地図がなかったら絶句物だ



「っにしても複雑よねこの坑道」



一条さんがつぶやいた


確かにそれは言えるな


いつになったら外に出られるのやら



「そうだな。昔は良質の鉱石が沢山採掘された場所だったんだ。大陸唯一の活火山だ。ここでしか取れない鉱石とかも合ったらしいが、今はもうほとんど取り尽くされているらしい」


「だからもう使われてないんですか?」


「まぁな。もしかしたら取りこぼしのもんがみつかるかもしれんぞ」


「ツキはそれが目当てなんだっけ?」


「まぁあれば儲け程度の気持ち」



なんかツキが空気なのは気のせいか?


まぁ発言回数少ないし、物静かな性格だしな


こういうのってクールっていうのだろうか?



「お?」



先を歩くレイルさんが声を漏らす



「どうかしましたか?」


「いや、地図にはない場所に出ちまってよぉ。この先も同じような通路が広がってるはずだよな?」


「地図ではそうなってますよ」



一条さんが地図を広げる


確かに現在地は通路のはずなのだが、目の前には巨大な空間ができていた



「なんでしょうね、ここ?」



最後に広間に入ったシェルディさんが首をかしげた


頭上が大きく抜けた広間の天井は、持っている松明では光が届かないほど高い場所にある



「声が結構響くな」



セルディアさんも見えない天井を見上げた


セルディアさんの声が巨大な空洞に反響する



「がーっ!カウガァ〜ッ!!」



突如ばたばたとソーレがせわしなく羽ばたき始めた



「お、おい、どうした?」


「ガウッ!!カァッ」


「危険?」



危険って・・・何か居るのか?


ソーレが大きく息を吸い込んだ


もしかしてこれって・・・


そして大きく歯を打ち鳴らし、そして



「ガァッ!!」


「うぉー!火吹いた!!」



口の大きさからは想像もできない、握り拳二つくらいの大きさの火球がソーレの口から飛び出した


火球は頭上に放たれ、火の放つ光が壁を照らしながら上昇していき、そして何かに当たる


その瞬間に火球は爆発して周囲を照らした



「げ!?」



一瞬、天井が光で包まれ、そして俺たちはその存在に気がつく


赤い4つの目が、俺たちを見下ろしていた



「よく気づいた!お手柄だっ!!」



セルディアさんはソーレをほめると杖を振りかぶった



「走れ!この先の通路を抜けたところで待っていろ!」


「私は戦えるから残りましょうか?」



ツキが残ることを提案するが



「いや、もしもの時のために護衛についていてくれ。あっちは誰も戦える奴が居ないからな」


レイルさんはそう言って背負っていた剣を構える


俺が松明で奥を照らすと横穴が続いている場所があった



一条さんとシェルディさんは一目散にその穴に向かって走っていった


その後をツキが走ってついて行く



「あ、危なくなったら戻ってきてくださいね!」


「もちろん!足止め程度にすませるつもりだ。いいから早くいけ!」



俺はレイルさん達を振り返ることなく横穴へと走り抜けた


その直後、大きな地鳴りと共に、松明で照らした広間に立ちこめた土煙が二人の姿を消してしまった







「あーあー、ついてねぇなぁ!」



剣を構えて3人が横穴にたどり着くのを見守り、最後にアヤキが駆け込んだのを見て視線を上に戻す


その瞬間、大きな揺れとともに何かが上から落ちてきた


土煙が周囲の視界をさらに悪くさせた


真っ暗な上にここまで煙がすごいともはや何も見えない


レイルは小さな小石を拾い、壁に向かって投げつける


カツーンと音を立てて、石が壁に当たる


そして大きなドスンドスンという音と共に、見えない何かがその音のした方向に歩いていく



「万雷よ、幾万の槍となり、敵を貫け!イラディアント!!」



煙の奥に雷光の玉が浮かび上がった


その光はバチバチと音を立てて周囲を照らし出した


煙の中に、巨大な影が浮かび上がる


昆虫を思い浮かばせるような四肢、そして巨大な二本の鎌



「アラミアント!!やっぱりか!」



ズドオオォォンと大きな音と共に、雷光が一気に放射状の無数の雷となり敵を貫いた


砕けた甲殻が周囲にはじけ飛ぶ




キュォォォッ!!!!



雄叫びが広間に響き渡る



「おし、もう一発撃て!次に俺が突っ込む!」


「万雷よ――――」



俺は土煙を剣で吹き飛ばす



「幾万の槍となりて――――」



剣を構え、腰を落とす



「敵を貫け!!」



雷光が敵を再び浮かび上がらせた


赤い四つの目が俺を睨んでいた



ズドォォン!



放射状に広がる雷が、敵の右前足と両手の鎌を吹き飛ばし、残った雷はすべてアラミアントの体を貫いた


巨体が地面に倒れ伏し、そして・・・・



キュォォォォォォンッ!



もう一つの鳴き声が、遙か頭上から俺たちの耳へと届く



「もう・・・一匹!?」



すでにセルディアは頭上に向けて攻撃態勢をとっている


俺は目の前の傷ついたアラミアントを仕留めにかかる


剣を構えて俺は走り出す


未だ体を貫かれてなお、体を動かそうとするアラミアントの体には電気残っているようである


微弱な電気を放電しているアラミアントの右後ろ足を蹴って振りかぶる



「―――ライジングアロー!!」


「紅蓮輪月!」



魔剣であるこの剣の属性は火


後ろで天井に向けて雷を放つセルディアの後ろで、剣にいくつもの魔術が込められているうちの一つを発動させる


剣が炎に包まれ、そしてそのまま一気に縦回転をする


体の上に着地し、まっぷたつに縦に裂けた足が地面に落ちる



「確かこのあたりが心臓だったかな。紅蓮炎衝!!」



キースイッチである言葉を発したとたん、再び剣が炎を纏う


炎の剣と化したその柄をしっかりと握りしめて逆手に持ち帰る


そして大きく振りかぶり、割れた甲殻の裂け目に剣を突き立てた


その瞬間、大きく剣から炎が吹き上がる


突き上げるかのようにして吹き上がるその炎は使用者に対しては効果をなさない


俺は炎に飲み込まれつつも力一杯剣を押し込む


肉が焼けこげ、アラミアントが悲鳴を上げる


炎が高く吹き上がり、そしてその炎が消えると俺は剣をアラミアントの死体から引き抜いた



「仕留めたぞ。そっちはどうだ?」


「ちょこまかと・・・」



天井にはいくつも穴が開いていた


天井から光が差し込んでいる



「上はもう外なのか。っていうかあそこまで上らないといけないのかよ」



目指す場所はまだまだ先か


天井を器用に移動するもう一匹のアラミアントは飛んでくる雷をよけつつも相手が隙を見せるのを待っているようにこちらを見つめている



「じり貧だな」


「うっさいボケ!黙っとれ!」


「そうかりかりすんなよ」



とは言ったものの、雷をよけるとはなんつースピードだ


前に一度戦ったときはさすがにふつうの剣一本でかなり苦労した覚えがある


暗闇を住処にして、見た目よりも恐ろしい自慢のスピードと両手の鎌で相手を仕留める


四つの赤い目は暗闇でもちゃんと機能するため相手の方がどちらかというと有利ではあるが・・・


天井が抜けて光が差し込んできているためこちらからでも何とか相手を黙認することはできる分、遠距離攻撃できているこちらが有利ではあるな


近づけばそのぶん攻撃が当たりやすくなるからうかつに近づいてはこないだろう


まぁ確かに雷の魔術師だからマナ不足になることは無いと思うが・・・


雷のマナというものは非常に少ない


空や雲、雷が落ちた場所になら多少はあるだろうが、そもそも雷のマナは希少性が高い


いつどこで戦うかわからない戦場などで使うとなれば大変不利である


だが雷の魔術師は雷のマナ以外にも、他の属性のマナを取り込むことができる


雷の魔術師が持つ特性、取り込んだマナは、体内で魔力に代わる際に雷の魔力になる


これのおかげで雷の魔術師はどこでも雷属性の魔術を使用できる利点がある


ただし通常よりも多めのマナを消費しなければならないが


と、俺が天井を見上げているとき、突如穴の奥を影が通り抜けていった


つまり、外で何かが、穴を覆い隠すほどの大きさをした何かが飛び抜けていったのだ


ここで、そんな大きな生物が居るとしたら、それは―――――――――








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