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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
一章 ~龍の神子~
26/154

『合流』

今回の話は視点切り替えが多いため、切り替わるときには◆のマークを入れてあります

レシュトール


レシュトールは村の名でグレアント王国最東端の村である


山一つ越えれば隣の国、カナンに行くことが出来る


そしてその村の隣に立つ巨大な山、それがゼルタール火山である


山を越え、麓に降りた時点で向こうの領地のため、ゼルタール火山自体はカナンのものではなく、完全なグレアント王国の領地である


そして王都側の麓に広がる巨大な森、シトレの森の入り口にその村は立っていた


つい先日から依頼していた魔獣の掃討をしにきたらしい


村としては最近魔獣による農作物の被害が酷く、それを押さえられないことに手をやいていた


何度か人材不足で申請を退けられたものの、やっと王都から使者がやってきた


彼らは滞在初日で被害のあった場所や時間帯などを調査し、次の日からは魔獣の討伐に当たっていた



そしてそれから3日目の夕刻・・・



「よし、比較的被害の大きかった2カ所は何とか出来た。他の出没ポイントはばらつきが見えるからこちらは一匹一匹群れからはずれた奴が現れていると思われる」



部隊長をつとめるセルディア・カルノンは大きな地図を前に部下達と共に今夜行う作戦の手順を再確認していた


一昨日、前日と続いて主だった出没ポイントで待ち伏せをして見事討伐に成功している


残った魔獣の出没場所はばらつきがあり、発見した回数も少ないことから群れとは別行動を取っている魔獣と思われる


数は不明だが村の近くにいた魔獣は大方二日間で殲滅したと言っても過言ではない


残った数匹の魔獣をどう仕留めるか


大きな森の中で探すのは分が悪いとみて逆にこちらからおびき寄せる作戦をとることにした


村の食料の一部を分けて頂き、畑の真ん中に設置する


そこで先に土魔法を使える部下が土の中に巨大な空洞を作り、落としてから総攻撃するという罠を考えた


実戦訓練という意味もあるこの遠征で、何処までスムーズに戦場作りが行えるかもまた、重要なことの一つだ


一昨日は広いところで戦闘を行い、補助効果で身方の攻撃力を上げつつ一気に殲滅する連係プレー


昨日は森の中という視界の悪い中での戦闘するという特殊状況下での戦闘の仕方


後者は流石に夜になると危ないので昼間に行った


初日の大規模な殲滅作戦により、警戒して森から出る気配のない魔獣達を倒すために仕方が無い行為だったがまぁいい経験にはなっただろう


そして今日


敵より早く戦場に来て前もって罠を作り、戦況を有利に進める戦闘訓練



「今日はおそらくそれほど危険な戦いにはならないだろうと予想している。とはいえ夜闇の中での戦闘は二日目の時に感じたと思うが危険が付き添っている。相手はこちらとは違い、夜でも目や鼻がきくからな」



今回相手にするのは夜行性のグレイ


昨日一昨日と二つの群れにはきちんとボスグレイがついていたが初日は一気に殲滅した事により被害はゼロ


次の日は森の中での遭遇だったが運良く昼寝中であったのでこちらも問題なく殲滅に成功した


大きな群れが無くなり、おそらくボスグレイはもう出会うことは無いだろう


森の奥にいるのは管轄外であるし、ここまで出てくることも無いはずだからだ



「いいか、絶対に気は抜くな!確実な勝利など無いと知ることが大事だ!相手は獣だからいいがこれが人間だった場合、相手は裏を、裏の裏をかいてくる事など当たり前で油断は速、死に直結する」



メンバー全員がごくりと唾を飲み込む



「訓練といってもこれは実践以外の何物でもない。いいか、勝利は我らの手に!」


『我らの手に!!』



全員が杖で地面を突き、復唱する



仮設テントをでてセルディアはすぐそこに見える森の奥を見つめる


が、もう当たりは薄暗い


夜は、すぐそこまで迫っていた





「おっしついた〜!」



両手足を大きく伸ばして真っ先に地面に降りたのはレイルであった


ドスンと音を立てるかのようにその巨体はしっかりと大地に脚を踏みしめた


綺麗な月が空に浮かんでいる



「なかなかに空気がきもちいな。とぅっ!!」



続いて唯さんが馬車から飛び降りる


びしっと脚をくっつけ両手をYの字に広げた



「10点10点10て〜ん。わー・・・」



俺は頭をぼりぼりと掻き、やる気のなさそうな声を出して拍手をしながら馬車を降りた


なんでこう女性って話に花が咲くんだろうね


一行に終わりの見えないお話の旅からやっと解放された・・・


ここにつくまでの間、ずっと女性三人は世間話のような事をしていた


意外にもいつもは静かだったツキが会話に積極的に参加したのには驚いた


俺の勝手な偏見だけどツキってなんかクールとか静かってイメージが合ったんだがなぁ・・・


所詮は女かっ・・・


何処の世界もこんな感じなのかな


ちょくちょくいじられて少々つかれた



「さて、セルディアは何処かな」


「レイルは何年ぶり?」


「あれ以来合ってないからなー」


「あなた理由も言わずに消えたものね」


「それが男だ」


「ちげーよ」



とりあえず反論してみる


馬車を止めて小さな村の前に全員が降り立つ


小さい家が沢山あり、ガラスの内側から暖かそうな光が漏れている



「ここはやっぱり村長当たりにきいてみたらどうですかね?」



俺の提案にレイルはぱちんと指を鳴らす


いや、こう、ゲームとかではよくありがちな事だと思うけど


てか気づけよ


レイルはどたどたと駆けていき、とある家をノックする


少しして中から老人が一人でてきて何か会話をしているようであった


そして老人は家の中に消え、レイルは手を拱いて俺たちを呼んだ



「町はずれのシトレの森の入り口のところで夜営してるってさ」


「じゃぁ行きましょうか」




そして数分、小さな村のはずれに行くまでにはそれぐらいしかかからなかった


たどりついたそこには3つの白いテントが立っていた


だが人影はなく、どうも無人のようだ


おそらく魔獣の討伐に行っているのだろうと思う


悲鳴が聞こえたのはそのときであった





「天来のいかずちよ、一筋の光となりて、敵を穿て!ライジングアロー!!」



高速で紡がれた呪文と共に、10本もの雷撃が矢の如く放たれた



「業火の炎よ、灼熱の風と衝撃と共に、敵を飲み込め!ボルテックブラスト!!」



炎が現れ、巨大な渦が出来た



「命の水よ、我らに聖なる結界と、悪を退ける力を!アクアプロテクション!!」



巨大な聖水の結界が周囲を包み込む


雷の矢は暗闇に消え、炎の渦は大地を焦がして消滅し、近くを流れる川で周囲を取り囲んで作った結界に、巨大な閃光が走る


迸る閃光はすぐさま消えるが殺気だけは未だに残っている


周囲を、何かが取り巻いているのだ


グレイではない、何かが



「くそっ!何が起こっている!?」



セルディアは歯ぎしりをしながら再び杖を構える


何かに向かって攻撃を放つも、何一つとして当たらない。手応えが全くないのだ


空中に向かって攻撃をしているかのように感じられるが、確実にそこには何かが居るのだ


なのに・・・



「何故何もいない!?」



先ほどから結界を張り、攻撃が止むと同時に魔法を放っているのだがどれ一つとして敵を捕らえることは無かった


だが結界を張らなければ今頃全員血祭りに上げられていたはずだ


待ち伏せの時、念入りに周囲に結界を張ってもらって居なければ、敵の襲撃に気がつくことは出来なかった


奴らは、餌ではなく、私たちを狙っている・・・・!


いや、むしろ私たちが餌か


うかつだった?否!そんなはずは無い!


見えない相手にセルディアは翻弄されて頭が働かなくなっていた


焦りが彼女の思考能力を低下させている



「くっ、仕方ない。今のところ退魔の属性を持つ聖水でリリアに結界を張ってもらっているがこれでは膠着状態が続くだけで事態の打開には至らない。何しろマナの消費が激しい。よって朝まで待つ時間は無い」



現状、リリアが持ってきていたアルデリア産の退魔の聖水を魔術に混ぜて何とかしのいでいる


が、その聖水にも、そしてもちろんマナや魔力を作るための体力にも限りがある


こちらの攻撃が効かないという事は敵がそもそも存在していないとしか考えられない


魔術の無効化出来るのは龍族ぐらいであり、こんな芸当ができる魔獣なんてきいたことが・・・



「おー、いたいた」



背後から声がする


男の声だ


いつの間にっ!?


振り向くと結界の外に男女数名の姿が見える


そして聞き覚えのあるその声


数年ぶりに聞く


懐かしい・・・


そう思うより先に口が動いた



「に、逃げろっ!いや、リリア、結界を解除して・・・」



彼らを結界の中に・・・そう言おうとしたが


バチバチバチッ


先ほどから嫌と言うほど何度も聞いた音と閃光が再び当たりを包み込む


それでやっと彼らも異変に気がついた用で・・・・



「はぁ〜。そりゃまぁ気にはなってたんだけどさ」



先頭に立つ大男は大きなため息を一つついて背負っていた巨大な幅広の剣を持つ


そして閃光の出所の真横まで行って剣を大きく振りかぶる


片手で振りかぶれるほどの大きさでは無いはずなのだが剣が幅広と言うだけでそこまで厚みが無いことと、男の筋力で無理矢理といった感じで振りかぶっているように見える


そして



バスンッ!!



大きな音を立てて見えない何かが切れる



あっけにとられる私たち


そして男は再び大きく剣を振りかぶる


森の方向へ剣を横に薙ぎ払う


またしてもバスンと大きな音を立てて何かが切れた



「結界解除していいぞ〜」



そう言いつつ男は何度も剣を振るう


その度に同じように大きな音が周囲に弾ける


水の結界が解除され、皆よく分からない様子では合ったがホッとしているのは分かった



「お前・・・」


「よっ、久しぶり」



片手をあげつつもう片方の手を空中へ振るう


懐かしさがこみ上げてきて、それと同時に怒りもこみ上げてきて


ガツッ


とりあえず杖で殴っておくことにした







「ぐほ・・・」



セルディアが持つ杖のさきっちょでごつんと脳天を叩かれる


片手で頭を押さえつつも右手で剣を振ることを忘れない


というよりこんな事で何やってんだこいつら



「いってぇ・・・ってか初っぱなからそりゃねーぜ・・・」


「五月蠅い!突然居なくなって!!私がどれだけ心配したかわかってんの!?」


「知るか!てかお前が心配する姿とか想像できんわ!」


「な ん で す っ て ! ?」


「ったく、ちょっと見ない間におとなしくなったかと思えば未だにこれか?ちったぁ成長しろよな!身長、性格、アンド胸っがあっ!?」



今度は正拳が鳩尾にきまる


後ろでアヤキがジャーストミートォゥとかほざいているがもう痛くて痛くて聴いている暇など無かった


どさりと崩れ落ちる俺


そしてふんとつれない顔で俺を見下ろすセルディア


せっかくの再会にそりゃねーぜ・・・・



「っぐ・・・そんなことよりお前・・・何やってんだよ」


「あんたを地面にひれ伏させてあげてるの」


「ばか、ちげーって。あんなところで結界出すからにはなんか合ったんだろ?」


「む、あんたが斬ってた見えない何かの襲撃」


「襲撃って・・・やっぱりバカだな・・・っと。お前、あれが何かわかんなかったのか?」


「五月蠅いわね。もう一回沈むか?」


「か、勘弁勘弁。冗談にしてもおもしろくねー」


「冗談に、聞こえる?」



にっこー


あ、本気か



「もう、俺にはそんな体力残ってない」


「で、何あれ?」


「・・・殺気だよ」



あれぐらい見極めろよな第三位



「殺気?」



っていうかもう俺をにらむの止めろ


なんか悲しくなってくるわ



「妙なものに惑わされすぎなんだよお前は」


「な、何よ」


「なるほどね。聖水混じりの結界を張って見えない殺気に向かってわざわざ魔力を使って攻撃してたと。こんなばかばかしいことよく出来るな」


「五月蠅い!結界に引っかかったら何か物理的なものが攻撃してきてると思うじゃない!第一あんただって今こうやってその殺気とやらを斬ってるじゃない!害のない殺気ならそんなことしなくてもいいはずよ!」



おーおー、自分の勘違いを正当化しようってか


せっかく行為でやってあげてる事なのに


まぁこいつらにはちと経験させておくのも悪くはないか


ここまで巨大なのもまた出会う経験は無いからな


まぁセルディアが殺気と分からなかったのも無理はない


普通は殺気なんて結界に引っかかるものじゃないから・・・、いや、聖水の成分が結界に混じっていたから引っかかったのか?


まぁどちらでもいい。そんなことはさしたる問題ではない



「しゃーねーな。じゃぁ俺がこの殺気を斬るのを止めてやる。せっかくの行為を無駄にしやがって。あ、別に怪我するとかじゃないからあまり驚くなよお二人さん」



異世界から来た二人にはまぁ初めての経験、いや、皆初めてか


とりあえずその二人だけには害のないものと先に教えておく方が身構える余裕もできるものだろう



先ほど俺がセルディアの拳に倒れたときは空気を読んでくれたシェルディがとっさにこの殺気を癒しの魔術で押さえてくれていたが俺は首を縦に振るとシェルディも分かったようでその魔術を解除した


魔術といってもただ単に彼女の魔力を周囲にカーテンのように張り巡らせてあるという簡素なものなのだが


おそらくあそこにいる土属性の魔術師なら見えているだろう


土属性の魔術師はマナや魔力をもっとも視覚として見やすい人材であるはずだからな


真っ白な、それでも普通の人には見えないその魔力のカーテンが消える


そして押し寄せる、殺気





ドンッ!!!







彩輝はとっさに腰の短刀に手を伸ばしかけた


おそらくレイルさんが行ってくれていなければとっさにこの短刀を抜いていたはずだ


それほどまでに感じる恐怖、恐れ、そんなものが針となって突き刺すような感じ



重い・・・



その空気の重さに押しつぶされそうになる


殺されるのではないか


そう連想させるかのような殺気が周囲一体を包み込んだ


レイルさんはさっき、こんなものを斬っていたのか?いや、こんなもの、斬れるのか?


じわじわとにじみ出る汗が滴となり、頬をつたって地面へと消えていった


立っているのが辛いほどに


そしていつの間にか俺は気を失い、そのままその場に倒れた








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