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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
四章 ~古今の異邦者~
132/154

『混ざり合う存在』

アリスと何度か槍と剣を交わせ、決してスピードでは負けていないと確信した。


龍は生物の中で最も速い生物だ。故に龍は風を司るとされてきた。


アリスの魔力を纏う姿はまさしく彩輝と同じ龍の姿を象っている。


確かに彩輝の姿とは細部に違いがあり、魚類のようなヒレが彩輝との最たる違いではあるが、明らかに象っているのは魚ではなく龍である。


何故彼女が神子の力を持っているのかは解らないが、神子に同種が存在しないというならば目の前の彼女は一体何なのだと思いたくもなる。


しかし、彼女も同じ龍の神子の力を持つとはいえ、その能力に差はあるようだと彩輝は剣と槍をぶつけ合いながらも感じていた。


だが彼女を前にした迷いによって、自らの太刀筋が鈍っている事がその差を埋めている事に、嫌でも彩輝は気付くいていた。


しかし、音も気配も消して背後から現れた少女に対しては、全く気がつく事が出来なかった。


いつの間にか目の前から少女の姿が消えていることにも気づけなかったのも、戦場の中にいるという自覚の無さや少女へ剣を向ける迷い、カイを傷つけた九尾の狐へ意識を割いていたなど諸々の理由が重なったことにあった。



『後ろ!!』



そんな彩輝にかわり、剣から伝わるソーレの声に、彩輝が反応した瞬間だった。


腕にまとわりつく水のブレードを避けたと思った瞬間、己の脇腹を掠める槍が彩輝の視界の右下に映った。


それはつまり彩輝の体が抉られたということだ。



「っあ、あああっ!!」



痛みを堪えながら、己を抉った槍を掴んだ。


痛みに堪え、自らの血で滲んだ水の槍を掴んだまま彩輝は翼を広げる。


このまま動きを封じる!


武器を押さえたままなら、捉えられる!


短い短刀に魔力を込めて脳内でソーレに語りかける。



(あの翼と尾を、まとめて斬る!!)



腕を振ろうとしたまさにその瞬間、巨大な爆音が背後から聞こえてきた。


瞬間、気をとられた。


強烈な打撃が、再度彩輝の頭部を襲った。


水の魔力で形成された長い尾が彩輝の体を吹っ飛ばし、揺れる意識と視界の中で爆音の正体を少女の後ろに見る。


あいつは……湖の時の……


少年の体は力なく雪の上に落ちた。






『儂の楽しみを奪うとは、代わりに相手をするというのかの?水の女子よ』



明らかに苛立った口調でアリスに問いかけた。


自由自在に、まるで意識を持つかのように独立して動くその尾に、先程彩輝がつけた傷跡は無い。


自己の回復力は吸鬼以上の力が働いているらしいと彼女は考えた。


ならばこの目の前の魔獣に対し彼女が出来ることはあまり無い。しかし逆に言えば、無くもない。



『ほぅ?似ておるが、真なる水玉は今我の尾ぞ?』


「レプリカ」



懐より取り出した、宝玉よりも僅かに小さな球を取り出した。


レプリカというだけあり、その美しさは本物にはほど遠い。


しかし、必要なのは美しさではない。必要なのは、力の量。


だから、私が……私じゃ無いと……



『そのような出来損ないの石ころで、何をする?』


「ただ、打ち、討つ。貴方を」



大きく振りかぶった少女は、その球を彼女は頭上に放り投げ、そしてその宝玉のレプリカを水のブレードで貫く。


砕けたレプリカがキラキラと舞い落ち、その全てを腕の水が渦を巻くようにして吸い取る。



『随分と安く買われたものだな。何をするつもりかは知らぬが、できるものならやってみよ!』



勝てる存在ではない。


これは、生物が何とかできる存在ではない。


たった二つの宝玉を取り込んだだけで、もはやこの場にいる全員が同時に攻撃したとて倒せる保証は出来ないほどに、強い。


絶対的な上位の存在。


人よりも、吸鬼よりも、魔獣よりも、神獣よりも、さらに上位の存在であることになんら疑問を持たない。そんな存在だ。


――君への命令はただ一つ。蘇った魔獣の目を引き、出来る限り力を消耗させる事だ――


それがニールという男の実験と同時に、強力な肉体を得た私への命令だった。


――私に、死ね、と?――


実験台にすると言ったのは嘘だったのだろうか?それともその実験台としての価値はもう私には無いのだろうか?


――僕の神子の力に対する目的を達成するために必要なのは、君ではなく神の力。といっても用があるのは神獣ではなく、その封じられた最古の魔獣にだけどね――


あの男はそう言って、私を駒として使わせるつもりだった。


確かに、私が心を砕かれ、心を失い、道具となっていたらの話しであったならの場合だ。


あの男の最大の誤算は、心を失った少女の肉体と水竜の器、そこに私の心と彼女の心がが混ざり合った事だ。


自らの体で試すにはあまりにもリスクが大きかったのだろう。


アリスの肉体に宿ったアリス自身の心を壊させ、抜け殻となった肉体に新たなに神子となる為の心と魔力の器となる水竜の魂に、人として時が経ち、意思を失った心を宿らせる。


そういう予定だったのだろう。


だからアリスの肉体を使って実験した。


だけど、私はまだ生きている。鍵屋かぎや安輝早あきさはまだ生きている!!


混ざり合った心は、両者の意思が混ざり合っている。


アリスの心は消えていなかった。消えきっていなかった。故に、混ざり合った。


つまり、私はアリスであり安輝早でもある不思議な存在となってしまった。


まさかね、今目の前にあの妖怪が居るとは正直信じがたいんだけどね。


殺生石てのはこっちの世界にもあったんだね。いや、寧ろこっちが本物なのだろうか?


とはいえ、これもまた運命なのかもしれない。



「花火屋は何れも稲荷の氏子なり」


『む?』



鍵と玉をくわえしお稲荷の狐様が我ら鍵屋の守り神だというのに、今目の前に居るのはかの伝説の白面金毛の九尾の狐だとは。なんたる偶然か、美しい玉まで持っていらっしゃるとは。


これで鍵までくわえていたとなれば、完全に私の守護神じゃないか。


もう少し、運命的な出会いをしたかったものだが。まぁこれもある意味では運命的か。



「さりとて我が子の敵なら討つもやむなし」



どうせ、私のとる行動はただ一つ。


あの少年へはあの男の研究所から掠め取った麻痺効果を起こす毒を流し込んだ。致死性は無いが、それでも強力な麻痺性を持つ。


それもあの九尾の狐と距離を置かせるため。


流石にいくら神子の力があるとはいえ、直接傷口から流し込んだのだからしばらくは動けまい。



「さぁ、始めましょうか。私の七色の火薬と、貴方の九色の魔力、どちらが強いのか。あそこの亀と鶴の絡繰りも、まとめてぶっ飛ばしてあげるわ」



我が子のため、出来る限り体は無事で返してあげたいものだと安輝早は思いながら、目の前の九尾に勝負を挑んだ。


生き残るのは、まだ未来のある地球出身のあの子達。


老い先はもう無いというか、終わってる私が役に立てるならば今しかあるまい。


――ごめんね。もうちょっと、お母さんのわがままに付き合って貰うわねアリス――


――ううん。いいよ。やっと、やっとお母さんと一緒になれたから。私はそれだけで幸せだから――




『儂が石となっていた期間、その間に人がどれほど力の差を覆す知識を得たのか。興味があるの。忘れたものが大きいか、得た物が大きいか、見せてみよ』


「貴方のいた弓矢や日本刀なんて古い時代は終わったのよ。これからは火薬の時代よ」







 「で、あのでっけー亀。どうすんの?」



早苗が仙に聞くが、腰に手をつきため息をついた。



「知るか。魔法でぶっ飛ばせばいいんじゃねぇか?」


「えー、でもマジででかいよ?そんなんでいいわけ?」


「うーん。でもさ、ピクリともしないよね」



巨大な亀が雪を突き破って出てきたはいいが、その後はピタリと動きを止めてしまい三人は困っていた。


逆にそれが不気味さを醸し出している。



「じゃぁ一番手は私が行くね」



唯がポーチから札を取り出し、自信満々の表情で巨大な亀を見上げた。


その頭部目がけて唯は札を投げつける。



「煌めけ、スターシューター!」



札は光と星を散りばめながら流星となって、真っ直ぐな尾を引きながら巨大な亀の頭部に直撃した。


爆音と白煙が巨大な亀の頭部を覆う。


そこへすかさず二枚目の札を投げた。



「爆ぜろ、ビッグボムシュート!」



今度は札が巨大な爆弾となり、回転しながら白煙に隠れた亀の頭部を目指して飛んでゆく。



「おおっ!」



真っ黒な、見るからに爆弾という形をしたそれは直系二メートル以上はあったであろう。あっという間に導火線の火花が爆弾へと到達し、先ほど以上の爆音を響かせて白煙ごと吹き飛ばす強烈な爆発を起こした。


今度は真っ黒な煙が亀の頭部へと立ち込める。



「やったかな?」



爆弾の破片がパラパラと落ちる中、きょとんと首をかしげながら右手を額に当ててのぞき込むようにして唯は亀の頭部に注目した。


ゆっくりと煙が吹雪の風によって流れていきそうになり、その損傷具合を確認しようとした所であった。


キラリ。


無彩色の世界に、何か赤い閃光が光った。



「あ、まずっ、防御防御!!」



唯は慌てて腰のポーチから適当に札を掴み目の前に無造作に放り投げる。


そのうちの何枚かが唯の目の前で光ったかと思うと、『防御』という言葉に反応して巨大な透明の幕が展開した。


そこに、何か光線のようなものが直撃して激しい閃光を放った。



「うおお、やべぇ目からビームでた!」


「お前はさっきから何でテンションあがってんだよ!!」


「何言ってるんだよ!目からビームとかロマンだろ!」


「否定はしんが、頼むからせめて二次元限定でやってくれ!リアルは洒落にならん!」



よくそんなネタにはしゃげるなと思いながらも、仙は自らの彼女の襟首を掴んで唯の後ろに放り投げた。


レーザーは一発だけだったようで、最初の一撃以降の攻撃はしてくる様子がない。



「何なんだあいつ、ビームって、魔法かなんかなのか?近未来的なイメージが強いんだが」


「うーん、分からないけど遠隔物理じゃなくて遠隔特殊ってかんじの攻撃だったよね。まぁ私の札で防げるならまぁ、特に気にする事じゃないのかもしれないけど……」


「しかし、傷一つ無しか」



煙が晴れた今でも、吹雪で視界は悪い。


とはいえ、目視する事が出来る視界はまだ保てている。


巨大な亀の頭部に、傷は無いようだ。



「よっぽど頑丈なのか、それとも何らかの方法で防がれたのか」


「距離があって、しかもこう視界が悪いんじゃねー。確認しづらいよ……って……」



ガゴン



「何今の音?」



何かが外れるような音がした。



「お、おい……」



プシューと音を立てて、突然大きな亀の頭部が開いた(・・・)。



「え?」


「あ?」


「は?」



そこから大量の湯気が立ち上る。


吹雪で湯気が真横に流れていくのがよく見える。


そして、蓋が閉じ、そして亀の頭部が突如ゆっくりと回転し始めた。



「え?」


「なんだ?」


「え、え?」



そして、二本の巨大な腕を横に水平に伸ばした。


回転速度を上げる亀の頭部。


そしてゆっくりと前のめりになったかと思うと、突如移動を始めた。


三人に向かって。




「え、あの、ちょっと……」


「なんかこっちくるんだけど……」


「あいつ、頭が……機械だったのか?」



今ではもはや何回転しているのかも分からない程にギュウンギュウンと超速回転をしている頭部がやけに不気味である。


各々が何を思ったのかは分からないが、最終的にそれは危機感へと直結する。


移動スピードが、上がった!


三人は同時に踵を返し、走り出した。


宙に浮いた状態の直立した亀が首をぐるんぐるんと回転させながら迫ってくる。



「なんか不気味なんですけどおおおおお!」


「どういう仕組みだ畜生がああああああ!」


「こっちくんなばあああああかああああ!」



各々叫びながら吹雪の中、首を回転させながら迫ってきた巨大な亀から逃げまどう。


ピシュン


雪が一瞬にして消え、そこには線が刻まれていた。


流石にまずいと三人は戦慄を覚え、同時に叫んだ。



「「「オ、オーバーアビリティ!」」」




前話のアリスの母親の名前を修正致しました。

そして待たしてもここに来て新キャラ。まぁ三章の後付の伏線回収みたいな感じのキャラですかねー。

もう私ですら全キャラ覚えておりませんorz


物語にしては無駄にキャラクターが多いと思うかも知れませんが、私としてはやはり出会いの中には深い付き合いのある方もいれば浅い付き合いの方もいるかも知れませんし、紹介されても名前だけしってるというような出会いがあってしかりだと思うのです。読みやすさや覚えやすさとしては失格な気もしますがね。

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