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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
一章 ~龍の神子~
13/154

『8人の囚人』




暗い部屋に最後に通されたその女性は腕に石の枷をされていた


白いローブを纏って少女は無表情に進む


自動であいたドアが締まり、招待された者達がすべてそろう


最後にやって来たその女性は17、8ぐらいの年頃で白い髪が足下すれすれまで伸びている


美しい見た目に反して、睨むような、それでいて諦めるような目で部屋を見渡す



「なんだぁ?ゲッカも呼ばれてんのかよ!?」



同じく白い髪をした男がギザギザの歯をちらつかせながら聞いてきた


男は白い髪で顔を隠しており、表情が読み取りづらいがニヤリと笑っているのがわかる


その男も同じようにゲッカと呼ばれた少女と同じように枷をされており、机に座ってこちらを見ていた


頭に何十にも包帯を巻いており、服のサイズが体の何倍もあるように大きく、裾や袖が地面にだらりと垂れている



「・・・悪い?」


「べっつに〜」



机の上に足を上げ、そっぽをむく


暗い部屋には多くの機械が置いてあり、その機械が発する光のみがこの部屋を照らしている


とはいえ、小さなランプのような光のため、明るいとは言えないだろう


長方形の長い机を取り囲んでいるのは今来たゲッカという女性を入れて9名


奥の方に居る者の顔はすでに暗闇で見えない



「収集に応じて頂き、光栄ですよ皆様方」



ゲッカが椅子に腰掛けると、主催者らしき男が声をあげた



「ご託はいいからさっさと用件を話したらどうなんだぁ?」



さっきの男がケケケと不適に笑いながら男に向かって言い放つ


ほかの者達は静かに傍観しているところを見ると、あの男は落ち着きのないその性格がより浮きだってみえる



「今回、君たち第一級囚人達に来てもらったのはほかでもない」



ここにいる者達は皆、ここに誰が集まったのかを知らされては居ない


だが、この顔ぶれを見れば一発でわかる


それほどに有名だからだ


この国で捕まっている囚人達である


それも、国でもっとも危ないと言われる第一級囚人、その全員がこの小さな会議室に集められている


ある意味国内もっとも危ない場所とも言えなくはない



「君たちに頼みたいことがある」


「おいおい、ふざけんなよ〜。俺たちを長年牢獄に閉じこめやがったくせによぉ、頼みを聞いてほしいってか?それなりの報酬はあるんだろうなぁ?」



机を踵でドンと叩いて男は髪で隠れた目で唯一囚人じゃないその男に向かって言い放つ


ほかの囚人達も同じような事を考えているのだろう



「成功した暁には、君たち8人の犯罪レベルを下げ、準2級囚人としての待遇にしてやろうじゃないか。さらにその10年後には監視付きだが釈放してやろう。はれて身柄の自由という報酬を差し上げようではないか。それと、望む者には可能な限りのお金やその他生活の援助をさせてもらうよ」


「これまた大きく出たな」



今度は長身の男が呟いた


顔には継ぎ接ぎの痕があり、その男にもやはり手枷がしてある


この手枷は能力封じの力がある希少な石を削り取って作られたものである


この世界では能力者というのは珍しいものではない


世界の人口の約半分ほどの人間が何かしらの能力を持っている人間で、その能力は生まれながらにして政府に登録する仕組みになっている


この能力と呼ばれるものは一人として同じ能力は無く、約数百年前から発生し始めたと言われている


微々たる能力から、強力な能力などがあり、すでにその能力の発動メカニズムはすでに解明されているがそれを規制するには限度がある


その能力を例外なく封じるのがこの封石の手枷である


どのような能力も、この石の前では効力を失うのである



「それを民間が許すとでも思っているのか?」



継ぎ接ぎ顔の男の言う通り、そんなことをすれば民衆は自分たちのような凶悪犯罪者を許すとは到底思えない



「その辺は何とかしよう。そもそも君たちが気にすることとは思えないのだがな」


「まぁな」


「で、本題を話してもらおうか。何する気だ?他国の王様でも殺して戦争でもしろとか?」



継ぎ接ぎの男はめがねをしており、その落ちてきた眼鏡をくいっと鼻の上に持ち上げる



「他国の領土には違い無いが、先代達が築いたこの友好関係を崩してみろ、周囲を囲まれているのだぞこの国は。4つの国を敵に回すことになり、物資の補給ができなくなるのは必然だろう」


「そんなもん、レテスタの能力使えば一発だろうが」



頭に包帯を巻いた男はギラギラと歯を見せて話す


レテスタと呼ばれた女性は男の後ろで彼らの会話を書き写している


その彼女は書きながら口を開く



「私の力はそんな長距離は持たない。せいぜい5キロから10キロが限界」


「あっそ」


「というわけだ。さて、本題に移るぞ。いいか、よく聞いてほしい」



男が改まって立ち上がると一つの丸めた大きな紙を取り出す


その紙を転がすようにして机の上に広げる



「あ?なんだこりゃ?」


「とある大陸の地図だ」


「ほほぅ、見たことない地図だが?」



しばらく剃っていないように見えるひげをゾリゾリとさわりながら一人のおっさんがつぶやく


たしかに、この世界のどこにも無い大陸である



「記憶力に自信はあるんだが・・・ここは知らない場所だなあ」


「もしや現段階で発見された世界には存在していない大陸とかか?」



立って地図を見下ろしていた者達もある程度その地図を眺めると座っていった



「ご名答。この世界にはまだ発見されていないといわれる新世界のものだ」


「ほぅ。ということは、見つけた(・・・・)と?」


「我々はこの世界を第7世界、セプティエムと呼ぶことにしている」


「ちょ、待てよ。おそらくその新世界を発見したのはテリアだろうよ。だが、今の今まで何で発見できなかったんだ?これまでは能力が使われてからは短期間で見つかったんだろう?」



この世界で言う世界発見者はただ一人、テリエという女性であることはこの中の誰もが知っている有名人である


その能力は、異世界発見


文字通り、自分たち以外の世界を見ることができる能力である


彼女が正式に政府の人間になったことは、囚人になって監獄の中にいても聞こえてくるニュースの一つである


彼女が政府について、新たに見つかった6つの世界はおよそ3日ほどで見つけられている


が、今回見つかったそのセプティエムと呼ばれる世界はそれから約2年ほどがたっている


ずいぶんと時間差があるではないかと男は言った



「妨害している者がいてね」


「それは、この世界でか?それともそのセプティエムとかいう世界の方か?」


「セプティエム、には違いないがその周囲にはが取り巻いていてね、発見が非常に困難だったこともあるが、そのすらも発見されないようにしている生物がいてね。なんとその中にすんでいるのだよ!驚きの連続だよまったく」


「可能なのかクーフォロンド?」



おっさんがつぎはぎ男にむかって聞く


どうやらこの継ぎ接ぎ男はクーフォンドと言うらしい


クローフォンドは首を軽く傾げる



「さぁな。とは何も存在しないということだ。その中に何かが存在する時点で、それは無ではない。というより、として存在できなくなるはずだが」


「じゃぁそれはとは違うってことか?」


「現段階では実物を見たわけでは無いからな。断言はできないが・・・おそらくその生物とやらがを固持、永続させているのではないか?」


「どうやらそれは人型をしているようだが、人間とは違う存在のようだ。そして、そのが包み込んでいる世界は二つあるそうだ。というわけで私たちはもう一つの方の世界をユイットと名付けた」


「二つ・・・ねぇ」


「だが何で今になって発見を?」



司会を務めるその男はそれだよそれ!といった感じで立ち上がる



「実はね、古い古い文書にはすでにこのセプティエムを発見したという記録が残っていたのだよ!そこにこの地図と座標が残っていてね」



座標特定はもちろん、大陸の地図まで残っているというのは意外であった


つまり、この地図を残した能力者はおそらくテリアよりも異世界発見能力が強かったということになる


いや、だが二つとして同じ能力は無いはずだから厳密には少し違う能力なのだろう



「あれ?おかしくないか?だってセプティエムとやらの世界はこれまで見つかってこなかったんだろ?なんで記録なんかが?」



男は一冊の古い本を机の上に置く



「この記録自体、禁断書庫に眠っていたものでね、私も手に入れるのには苦労したさ。それこそセキュリティを突破するために何人を犠牲にしたことか・・・」


「その代償がその一冊の本ってわけか?」


「あぁ。ここには2級犯罪ランクの9人がそのセプティエムに向かったことがわかった。ただ、それ以後の情報は記載されていない」


「なるほどねー。で、どうすればいいわけ?」


「単刀直入に言おうか。このセプティエムを、制圧して欲しい」


「なるほど。俺たちは捨て駒ってか?行けば死ぬって事だろ?」



なかなかに的を得ている答えである


未知の世界にたった9人で挑み、しかも制圧してこい。と言われても無理だと考えるのが普通である



「君たちは一生を牢獄につながれたまま生きる気かい?」


「ぐ・・・だが、現に前回の隊は戻って来なかったんだろう?」


「何年前の話だと思っている?数百年も昔、ここまで能力者が力を持った時代があったか?」


「そういわれりゃそうだがよぉ、一応これが外に漏れたら大変な事になるんじゃないのか?」


「もちろん。だからこうやって秘密裏に進めている」


「バカ言うなよ。そりゃぁ異世界討伐隊の編成はこれまで秘密裏に囚人達から力のある奴を選んで送り込んでるらしいが・・・。だけどよぉ、第3世界に行った3級囚人がどうなったか覚えてるか?」


「あれは悲惨な事故だったな」



第三世界


聞くところによると、光をエネルギーに変える力が発達した世界だという


その世界に入るまではその世界がどのような文明を築いているかはわからない


ある意味ギャンブルのようなものだ


劣った世界ならたやすく制圧でき、発達した国ならばやられてしまうのが落ち


第3世界はある程度の文明を持ち、光に関する扱いはどの世界に置いても最先端を行く国だった


故に、突入した囚人達は一瞬で防衛センサーに引っかかり、突入10秒後に、何キロも離れた場所から光線を浴び、蒸発したという噂が広がっている


男が否定しないところを見ると、どうやら本当のようだが・・・



「国を治めるだけじゃ飽きたらず、世界までも手中にしたいのかねぇうちの国王は」


「人間、そんなものさ」


「言えた義理かい?お前も同種のくせに」


「そうだな。だが、やるかやらないかは自由だ。行きたくない奴は残ればいい」


「ちっ、いつ殺されてもおかしくない状況を選ぶか、階級ダウンで釈放をとるかってことかよ」


「もちろん、行った場合はリスクを伴うがな。さて、採決を行うが異議のあるものは?」



一同静まりかえり、誰も手を挙げない



「では採決を行う。あくまで個人の意志を聞くものだ。周りに流されぬようこの紙に○か×を書いてくれたえ」



彼らの前には来る前から置いてあった白い一枚の小さな紙、それとペンが置いてある


手枷をさせられている状態ではあるが、ペンを握り記号を書くことぐらいはたやすい



「では皆書いたようだし集めるぞ」



男は皆がペンを置いたのを確認すると人差し指をくいっと自分の方へやる


すると紙はひとりでに男の前にたまる


その一枚一枚を見ていき、見終わるとにやっと笑う



「全員参加、という事でいいんだな?」


「はっ、こんなところからいい加減出してくれるんだ、これ以上のおいしい話はねぇよ!」


「ツキナは、返してくれる?」



ゲッカがつぶやく



「君たちの武器は出発と同時に返却しよう。厳重に保管してあるから心配はいらない」


「なら、いい」


「一ヶ月後くらいには準備も整うはずだ。それまではこれまで通り生活してくれ」


「了解りょうかーい。じゃ、マイ牢獄に帰ってもいいか?」


「ご自由に」



男はそういうと囚人たちを残して一人で勝手に部屋を出て行ってしまった


こうして最初の集会は終わりを告げる













 「悪気は無かったんです。すいません」


「嘘付け」



俺は覚えている。あの小悪魔の笑顔を


あれは絶対に悪気があっただろうという笑みだ


医務室の白いベッドに横たわる少年を見下ろす女性が二人


チルとミーナである


俺は再びベッドの上にいる



「病み上がり?病気じゃないから違うな・・・。いや、目覚めたばっかりで体動かしたかっただけなんだ。なのに・・・」


「まったく、また本気で魔法をぶっ放したのかお前は」


「も、申し訳ありません・・・」



ゴツンと頭を軽く叩かれミーナはうつむいており、声のトーンも下がっている


またってなんだ?前にもやらかした事があるのか?



「なーにいってんだよ。こうなるってわかってたでしょう隊長」



いつのまにかアルレストがドアを開けて入ってきた


え、ていうかわかってたのかこの人?


ジッと俺がチルさんを見つめていると彼女はじっとりと汗をかき始めた


その様子を見る限り、わかってたってことでいいんだよな?


退路はアルレストが塞いでおり、逃げ場を失っている



「さ、ミーナちゃん。何を言われたかこのおっさんに話してみろ」


「え、あ、えっと・・・・」



ミーナの顔がチルとアルレストをなんども往復する


俺はピンときた



「問題ない。後は俺が何とかするから」


「えと・・・あの・・・アヤキさんを〜・・・えっと、そのチル隊長に命令されまして・・・」


「何を命令されたんだい?」


「えっと・・・」



チルの顔を見るが彼女の顔はすでにすべてをあきらめたような、そんな絶望感たっぷりな顔になっていた



「えと・・・彼は強いから、えと・・・私の代わりに本気で戦って欲しいと・・・」


「あ、あ、なるほどね」



ピキリとこめかみに浮かぶ血管


ゆらりと立ち上がろうとした俺を見てあたふたし始めるチルだったが、退路はすでにアルレストさんにふさがれており・・・


チルさんは迷ったあげく、俺がアルレストさんにもらった短刀を手に取り



「あー、あんなところにー!」



と、大声かつ棒読みに叫んでアルレストの後ろを指さす


ただ、誰一人そちらの方向を向かなかったがチルはそんなことお構いなしに脱兎の如くベッドの上を飛び越え、パリンと窓ガラスを割って外へと飛び出していった


お前は何処の怪盗だ


てかここ何階?自殺じゃないよなたぶん・・・



「えーっと窓の修理費銀貨2枚、それと職務放棄による代理人への休日出勤の給料分を給料から引いてっと・・・」



アルレストさんはなにやら計算をしている


あの人なりの仕返しのつもりなのだろうか?


地味に怖い



「職務放棄もいいとこだな。ったく。で、どうする?刀、取り返しに行くか?」


「えっと、あの、仕事とかあるんじゃないですか?」


「今日の俺の役回りは城下の見回り。それと強いて言うならお前の護衛も兼ねることもできる」


「迷惑じゃ無いですか?」


「見回りの小隊の方に別行動するとでも言っておけば大丈夫だ。第一お前あいつを追いかけられないだろう」


「そのうち帰ってくるんじゃ無いですか?」



自分で言っておいてなるほどと思うのだがたしかに待っていればいつか帰ってくるはずである


それにわざわざこの倒れた俺の体にむち打って外出する意味が・・・あれ?


俺は自分の体が思った異常に軽い事に気がつく



「あぁ、それか。お前、自分の体質の事忘れたか?」


「え?あ、えっと・・・魔力の吸収?」


「そ。つまりお前はミーナに食らった打撃の数十倍もの威力の魔法の魔力を吸収したわけだ」


「・・・つまり?」


「あー、そういやまだ話して無かったな。ミーナの魔力はちょっと特殊なんだ」



横で話を聞いているミーナは突然自分の話題になったことに驚いている



「この子の力は白銀魔法という特殊な属性の魔法を使えることにある。そして彼女が使う魔力には癒しの力が含まれているんだ」


「それで俺は回復したと?」


「通常ならそうはならない。この子はまだ未熟で扱い方を知らない。故に魔法を使おうとすると魔力が暴発して回復どころかその魔力の勢いで吹き飛ばしてしまうレベルだ」


「へー。だからこんなにも体の調子がいいのか」


「おそらくな。専門ではないからその辺は医療班か魔術師に聞いた方がいいけどな。魔法剣士は使いこそするが詳しくは知らないからな」



なるほど。使い方はわかるがその詳しい仕組みは知らないということか


パソコンを使えても作り方は知らない。みたいな感じかな


ふむふむとうなずきながら彩輝は仕方なく立ち上がる



「お前は城下の下見に行く予定だったんだろ?」



そういえば、と俺は思い出した



「あ、そういえばそうでしたね。それじゃぁ行こうかな」


「よし、じゃぁ下の正門で待ってろ」



そう言ってアルレストさんは振り返ってドアに手をかけた



「あれ?アルレストさんは?」


「なに、ちょっと断りを入れてくるだけだ。すぐ行く」


「わかりました。ミーナちゃんはどうする?」


「え、私ですか?私はいいです。まだ日課の素振100回も終わってないので」



あー・・・・俺が修練場に行ったときこれやってたのか


たしかに一日にそんなに剣振ってたのならあの力の強さも納得がいく


さーて、俺も下に行って待つとするか


3人は廊下に出たところでそれぞれ分かれた


城下かぁ・・・どんな感じなのだろうかと期待をしながら彩輝は城の階段を下りていった





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