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烈風のアヤキ  作者: 夢闇
四章 ~古今の異邦者~
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『上達への特訓』







巨大な影が一直線に突っ込んでくる


彩輝は思いっきり横に飛んで転がってその巨大な動く像の突進を避ける



「どわっ!?あぶねっ!!」


「まだまだっ!」



早苗が右手をスッと横に振る


早苗の意思に従った巨大な像がバキンと音を立てて駆け寄ってくる


大駒二つが彼女の元を離れた今が好機と見て、彩輝はその軌道を読んでその進路から外れるととっさに剣を抜いた


紅い剣だ



「オーバーアビリティッ!!」


「成って龍王!!龍馬!!逃がすな!」


「うおおおおおっ!!」



剣が真っ赤に燃え上がり、深紅の炎が彩輝を包み込んで炎の翼を出現させた


体勢を低くして自身を取り巻く炎を操り、大地を蹴って一気に加速する彩輝


と、早苗の前に2体の像が割ってはいった


恐らくあれは金将と銀将だと予想する彩輝はその2体の像が持つ槍と剣の届かぬ上空へと急上昇した


そして一気に急降下しようとしたところで、早苗が新たに二つの駒を放るのを視界に捉える


なんだ?何をする気だ?




 現在、彩輝と早苗、そして仙と唯という二人ペアになって特訓をしている所である


それというのも、あの魔女が自分達には力の扱いを教えると言って聞かなかったのである


この場に居ない三人の事も気になるし、もしかするともう森を抜けているかもしれない


それなのに、何時までもここでお茶を飲んだり特訓をしている暇があるかと言われると、あまり無いと言えるだろう


そもそも、早急にシーグリシアへと向かわなければならないといけない為、その旨を魔女に伝えると


『大丈夫。特訓中、私はあなた達の入る部屋の時空を操るから大丈夫です』と言って無理矢理押し込まれたのだ


第一、彼女の言う過去の歴史というのを聞いても何がなんだかよく分からなかった


というのも、過去にアグレシオンが責めてきた、とか近い未来アグレシオンが責めてくるとか、その辺りの事はなんとか理解できた


その為、自分たちは力をつけるべきだと進められたのである


でなければ、大切な物を失うと言われたのだ


しかし教えすぎると、良くない方向に結果が変わってしまうという事を恐れて彼女はそれ以上詳しいことは話さなかった


だがもしこの提案が本当なら、とても嬉しい事だと彩輝は思っていた


魔女であるかどうかはともかく、彼女は彩輝達が神子であり、人の限界を超えるオーバーアビリティを知った上で特訓をすると言ってきたのである


これまでこの力の練習はほぼ実践あるのみといった感じであり、そこらへんの魔獣では瞬殺してしまうため上達が身にしみて感じる事はあまりなかったと言えよう


『君の力は風。風を操る速き龍の神子、そして同じ龍族のつながりでその短剣の力は最大限に引き出せる。素材は上場。あとはそれを使いこなす経験が必要。そのために、貴方はただひたすら実践を行って技のキレと直感を磨く』


『貴方は知識はあるが武力が無い。炎とは生まれ、消えゆく命の象徴。貴方の力は生と死を与える不死鳥の神子の力がある。死を与える力は、人には制御できないから、貴方ができるのは無機物に意思と生と命令を与え、それを手駒として操るという事。貴方にはその力を身につける事をして貰う』


『貴方の力は運命を見定める一角天馬の神子。定められた運命を見る事は、未来が唯一を変わった事を実感できる力を持つという事。光を見る力を、誰にも惑わされず貴方は正しく扱わなければならない。貴方には自分と戦ってもらいます』


『君の力は氷。その凍てついた氷の爪と牙は氷狼王の神子の証。その氷の牙と四肢は貴方を傷つけ、他者をも傷つける力であることを自覚しなければならない。災厄を象徴する氷狼王の力、貴方はその本当の力に気がつけるかどうか、ただひたすら貴方にも自分と戦って貰います』



そう言って魔女は俺たちにそれぞれ特訓内容を告げた


俺は早苗さんと戦闘の訓練


一条さんと神原さんはそれぞれの個室にて特訓を行っているらしい


っと、考えが過ぎたか?


早苗さんの能力は30分くらいで発現した


その能力は、物に命を与える事である


物にはそれぞれ名前や正確な使い方といった、その物を象徴するものがある


それらを正しく知り、意思を込めるとそれは本来の働きをするために動き出すのである


そこで早苗さんがそれを戦闘に使う為に考え出したのが、将棋の駒に命を宿す事であった


将棋の駒には命の炎が宿り、それぞれが自身の能力の動きをしてくる事には彩輝はすぐさま気がついていた


というよりも、将棋を持ってきていた事に驚き問いつめると、なんと自分で暇つぶし用に作ったという


そう言うと、駒をこちらに向かって投げてきた


そういう風に使うの!?とか驚いていると、駒が自分の後ろで成って龍やら馬になるわ、なんじゃそりゃ!?


しかし彩輝はその将棋を無視して早苗に突っ込んでいく


追いつかれる前に、押さえ込む!!


一気に加速する彩輝



「私まだ変身してないよ?速すぎないか彩輝君?」


「まだまだぁっ!!」



遠慮を吹き飛ばしたかのような顔の彩輝が土煙を吹き飛ばして、早苗目掛けて一直線に突っ込んでくる



「そうこなくちゃ!オーバーアビリティ!」


「うおおおおっ!二歩斬り一閃!!」



彩輝が一歩地面に足を着け、彩輝が二歩目を踏み込んで、加速


対する早苗も炎の翼と尾羽を広げ迎撃の体勢をとった


姿が消えた彩輝の前にドドンッと巨大な金と銀の像が立ちふさがった


彩輝の神速の一閃はその金と銀の像を斬り飛ばす


その切断面から早苗と彩輝の視線がぶつかり合う


しかし、それは一瞬の出来事であった


彩輝の姿は再び早苗の前からかき消え、その残像を目で追った


早苗の身体能力は現在かなり上昇しており、速さにおいて絶対を誇る龍の神子である彩輝の姿を何とか視界に納めることができた



―――速いっ!?―――


―――遅いっ!!―――



彩輝の剣が翻り、とっさにが指を将棋の駒を取り出そうとする


ガゴンッ!!


早苗をガードに入った銀色の像が大きな音を立てて炎に包まれて砕け散る


そこに彩輝は二本目の刀、風王奏を早苗に向けて突きつけた



「俺の勝ちです」


「そうだといいね」



此方に顔を向けていなくても、彼女が笑っているのが分かった



「っ!!」



彩輝は、咄嗟に下を見た


魔法陣が何重にも組まれている


それも部屋全体を覆うほどの大きさの魔法陣が順々に彼女を中心に、まるで年輪のように増えていく



「どかーん」



彩輝の目の前にいた早苗はニヤリと笑い、吹き上げた炎の壁に彩輝が阻まれた


彼女を中心に、魔法陣の上に炎が円を描いて壁を作り出していた


それも、連続発動するようで、次の瞬間には彩輝の真下で光り輝く魔法陣からも炎が吹き出した



「っく!?」



彩輝は後方に思いっきり飛んだ


途中で体勢を立て直し、翼を広げて距離を取る


まるで壁が迫ってくるように、炎は彩輝目掛けて部屋を赤く染め上げながら追ってくる



「もう決着ついただろっ!?」


「私は決着ついてないと思ってるよ。だってこうして反撃できるのに、それで決着なんてあり得ない。詰めたと思っても、相手にはまだ手段が残っているかも知れない。そして君が私を詰めたと思っているかもしれないが、逆に君がこうして私の陣地に飛び込んでくる結果を考えなかった訳じゃない」


「そーかよっ!」



彩輝は地面から垂直に飛び上がり、炎の壁の上へと翼を広げた



「女だからと、私に手を抜くのは、私自身への侮辱だ。少なくとも、私は君を殺すつもりでやってるよ。じゃないと、意味がない」


「意味わかんねぇよっ!!」



彩輝は炎の何重もの壁を上空から乗り越え、中心に立つ早苗目掛けて急降下した


ぐんぐんと加速する彩輝は刀を振りかぶる


そこまで力があるんなら、俺を倒してみろとでもいう勢いで


それに早苗も全力で答える



「私はもう、後戻りできないから、吹っ切った。でも君はそうじゃない。ましてや戦いの渦中に飛び込むつもりなら、なおさらだ!」


「炎月刃!!」


「炎が私に効くか!!」



彩輝はソーレを振るい、炎の刃を早苗に飛ばした


三日月の炎は早苗目掛けて飛んでゆくが、その炎は背中の炎の翼によって防がれてしまう



「接近戦も試してみたいね」


「そんな余裕、あるかな!」


「何事もやって見なきゃ分からないよっ!」



炎の翼が大きく開き、大きく上空へ向けて上昇する早苗


それを追って急ブレーキをかけ、直角に早苗を追う彩輝


しかしいくら鳥は空を飛べたとしても、龍のスピードには叶わない


一気に差は縮まり、二度、三度と蹴りと殴打がぶつかり合う


その度に、衝撃波が空気を揺らす



「くっ・・・!」



いくら早苗も神子化しているとはいえ、彩輝の方が一段上手であり、またそのパワーも男子と女子の差というよりかは鳥と龍という差のように早苗は感じた


ぶつかり合う度に体が軋む


その隙を逃さず、怯んだ早苗の足を掴むと右腕一本で早苗を地面へ向けて投げ落とす


体勢を立て直すよりも先にその体は地面へと叩きつけられ、岩盤がめくれ上がるほどの衝撃で巨大な土煙が舞い上がる



「まだ・・・・まだあっ!!」



が、それでも体に痛みが殆ど無い早苗は土煙を吹き飛ばし、彩輝に向かって上昇する



その様子を、離れた場所から眺める魔女は今度は別室の神原の部屋へと入ろうとする


部屋のノブは冷たく、隙間からは白い冷気が零れていた


ドアを開けると、そこは一面銀世界が広がっていた


天井からは無数の巨大な氷柱が出来ている


床は氷の上に雪が積もり始めており、ここが室内であるという事を忘れてしまいそうになる


そして部屋の中心に、男が居る


神原だ


しかし、彼の四肢は氷に包まれており、うなり声をあげる様はまるで獣のようであり人間であるということを忘れてしまいそうだ


氷の四肢は見事なまでに鋭い爪を作り出しており、その殺傷能力は極めて高そうだと魔女は見る


よくよく見れば、体中傷だらけである


と、突如神原は全身をバネのよう伸ばすとこちらへ向かって駆け寄ってくる


四肢を巧みに使い、滑らないように、尚かつスピードを上げて迫ってくる


その爪が魔女を捉えようかといった瞬間、神原は見えない何かにはじき飛ばされ雪上を転がる



「早くしないと、壊死するよ」



聞こえてはいないだろうが、そう呟いて魔女は一条のいる部屋へと向かい、扉を閉めた




いつもより少し短いです

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