『遣り場の無い気持ちと握り拳』
第四章 古今の異邦者
一つ、それは水を
二つ、それは火を
三つ、それは雷を
四つ、それは土を
五つ、それは風を
六つ、それは氷を
七つ、それは音を
八つ、それは闇を
九つ、それは光を
九つの力の源は互いに混ざり合わぬようそれぞれ九つの石に封じ込められていた
水玉
紅玉
黄玉
地玉
翠玉
氷玉
響玉
黒玉
光玉
それぞれの宝玉は人の手に負えぬ宝物として小さな島国の大地に封じられていた
あまりに強すぎる力の塊を人間が扱えるわけもなく、人々はその力の毒を恐れ、封じるしかなかったのだ
しかしある時その島国に一匹の獣が現れる
真っ白な毛並みの獣だった
獣は大妖怪と言っても過言ではない程の強大な魔力をもっていた
九つの宝玉をその身に宿し、その力で人間界を支配しようとする
しかし、その野望はとある人間によって打ち砕かれる
大きな傷を負い逃走をはかった獣だったが、その人間の追撃によってその身は異世界にて朽ち果てる
内に憎しみや恨み、辛みといった怨念を渦巻かせながら獣は亡骸を石へと変え―――静かに、ただ静かに復活の時を待ち望む
それが獣の真なる意思かは別にして――――――その怨念は雪積もる地にて渦を巻く
第4章 古今の異邦者
クロロト王国は北はロルワート、西はアリーアとアルパで北方小国群と大陸北部、西部の国を区切る四国のうちの一国である
ファルトの大脈と呼ばれる巨大な陸路はここクロロト、そしてアリーアを通ってフェリエス聖王国へと繋がっている
整備された道とはいえ、場所によりその整備状況は異なってくる
都市に近ければ近いほどその路面状況は整ってくるのに対し、都市から離れれば離れるほどそれはただの人の通った後が残る巨大な獣道のような状態になってくる
道としては機能するが、馬車などの乗り心地は最悪になってくるしスピードも出せなくなってくる
とはいえスピードが出せないわけではない
しかし乗り心地は最悪なうえ、商品などを乗せている場合は傷がつくのを防ぐためによほどの事が無い限りはスピードを出す馬車が通る事は少ない
だが現在、クロロト領のファルトの大脈で一台の馬車が猛スピードで駆けていた
馬と呼ぶには少々ごついが、トトルと呼ばれる動物に牽かれた馬車がガタンゴトンと音を立てながら荒れた道路を駆け抜ける
もちろん馬車の中の状況は最悪だ
物が飛んでは落ち、壁に叩きつけられては宙を舞い、乗組員は必死に馬車の壁にしがみつく
周囲には何もないような草原であり、そこだけが草の生えない道が何処までも続いている
このままのペースであと30分も走り続ければクロロトの王都の正門である関所のゲートにたどり着くだろう
それまでこのペースをトトルが保って走ってくれるかが問題であった
小石をはね飛ばし、トトルが駆けるその後ろを沢山の軽い足音が近づく度にトトルの気を焦らせる
この馬車は今、後ろから追ってくる者達に狙われているのである
「スピードあげろっ!」
切迫する護衛の憲兵の声が馬車の中からトトルを操る調教師を急かす
じわりと出る汗が調教師であり、騎手でもある男の頬を伝うよりも早く、そのトトルの駆ける動きと体に受ける風の抵抗で遙か後ろへと飛んでいく
これ以上のスピードを出せば車輪や車体、そしてトトルの体力がクロロトの王都まで持たない事が分かるからこそ調教師は焦っていた
つまり、この状況かなりまずいのである
調教師これまでも似たような状況は何度か体験したことがある
しかし、護衛が対処しきれない程にまで数が多いグレイの群れと遭遇する事など考えたことも無かった
すると調教師は後ろの馬車の天井の鍵が開く音が聞こえた
バタンと扉を押し開けて一人の魔術師が杖を追いかけてくるグレイに向けて魔術を唱える
小瓶から水を振りまき、その水が一瞬にして凍結すると氷の飛礫がグレイ目掛けて飛んでいく
数匹、その飛礫に当たって怯んだ様子は見せたが全体のスピードは落ちる気配はまるで無い
その魔術師の魔術のレベルでは、この群れを足止めする事すらできないほどに多いのだ
「くそっ!最後の水瓶だったってのに・・・っ!」
恐らく魔術師も自らの魔術が足止めできるなんて思っていなかっただろう
商人の方も自分の力を見極められないほどにランクの低い憲兵を雇ったつもりは無かったであろうが、先ほどからそのあわてふためく商人の声は調教師の男の耳にも聞こえてきた
恐らくそれほどこのようなトラブルに巻き込まれたことの無い若手の商人なのだろう
商人に急かされ、仕方なくといったような魔術師が放った魔術はさほど効果もなくグレイの荒波に呑まれただけであった
このような場合、グレイから逃げ延びる方法は限られている
まずグレイを討伐、または追い返すという対処法がある
商人がギルドなどを雇うときは大抵これがその雇う目的となる事柄であろうが、今回の場合は完全に10人ほどの憲兵の数を超えるグレイの数である
勝てない戦と見て逃走を指示した憲兵のリーダーはそこまで悪い判断をしたわけでは無いとこの調教師は思っていた
数が多いと見るやいなや逃走を指示したからこそ、囲まれる前に脱出できたとも言えよう
だがその分、人数が多い馬車をトトルが引っ張る労力も距離と重さに比例して増えてゆく
徐々にその距離は縮まり、今や飛びかかれば馬車に届きそうというぐらいにまでグレイの集団の先頭が追いついてきている
そして最後の手段、これは囮を使うという方法である
囮に気を取られている隙に逃げてしまおうという作戦なのだが、この数になると囮はもはや囮というより完全な餌として扱われる
扱われるのが乗車している憲兵や商人の食料ならばまだいいのだが、旅の終盤ということで数の少ない食料をばらまいたところで囮になりすらしなかった
目先の残飯よりも、狙う本命は柔らかい人肉とトトルである。という優先順位が分かるあたり、魔獣とはいえある程度の損得の理解ぐらいはできるらしい
となるともはや、この馬車がクロロトの関所をくぐる為にはそこまでたどり着く為の囮が必要となる
となれば、もはやその方法は一つしかない
「そ、その女を捨てろっ!」
ほら、聞こえてきた
調教師の怯える声が
そうして金で雇われた憲兵の一人は少女を一人荷馬車の上にあげると自分も荷馬車の上へと上る
「嬢ちゃんには悪いがグレイの囮になって貰う」
「い、いやっ!」
この少女は前の町から偶然この荷馬車に乗り合わせた少女である
商いとして町から町を移動する馬車にはこのようにお金を払えば乗せてくれるものもある
実質、現在この荷馬車は商人である男の所有物として契約しているため全権は一部を除いてその商人にある
あくまで調教師兼騎手である男は荷馬車の貸し出しという商売を行っているのだ
偶然が重なり、囮として選ばれた少女は不幸で不憫だなと思う調教師だったが、それに口を出す事はできない
抵抗を見せる少女だったが、15、6ぐらいの少女は流石に30を超えた成人男性の筋力に押さえ込まれてしまう
「俺だってこんな事はしたくないが、この馬車の権利はあの商人のもんだし、俺等はそいつに金で雇われている。何も俺等もこんなところで死ぬためにこの仕事受けた訳じゃないってのは嬢ちゃんだってわかるだろ?」
「う・・・うっ・・・・」
突然の死刑宣告に、感情を押さえきれないのか静かに目元を潤ませる少女
商人に逆らえばもちろん報償はもらえないし、無銭でこの危険な仕事を請けおったともなれば憲兵の方も割に合わない
生きて帰ってこそ、意味のある仕事である
これが家族の居る者なら無銭でもこの商人の命令を無視したかもしれないが、どうやら男達がそういう人物でも無いと言う点に置いても少女の運が無かった。それで済まされるのである
「何か言いたいことはあるかい嬢ちゃん?」
言葉すら、嗚咽に呑まれてまともに出てこない少女を見て憲兵の男はため息をついた
「そうか。じゃぁ、運が無かったと思って諦めてくれ」
トン、と男は不安定な揺れる荷馬車から少女の背中を押した
バランスを崩した少女がグラリ、と地面に向かって突き落とされる
涙が宙に浮き上がり、体は重力に従い落ちていく
そして―――思っていたような体を地面に打ち付ける強い衝撃が少女を襲う事は無かった
もちろん、グレイに体を食いちぎられる痛みも無かった
「っうぇ・・・?」
「っとと、間に合って良かった。大丈夫?怪我してない?」
そこには黒い髪、黒い瞳の青年が自分を抱っこして見下ろしていた
「!?・・・・!?」
現在の状況を理解できず、少女はもう少し少年を見てみる
髪が少し長いか、若干髪で目が隠れている
顔立ちは整っているが、それよりも目立つものによってさらにその表情は少女には薄れて見える
その背中に広がる真っ赤な半透明の炎の翼が、青と白の空を紅色に染めている
「随分な数だな。よく逃げ切れてたな」
「そうね。私たちが割って入らなかったらどうなってた事か」
氷の大きな足場を作ってその上に着地した仮面を付けた男の人がそう言ってグレイの群れを眺める
そんな仮面の男の作った氷の足場の横に真っ白な翼を広げて舞い降りる仮面を付けた女性がちらりと後ろを見る
馬車は止まることなく走り続けているが、少しずつスピードが落ちてくるのが遠目に見ても分かる
「さぁて、君たちのご飯は彼女じゃないんだよー」
黒髪で仮面を付けた女性はそう言うと純白の翼を広げた
それと同時に舞い上がる純白の羽毛がフワリと広がった
「ボスグレイが居ないのに、やけに集団行動に慣れてる群れだな。珍しい」
剣を鞘からゆっくりと抜く仮面の男はその剣をグレイの群れに向ける
「立ち去れ!じゃないと俺たちはお前等を殺さなきゃならない!」
そう、少女を抱えた、赤の翼を持つ少年は叫んだ
グレイはうなり声を上げて威嚇するが、効果が無く、逆に相手のプレッシャーに押されている事に気がつく
すると一匹、また一匹と逆立てていた毛並みを戻して踵を返して荒野へと戻っていく
その様子を見送りながら少年は赤い翼を四散させる
同様に、白い翼を生やした女性もその仮面と翼を空中に霧散させる
仮面をつけた男も剣を鞘に収めて数メートルの高さから飛び降りて此方へと歩いてくる
「立てる?」
そう問われ、無意識にこくんと首を縦に振った少女はお姫様抱っこの姿勢から自分の足で地面に立った
「怪我無い?」
その問いにもこくんと首を縦に振り、
「痛いところとかも?」
「ない・・・です」
「我慢とかもしてない?」
「しつこいわっ!」
スパンッっと黒い頭を叩いたその女性の髪もまた漆黒の流れるような艶やかな髪だ
少女が見惚れてしまう程に、これまでに見たことの無い黒色だった
「痛い!」
「五月蠅い!あ、大丈夫だった?」
「あ、は・・・はい。だいじょう・・・ぶです」
「俺の確認は信用できないのか!?できないんですか!?」
少年がその黒髪の女性に向かって叫んだ
が、女性はそれを軽く無視して少女に怪我が無いか周囲を見て回る
「うん、大丈夫みたいね」
「だから俺が確認したじゃないですか!?」
「あ、ごめん、何がなんだかわからないよね。私は一条唯」
「無視された・・・無視された・・・」
「そして今しゃがんでのの字を書いているのがあーやんこと桜彩輝。ほら、あーやん、挨拶挨拶」
むすっとしながら立ち上がって少年は挨拶をする
「桜彩輝です」
「色目つかってんじゃねーっ!」
「はっ!?」
一条に蹴り飛ばされ、きゃっと飛び退いた少女のいた場所に転がる彩輝
意味がわからねぇとぼやきながら彩輝は一条を見上げる
「なんでそんなに意味不明なテンションなんですかっ!?」
「君が私を理解するのは百年早いな。うん」
「百年経っても理解できる気がしませんね、こりゃ・・・。にしても、一条さんも慣れてきましたか?」
「うん。やっぱり体に強く力は入らないけど、普通に過ごす分には問題なさそう。ほら」
と、手を握っては開いてを繰り返していた一条はその手を転がった彩輝に差し伸べた
その綺麗な白い手を土で汚れた自分の手で掴んで良いのかとゼロコンマイチ秒の迷いを、どうせボコボコにされたのだからドロドロの手にしてやれと復讐心と泥にまみれた手で握ろうとして――
「あ、そうだ」
引っ込められた
もういいや、そう思って彩輝は一人うつむき無言で立ち上がる
「そういえばさっきのはなんだったの?君、馬車から落とされそう・・・ってか落とされてたけど」
一条がそう少女に尋ねる
彩輝も一応その辺の事が気になっていたので耳をすまして話を聞く事ににした
「ま、何となく予想はつくけどな」
そう言ってカイが二人に事情を説明する
カイは少女に合っているかを確かめると、苦い顔をしながらも彼女は首を立てに振った
「ひっどい!そんなのって!」
と、一人感情をそのまま剥き出しにして少し離れた場所に止まる馬車を睨み付ける
歯をむき出しにしてガルルルルと獣のように殺気を飛ばす唯を視線から外して彩輝はため息をついた
彩輝自身は確かにその行為に不満や苛立ちが無い訳ではない
しかし、この世界の常識が、彩輝達のいた常識と異なるのもまた事実
とはいえそれが許せる行為かどうかというのはまた別の問題である
正しいかどうかで言えば彩輝は間違っていると思う
しかし馬車に乗り合わせた乗員全員が食われればいいという結末を望んでいるわけではない
今回はたまたま助けられたから良かったが、結局は手の届く範囲でしか自分たちの力は及ばないのだと彩輝は考える
だが自分手が届く範囲で、その手を握ってくれた者が救われるというのなら、彩輝は全力で助けたいし、絶対に助けるという強い意志を抱いていた
「この少女には悪いが、どうせこの子を放り出した人を懲らしめたからって、それで世界が良くなるわけではない。むしろ一の犠牲で多を救うというのならそれは間違った判断では無い」
カイさんがそう呟いた
リーダーは時に、苦渋の決断をしなければならない時があると思う
あの馬車に乗っていたリーダーはそれが今だと判断したに過ぎない
「・・・多くの命と感情ってのを天秤に乗せなきゃいけないってのは辛いもんだ」
「そこが上に立つ人の辛い所ですね。うん。俺なら絶対に感情に偏るけど」
「それでもあんまりだ」
一人まだ頭から蒸気を出すかのように怒っている一条はそれを押さえるためか、クルリと振り向いて表情を和らげると少女に歩み寄って話しかけた
「君、これからどうするの?」
「え・・・?」
「んーと、馬車に乗ってたってことは行くところがあったんじゃないの?」
「あ・・・いえ、その・・・」
少女は言い辛そうにして視線を背けた
その様子を見て一条は手を体の前でぶんぶんふった
「あぁ、別に言いたくなかったらいいんだけど、このまま一人で行くとさっきみたいに襲われるかもしれないし、あの馬車にもう一回のって行きたいところに行くってのも一つの手だけど、流石にこんな事があっちゃあんなやつらと一緒に乗りたく無いよね」
少女はゆっくりと馬車の方を向き、そしてまた首を縦にふる
彩輝もそりゃそうだと馬車の方を向く
すると馬車から数人が降りてきた
一人は普通の服を着ているが、残りは全て軽い防具を着けたギルドの人たちのようだった
ちょうどヴェント街道で出会った『赤銅の器』のような感じだ
「いやぁどうもどうも、君たちが助けてくれたんですよね?」
そう言って真っ先に彩輝達に話しかけてきたのはまだ若い青年だった
20前後だろうか
「商人殿ですかな?」
「はい。この度は危ないところを助けて頂き、誠にありがとうございました」
カイがそう尋ねると、ニコニコと笑いながら何度もお辞儀をする商人
しかし、その顔に彩輝は無性に苛立ちを覚えた
「本来なら彼らに任せる予定だったのですが・・・」
そう言ってパッと表情を冷酷なものに変えて後ろのギルド達を見つめた
「何しろ数が多かったものでして、流石に7、8名ではどうしようも無かったので逃げることしかできませんでした」
「確かに、20、いや、30は居ましたからね。彼らを責めるのは見当違いでしょう。むしろ囲まれる前にここまで逃げ切れただけでも凄いですね。よくトトルもパニックにならなかったものだ。いい調教師ですね」
「そうですな。彼には後で報酬をはずまねばなりますまい。財布は軽くなりますが、命を買ったと思えば安いものですからね」
そこでギルドの一人が進み出る
「俺等『赤銅の鉈』からも全員を代表して礼を言わせて貰う。危ないところだった、ありがとう」
「どういたしまして」
一条唯が静かにカイの後ろから静かにそう言い放つ
「あぁ、それと、さっきこの子を落とした奴は誰?あるいはその命令をした奴」
全員がその突如張りつめた空気にごくりと生唾を飲んだ
一条さんが静かに、しかしハッキリと誰だと問う
声にして出ることは無かったが、赤銅の鉈のメンバーの視線がそのお礼を言った二人、つまりギルドリーダーと商人に向けられた
無言のメッセージとはこういう事か
ギルドメンバーが責任逃れでリーダーや商人を捨てたとまでは言わないが、それでも彩輝はこのギルドに良い印象を持たなかった
「なるほど、ね」
ちらりと視線をあげて二人を見つめる一条
「部外者だし、口挟む気も無いし、私情になる。けど、私はその選択をしたあんた達が嫌い。だから早く馬車にのってください」
「い、一条さん」
「何?私、今ならこのやり場のない気持ちをあーやんにむけて微塵に千切っては挽肉にできる気がするんだけど」
「・・・・」
恐ろしくて彩輝はぽっかり空いた口を手で隠し、一条から10歩は下がって距離をとる
なんかさっきから理不尽だ!
そしてその矛先が向いている商人とそのギルドリーダーは顔を引きつらせた
この異様な空間を作り出している張本人からは目に見えそうなほど強烈なオーラが漂って空間をねじ曲げているかのように見えた
「・・・では、お助け頂きありがとうございます」
「私もできることならこんな事したく――」
「消えろってんじゃん!」
リーダーが静かにお辞儀をして、そして商人はなにやら弁解をしようと口を開いた
その瞬間、突如一条さんが叫んだ
握りしめた拳を、必死に止めている
振るえた握り拳にそっと彩輝が手を添える
びくりとした後、一条は彩輝の顔を見た
無言で彩輝が首を横に振るのを見ると、うつむいて後ろを向く
「悪いんですけど、お礼はそこまでにして引き取ってもらえませんか。でないとせっかく人助けをしたというのに後腐れが残ってしまいそうだ」
もう残っている、そう一条は叫びそうになるが必死に堪えた
手を握ってくれている少年の為に、叫ぶわけにはいかなかった
そうして商人とギルドは馬車に乗り込むとゆっくりと動き始めた
もちろん彩輝とカイはもし一条が何か暴力沙汰に出ようとするならば止める気ではいたが、幸いそこまで発展することは無かったので二人はホッと胸をなで下ろす
ただ彩輝は、静かに一条を眺める
ただ静かに、眺めていた
第四章スタートです。よっし、執筆頑張るぞ!それなりに長丁場になるかもなぁ・・・プロットプロットっと・・・