俺はマイケル! おそらく今日本でいちばんイキりたい男だ。
――“イキり”とは、 “最高に生きる” ことに見つけたり――
O. Maikeru著「俺の黙示録・ハロー異世界編」 1巻 1081ページより抜粋
◇
「ん〜〜〜〜ひゃっはぁあああああああああああああああああああ!!」
おす! 俺、黄村マイケル!
変わった声で鳴いてるけど、世紀末のモヒカンの人じゃないよ!
え? 名前がハーフっぽいって?
よく言われるよ!
でも安心して!
100パーセント国産の、平たい顔の日本人だよ!
え? じゃなんで、そんな名前なのかって?
親の愛だよ言わせんな!!
『くそテンション高いです。くそうるさい。やめてください。』
「あ、ハイ……ごめんなさい」
女神ちゃんに怒られちゃった。
てヘぺろりんこ。
だけど、お前らなら分かるだろ?
俺の! この! 熱い気持ちが!!
そうだよ。
異☆世☆界☆転☆生、だよぉ!
ぶはぉ!
いかん笑いが止まらん!
うらやましいか? お前ら? うらやましいか?
……あれ? 転移だったっけ?
まぁどっちでもいいか!
『チッ。』
……舌打ちされちゃった。
しょぼぺろりんこ。
だけど、とっても暇なんだ。
もうずっとこの、なにもない、まっしろい“神域”で待機してるんだもん。
現在。俺の目の前にいる幼女《黄の女神・プププリムス》の話によると、
「あばよ〜ニッポン〜」って転生(転移?)するために必要な、
俺専用の“チート”を掘り起こしている(?)真っ最中らしい。
……うん、まぁ、難しくて、俺もよくわかってないんだけどね。
でも、幼女がそう言ってたの。
あ、それと俺の場合、どうも“チート”がややこしい状態にあるらしく、思うように作業が進んでないみたい。
すんごい長い時間かかってる。
スイス製の高級時計のような俺の体感(精密)では、もう二日は過ぎている。
『二時間です。』
二時間らしい。
だけど、その間なにしてたの?って言われると、答えに困っちゃう。
これと言って、特に何もしてないからだ。
いやほんと。
土日とか、ゴールデンウィークとか、夏休みとか、後になって振り返ってみると「あれ? 思い出がない」みたいな、そんな感じ。
まぁ、強いて挙げるなら、黄色い幼女(かわいい声でウンウンうなってチートの発掘をがんばっている)をいろんな角度から、にっこり眺めていたくらいだ。
でも、俺はロリコンじゃないから、すぐに飽きちゃって、やめたけどね。
幼女に『こっちを舐めるように見ないでください。』とか、注意されたわけじゃないからね。
そんなわけで、俺はまだ、これから行く異世界のことを何も知らされてないのだ。
「ミーは何しに異世界へ?」
なんて目的とか、理由とか、異世界の事情とか、
幼女的に俺は彼ぴっぴとしてアリよりのアリなのか?とか、
そこらへん、まるっとろりっと、正直さっぱり分かってない。
いやしかし、あの時は、流石の俺も驚いた。
死にかけの、ケチャップマンみたいな俺の前に、いきなり黄色い幼女(美しすぎてマジで泣いた)が現れて『チート差し上げますから異世界行きませんか? 』って言うんだぜ?
ふつう「うんうん!イグイグ!」ってつい言っちゃうよね。
喜んで、アヘ顔ダブルピースで幼女の後をホイホイついて行っちゃうよね。
もし、それが幼女じゃなくて、知らないおじさんだったらーー
事案だね。
みんなは気をつけて!
知らないおじさんが「チートあげるよぉ」とか言ってきても、
絶対について行っちゃダメだぞ☆
たぶん99パーセント、ひどいことされっぞ★
いやーそれにつけても、オイラもついにチーターでさあ。
でへへ。
あ、動物の方じゃないよ。チート持ちって意味よ。
チ⤴︎タ⤵︎じゃなくてチ⤵︎タ⤴︎ね。
まぁ、そんなのどっちでもいいフレンズか。
たまになるよね。
あーどうしようー心がわくわくするんじゃい。
いったい、どんな“チート”が出るんだろ。
スマホ……はこっち来るときに画面がバキバキにぶっ壊れてたから多分違うし、プログラミングなんて授業以外でしたことない。
FPSは、ガチ勢が怖くて震える俺が楽しめるゲームじゃなかったし、RPGも課金するまでハマってないから、死の魔王さんみたいな最強キャラもこさえてない。
死んでもリセットされるのは強そうだけど、正直ちょっと恐ろしい。
あーでも困ったポンコツ女神ちゃんがもらえるなら、なんでもいい、とにかくチートと引き換えたい。
俺ん家は、千年の長い歴史を誇っているずっとふつうの底辺家庭だったから、ピンチになって覚醒する、秘められた都合のいい血統なんてもんはもちろんない。
戦争とか、生産とかの知識もないし、技術もなくて、子供のときに空手道場に通ってみたけど(もちろん胴着姿のかわいい女の子たちを拝むため)イキったクソガキリーダーにさんざん痛めつけられてすぐやめた。
もしも、そのとき相手が、赤いランドセルのミニスカートの黒ニーソのツインテールのツンデレのお姉さんだったら、ぜんぜん我慢できたのに。
いやほんと、そっちの過去がほしかった。
うん、まあ、つまりね。
もっと具体的に何が言いたいの?っていうと。
俺みたいに心がきれいで優しい天使のようなペーペーの凡人が、異世界生活をどれだけ楽しめるかは、結局、もらえるチート次第だってこと。
そして俺には、叶えてみたい、ささやかな夢が少しある。
偶然もらった力でも、なんでもいい。
「テメーは日本の恥だ」ってみんなに言われてもあんまり気にしない。
気持ちがいい、さわやかなイキリの風をこの身にまとい、
周りの人間すべてをイラっ☆とさせる“ドヤ”顔を浮かべ、
これ以上ないってくらい最高のタイミングで、
最低クズ野郎のケツが、俺のスマホ画面みたいにぶっ壊れるほど、
ぶっといチートを、ぶちかましてみたいんや!
それにスローライフなんてほっこりしたこと、俺には似合わねぇ。
目指すは王道、
世界共通みんなの夢、
“最強イキリハーレム主人公”ーーマイケルじゃ!!
うるせぇ王族や貴族も、わっるい盗賊や奴隷商人も、いちゃもんつけてくる勇者や冒険者も、みーんなぶっ飛ばしてハーレムを築いたる!
実は強いけど隠してますよプレイも、俺には耐えられねぇ。
力の違いをマッハで見せつけて俺ツエーじゃ!
初めましてからのクライマックスや!
あー現代知識でみんなにチヤホヤされるのもいいなぁ。
さすマイケル! みたいな。
え? だめ?
少しくらい、褒められたっていいじゃない、人間だもの、まいけるも。
あいや、ちょっと待てよ。
あんまり期待しすぎるのもアレか。
ハズレチートが出てきて、オチがついちゃう。みたいな。
世界の法則だわね。
よし、落ち着いて、クールな主人公になるのよマイケル!
ニヒルでポップでインテリジェンス!
何が起こっても冷静に、目を伏せて、こう言うの。
「……やれやれ、またやっちまいましたか」
おお! めちゃカッコいい! これこれ! これに決まりばい!
『……! 出ました。』
「んいやっ、ほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!」
『うわぁ近いです! ちょ、くそ離れてください。くさいです。』
抱きつこうとしたら、くさいって言われた!
好きな子にひそひそ言われたことはあるけど、幼女にまっすぐ言われると、また違った幸さがあるな……って、
「いやいやいや! 今ここにあるのって精神だけでしょ!? この神域じゃあ肉体は存在できないってプップちゃん言ってたじゃん! だから臭いわけない! 臭いはずない! 」
『くさいのはあなたの精神体ーー存在そのものです。……あと変な呼び方しないでください。くそ不敬です。』
ひどい。
それにしても、ほんと口の悪い女神さまだなぁ。
今日の朝、駅のホームですれ違いざま「うわきんも」「その顔でオシャレすんなよ」って罵倒してくれたJKたちと同じくらい、心殴ってくるなぁ。
悪口は本当にやめてほしい。
マイケルに歪んだ性癖はないのだから。
もっと言ってほし……くなんて、ないんだから。
いやほんと、見た目は女神というより、まさに天使みたいに可愛いのになぁ。
今も隣でくそくそ言ってる毒舌★女神プップちゃんは、俺の人生で(といっても俺はもう死んでるけど)見たことないレベルのすんごい美幼女なんだ。
それはもう、赤いランドセルがさぞ映えるであろう容姿だ。
彼女の小さな肩を流れている淡い黄色髪は、さらさらときらめく光だけでなく、とろけるような甘い香り(を幻臭させるなにか)を漂わせている。
ツヤツヤのたまご型おでこ。
クリクリの大きな目。
スッとしたたる高い鼻。
ツンっと結ばれたかわいい唇。
ひとつひとつの造形が、お日さまの光をたっぷり吸い込んだような真っ白いふわふわのお肌と相まって、見事な調和を生み出している。
着ている白と黄色のワンピースから伸びる太もも様なんて、思わずちょっと失礼してお昼寝をしたくなる。
こんな子が存在していいのかしら。
俺は怖い。
ロリコンじゃない俺でも、告白されちゃったりなんかしたら、きっと拒めない。
いやむしろ、こちらから結婚を申し込む!
リア獣は浮気も不倫も大好きみたいだけど(偏見)俺は永遠の愛を誓える。
さっきはハーレムなんて言ったけど、君がイヤだというのなら、俺の清らかな体は君だけのものだ。
そして俺は君のため、ひいては愛のために戦う!
たとえ都条例が、美しいふたりの仲を引き裂こうとも!
『……その妄想をやめてください。くそ頭痛がします。』
条例に見事打ち勝った俺たちの二人目の子供が産まれたあたりで、ストップップがかかった。
『いろいろ早すぎてくそ怖いです。というか子供の名前がププマイケルって何ですか。もう一人はケルケルムスだし。ネーミングセンスがくそ前衛的すぎます。もっとちゃんと可愛い名前をつけてあげてください。』
ツッコむのは名前なんだねプップちゃん!
ていうか、そろそろナチュラルに心読むのやめようかプップちゃん!
『生まれてきた子供に罪はありません。この《こころめくり》は常時強制発動型のチートです。《青のくそ女神》にひっつけられたのがなかなか取れなくて……それより、あなたの“チート”については聞かないんです? そのまま転移します?』
「おっけ。さっさと出て行けってことね。たしかに、あんまりしつこいと嫌われちゃうよって愛読雑誌MoteNightにも書いてたなぁ。じゃ今日のところは帰るよ。
でも忘れないで。
俺はいつまでも君のこ『ではくそ頑張ってください。』ほげーー!!」
床がガコンと開いて、俺は落とされた。
「ーーーーチートどころか異世界に送られる理由とかまだなんにも聞いてないんですけどおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
落ちていく最中、可愛らしい『あ。』という声が聞こえた気がした。
ここまで読んでくれて、どうもありがとう。
変な主人公ですが、心はいいヤツなんで、どうぞ仲良くしてやってください。




