THE END IDEOLOGIST CLAN
「凪の国」を、目指せ――。
“人生は労苦して果たさるべき課役である。
もしも生殖の行為が欲情にともなわれた要求ではなしに、純粋な理性的考慮の仕事だとしたら、人類は一体それでもなお存続しえたであろうか。
むしろ誰もがきたるべき世代に対して深い同情を感じて、なるべくなら彼らには現存在の重荷を背負わせるような真似はしたくはないと思ったりはしないであろうか。
世界はまさしく地獄にほかならない。
そして人間は一方ではそのなかでさいなまれている亡者であり、他方では地獄の鬼である。”
――――ショーペンハウエル『自殺について』より
あらすじ
昭和十二年。 山梨県上巨摩郡十津野市――。
南朝後胤の家系にある革命家・田沼一水と彼を信奉する同志たちによって結成された秘密結社・日本残菊党。それは大日本帝国の武力放伐――つまりは国家転覆を党是とする過激革命団体であった。
殺された妹の復讐を果たすため党組織に接触した主人公・間宮誠一郎は、過激派の幹部・吉岡ツネの門弟となり自身を襲った悲劇の真相に迫ろうとする。 だが折しも残菊党内では吉岡を頂点とする過激革命派勢力と、これに反対する穏健派勢力との間で血みどろの抗争劇が繰り広げられていた。
吉岡ツネと反目する敵対派閥は揃って吉岡の革命計画からの排除を狙い、一方の吉岡派も武装集団「殉血勤王隊」を束ねるエリヴェラ・チェルネンコを筆頭に、敵の大ボスたる文殊院義円の命を狙う。
エリヴェラら吉岡派の仲間たちとの出会い、忍び寄る特高警察。そしてフラッシュバックする過去の記憶に苛まれながらも、間宮は「必ず復讐を果たさせる」と約束した吉岡ツネに従い、否応なく銃を手に取り、複雑な勢力争いと、水面下で進行する革命計画に身を沈めてゆく――。
登場人物
間宮誠一郎
・本編の主人公。数奇な運命に翻弄される。
エリヴェラ=チェルネンコ
・武装集団「殉血勤王隊」を率いる女傑。ロシア出身。
十月革命当時は子供ながらパルチザン部隊に従軍し「死神」と恐れられた。
田沼一水の養女となり「冥月」という日本名も持っている。
赤目
・少女ながら吉岡ツネの用心棒を務める。かつて孫文の中華革命党傘下で汚れ仕事を請け負っていた暗殺団の出身。
十津野宮宇気比
・田沼一水の娘で「裏南朝」における皇女。奥十津野の十津野宮大社にて「神器」を護っている。
吉岡ツネ
・日本残菊党黎明期からの古参かつ最も過激な闘士。党内に嵐を巻き起こす。一方で吉岡派の門弟たちを子供のように愛し、導こうとしている。
田沼一水
・日本残菊党党首。「凪の国」建国のため陰謀を巡らす。
田沼家は南朝後胤の家系で、十津野に古くから続く「裏南朝」の一族である。