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短編集

オブジェクト

作者: 囘囘靑

 私のいとこの子どもに、大学生になる娘がひとりいます。


 彼女は、進学を機に親元を離れ、都内にアパートを借りてひとり住まいをしているそうですが、幸いにも友だちに恵まれ、充実した学生生活を謳歌(おうか)しているようでした。


 つい先日、彼女は大学の女友だちを何人か連れて、自分のアパートで女子会を開いたそうです。皆お酒が回り、テンションが上がる中、玄関のチャイムが鳴らされました。


 こんな夜中に誰だろう……と、彼女が警戒しながら玄関を開けてみると、そこには宅配便の配達員がいました。ここにきて彼女は、自分がつい二、三週間ほど前に新しいパソコンを購入したこと、そのパソコンは今日家に届けられる予定だったこと、しかし、注文を受けてから製造、納品されることとなっていたため、時間指定の配達ができなかったこと――を、思い出したのでした。


 彼女はパソコンを受け取ると、部屋まで戻りました。部屋にいた彼女の友だちは、「パソコンが届いた」というだけでも大いに盛り上がり、「彼女がパソコンを抱えて浮かれている様子を写真に撮ろう」という話になりました。


 早速友だちのひとりが、彼女とパソコンとを被写体に、スマホを掲げて連写しました。


 しかし、出来上がった写真のひとつを見た瞬間、その友人が突然、興奮した面持ちで、彼女に対して写真を見せてきました。どうしたの? と彼女がスマホの画面をのぞいてみれば、そこには、彼女の周囲を取り巻くように、小さな白い発光体が映り込んでいました。


 うわあ、これって、心霊写真ってやつ? ――と、彼女も友だちも興奮してそう言い合いました。発光体はあまりにも小さかったため、皆は恐怖というよりも、好奇心の方を強く覚えていました。


 しかしながら、連写された写真を複数枚スクロールしていくうちに、皆はあることに気付きました。


 まず、発光体は、連写した写真の全てに映っていること。もし、写真に映っている発光体が、例えば“霊魂”とか、“オーブ”とかいった(たぐい)のものであるならば、全ての写真に映り込むことは、とても不自然なことのように、皆には思えました。


 次に奇妙だったことは、それらの発光体は、どの写真においても、全く同じところに映り込んでいたということです。


 何でだろうね? と、友だちのひとりが、本棚まで近づきました。発行体のひとつは、本棚の本の隙間にいるように見えたためです。


 その友だちは、本の隙間に手を伸ばしました。そして、けげんな顔をしてから、何かをつかむ仕草をしてみて、それを思い切り引っ張って外へ出しました。


 それは、隠しカメラ。

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