表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

◇プロローグ

 小さい頃は雨が嫌いだった。


 退屈で、憂鬱で、窓ガラスを伝っては流れていく雨を窓辺で睨むように眺めていた。頬杖を突いていた手の跡が頬にくっきりと残るまで、ずっと。


 あんまりにも雨が続くから、俺はてるてる坊主を作ってあげることにした。


 ティッシュを丸めて、ティッシュを被せて、輪ゴムで首を縛る。マジックでニコニコ顔を書き込むと、自分なりに上手くできたような気がした。頭にも輪ゴムをテープで貼りつけて、窓辺に寄せた椅子に乗ってなんとかぶら下げられた。未就学児童のすることだ、今思うと随分お粗末な出来だった。


 俺の作ったてるてる坊主の効果はまるでなく、翌日の七月七日も容赦なく雨が降った。


 せっかく作ったてるてる坊主のご利益のなさに、俺は窓辺で泣いていた。メソメソ泣くようなタイプじゃなくて、それは盛大に声を大にして。


 そうしたら、四つ年上の兄貴が来て、慰めるどころか大笑いした。

 ティッシュに輪ゴムの安上がりなてるてる坊主で雨がやむなんて、そんなことを思っていた方が笑えるとか、平然と言ってきた。


 頑張って作ったのに、ひどい。

 その程度の頑張りに望むものが大きすぎたのか。


 そう、世の中はそんなに甘くない。

 小さな祈りは叶わない。


 これは俺、藤倉ふじくらかけるがそれを知った、他愛のないエピソード――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ