雷は不思議を呼ぶ
ちょっと短いです
「にゃははっ、なんつう声出してんだ!」
「やかましい!」
「ぬあっ!ぐえぇっ!」
昼寝ならぬ朝寝を邪魔するとは何事だ!
怒りがふつふつと湧いて、即座に反撃に出る。
体を腕で支えながら皆高の足を払ったら、ひっくり返って背中から地面に打ち付けた。
「何すんだ窿っ!」
「こっちのセリフだ、アホ!寝てるやつにチョップすんな!つか、何しに来たんだよ」
皆高はチャラくても、成績が悪くても、授業をバックれるようなやつではない。
むしろ、堂々と先生たちの前で寝だすのだ。
今まで屋上に来ることなんて滅多になかったというのに、どういう風の吹き回しだろうか。
不思議に思っていると、扉がまたも音を立てて蹴破られた。
そこからちんまりした人影が出てくる。
というか、どいつもこいつも扉を壊す気か。
壊れたら修理のせいで屋上に来れなくなるじゃないか。
それは何が何でも阻止したいところである。
「ふっふっふ〜。隊長が直々に来てあげたのです、さあ、作戦会議を開くのですよ!」
手を腰に当てて仁王立にしているのは鳴海だった。
ブレないやつである。
最近、キャラが暴走気味でもある彼女の制御は今まで誰の役目だったのだろうか。
「昨日言ってたやつか……。会議って。てか、高も?」
いつの間にか起き上がって汚れを叩はたいていた皆高が顔を上げる。
「おうよ!俺様が加勢するからには情報も荒稼ぎ間違いなしだぜぇ!」
「さて、今日はどこから探しましょうか〜」
鳴海が皆高に背を向け、窿太郎の横に腰掛ける。
「で、噂の会長はどこに現れたんだ?」
「俺様の情報では「三野宮の交差点を東に進んで一番手前の細道をしばらく歩いたところだそうです〜」」
「ふうん。他のみんなも同じところで見たのか?」
「おい」
「いいえ〜。日によって違うようですね〜。なんかちょこまかしてます。その次の日には蛍駅の踏切を渡っていたそうですよ〜」
「面倒くさいな。なんでそんな一気に移動してるんだか」
「こら。無視してんじゃ「こざかしいですよね〜」ねぇ!」
「小賢しいってお前・・・時々ズバリ言うよな。にしても、不規則ならピンポイントで場所を確定するのも無理か。悠真たちのドッペルゲンガーもどこにいるかわからない、っていうかいるかどうかもわからないしな」
「は?委員長たちも発見されてんの「一応、地図に印を付けていって、規則がないか確認しますね〜」・・・」
「むむむっ無視すんじゃねええぇ!」
鳴海が予あらかじめ持ってきていたiPadを手にして地図にピンを刺していく。
なにやら雑音が混ざっていたが、無視していたのに荒ぶりだした。
あ、皆高。いたのか。
「いたのか。じゃねぇぇぇぇ!俺の話を聞けよぉぉぉぉっ」
髪をガシガシかきむしりながらとうとう咆哮を上げた。
鳴海の手が止まり顔を上げる。
窿太郎も皆高に振り返った。
「なんでしょう?」
「どしたんだ?」
「え。なにその反応!散々俺のこと無視しやがって。聞けっての!」
「おお〜、情報提供ですね。お願いします〜」
「くっ、白々しい!」
「はよ喋れ」
「なんでお前らは俺に対してそんなに当たりがきついんだよ!くそぅ。
会長の出現場所は今まで発見されたので計14カ所だ。全部バラバラのカ所だが、時間は大体夜の11時11分前後。服装は制服で、いつもの会長だったそうだ。まあ、声をかけても喋んないのはいつものことなんだけどさ・・・」
「反応すらしなかったのか」
「ああ」
「へぇ〜。以外と情報通ですね、高っち」
「しかも、日にちはランダムなんだが、なんとなく奇数が多い。」
「会長がそんな時間に徘徊してんのも謎だけどさ、どこから来てどこに帰るのか見たやつっていないのか?」
「いないようですよ〜。追跡しても、いつも撒まかれるそうです」
「ま、それは会長が相手だから仕方ねぇんじゃねぇ?」
「それで納得できるあたり、会長って只者じゃないよな」
「ですね〜。それで、他に情報はないんですか?」
鳴海が挑発的な笑みを浮かべる。
「ぐっ!これでも結構苦労したんだぞ!集めた方だろ。そもそも窿は何にも情報集めしてねぇじゃねぇか!」
こちらをビシッと指さしてきた。
男が涙目とかやめろ。
引くから。
それにしても……。
そうかそうか、舐めてるなこのやろう。
ふふふ、聞かせてやろうじゃないか。