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雷の使い方、間違っていると思います!  作者: 焼かれた魚
雷と神隠し
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雷・神・上

タイトル、全部「かみ」って読みます。まあ、雷様は無理矢理感がありますが...気にしない!



人は何のために生きてくのか

誰も知らずに産まれる

わかってるさ

だけど君は求めてここまで来た


普通になりたくて(もが)いてた

言葉は意味を持たない

体現努力の前では

だから僕は求めてここまで来た

理想を求めて


喧騒に埋もれる友の声

軽快に靴音鳴らす君の声

尊く思えた

何が変わった?

重く骨に響く僕の声

小さな世界で

理想を求めて


「またその曲歌ってるのか」


「ふふん、いい歌でしょ」


「歌詞の意味がわからない」


「はあ〜。センスないよね、やっぱり」


「やっぱりってなんだよ」


「ま、そんなところも、らしいよねっ」


「あ、コラ。ひっつくな。歩きにくいだろ」


「照れてるくせに〜いひゃいっ!むぅ、デコピンはやめてよ」


「馬鹿なこと言ってるからだろ。ほら、行くぞ……


 飛鳥あすか








走馬灯って本当にあるんだな。


幼稚園時代に友達と泥沼にはまったこと。


小学生の頃、カエルを校庭に大量に放って先生にこっ酷く叱られたこと。


中学ではよく喧嘩をして身体中に痣がたえなかったこと。


どうでもいい、しょうもないことまで鮮明に視界を埋め尽くす。


その中でも妹の映像が多いのは、いつも一緒にいたからだろうか。


もう3年が過ぎているというのに。


妹の笑った時の笑窪(えくぼ)や細目、驚いた時にしゃっくりが止まらなくなる癖、好きなバンドの新曲を聞いた時の目に浮かぶ高揚。


隣にいるかのようにはっきり思い出される。


たまに幻聴を耳にするぐらいだ。


だが、それを走馬燈として見てしまったからだろうか。


今更、あの時に感じた後悔ややるせなさが心臓を締め付ける。


もし、あのとき遅れていなかったら。


何故、あのときに限って一緒に行こうとしなかったのか。


何か一つでも違っていたら。


「何かが変わっていたのか……」


「そうだね」


独り言のつもりだった。

返事が返ってくるのは予想外で、焦って見渡しても誰もいなかった。


あれ?喋れる。


相変わらず視界は真っ白だけど浮遊感は消え去り、見えない地面の上に立っているようで不思議だが、なぜか不安感はない。


「あれ、俺って死んだんじゃ……」


「死んでないっすよ。かろうじて」


聞いたことのない高い声。


けれど落ち着いていて、心地いい響きがある。


裏声のような、かすれたような、それでも凛として聞き取りやすい。


「誰だ?」


「誰でしょう」


知らなから聞いているというのに質問を質問で返されてしまった。


この手は自分も、よく相手をイラつかせる手段でも用いていた。


そのため、サラリと流すことが出来た。


それよりも、どこから響いてるのだろうか、この声は。


「いるじゃん、目の前に」


「うぉわっ!」


今まで誰もいなかったはず、だった。



急に現れた存在は、小さかった。


美形だが、少年か少女かわからない顔立ちは無表情で。


肩までかかる白だか金だか見分けにくい髪が、無造作におろされている。


跳ねている毛にも気を留めない見上げている姿は、何を考えているのか、まったく判別出来ない。


不思議な雰囲気をまとっている。


「なんでここにいるんだい?」


「いや、こっちが聞きたいんですけど」


得体の知れない人物に敬語になってしまう。


「せっかくさりげなくさー、すれ違うようにしてやってたのにー」


「は?」


「あいつだって気づいてなかったんだぞ」


「えっと」


「今までのだって・・・僕の苦労は・・・」


「あの〜?」


「私の努力はなんだったのよ!」


コロコロと変わる話題と、人格が変わったかのように転じる口調と表情に怖気付いて、言い表せない恐怖が湧き上がってくる。


声だけが穏やかで変わらないのが唯一の救いだった。


何いっているのかコイツは、窿太郎がと思っていると。


髪をわしゃわしゃとかきむしっていた少女?少年?が白っぽい色の上に金箔が散りばめられたような輝く目を向けてきた。


半目だけれど。


「私は神っす」


「は?」


やっぱ何いってるん、だコイツ。


「コイツじゃないっす、神っす」


ん?

俺、声に出してただろうか。


「出していなくてもわかるっすよ」


心を読めるのか?


「その考えで概ねあってるっす」


なんだ、詐欺の手口か。


「失敗な!人間の犯罪者と一緒にするなんて!」


「じゃあ何でそんな口調なんだ?」


外見と口調のギャップが激しいぞ。


「それは...」


少年少女は眉を八の字に曲げて目を逸らした。


別に言いたくないならいい。


変な責任感は持ちたくないのだ。


何か訳ありっぽいし。


それにしても、神様にも訳ありがいるとは、世も末である。


「そんなことより!何であんなとこにいたんすか?」


「どこ?」


「公園!」


「ああ、あれか。俺たち、鬼に追いかけられてて...」


「鬼?」


「そういえば、みんなどこいったんだ?」


「下にいるっすよ」


下?白以外何もないんだが。


そう、ここはただの白い空間なのだ。


したと言ってもどこがしたか分からないし、まず自分が浮いているのか地に付いているのかすらわからない状況だった。


「あ、下ってのは人間たちの世界っす」


少女―――もう面倒臭いから少女でいい、髪長いし―――が手をかざすと、地面に大陸と海が広がった。


その光景に固まっていると、今度は雲が視界の端から窿太郎のすぐ側を横切る。


風が吹いているのだろうか、髪が揺れた。


全てを俯瞰ふかんするかたちで、ここは雲のさらに上空だとみえる。


白い個室にプロジェクターで全体を照らしたかのような映像だが、雲や風のあまりのリアルさに窿太郎の足が竦む。


って何か飛んでる!?


「ちょっ!何だあれ、デカっ!ヤバイぶつかる!」


遠目には鷲くらいの鳥の大きさに見えたのだが、距離が近づいてくるたびにどんどこ大きくなっていく。


しまいには、象何頭分だよと叫びたくなるほどの巨体を晒したのだ。



雷って、大昔は神様が鳴らしている音(声だとも言われる)だと思われていたみたいですね。だから、神鳴り→雷って呼ばれるようになったそうな。

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