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écrin(エクラン) 4

女性が好きそうな宝石が散りばめられた指輪や、王冠のような台座にダイヤが一粒鎮座している指輪。

婚約指輪の他にも、ペアーの結婚指輪もシンプルなものから、流線形の彫が入った指輪までそれぞれで、指輪に興味がなくても、目移りしてしまいそうだった。


値段もピンからキリまでで、真理がどんなものをデザインで頼むか、密かに気が気じゃない。


一生に一度のものだから、安いものにとは、男の見栄もあり言いたくはない。

でも、結婚指輪と違い日常つけるものじゃないから、高いものをっとも俺的には思えない。


何個か手に取らせてもらいつつ、さりげなく値段をチェックして軽くため息を落とした。


その中で、一つ。

婚約指輪にしては、女性らしくなく。結婚指輪にしては、ペアではない指輪が飾られていた。


「これ、見せてもらっていいですか?」

「すみません・・・こちらは」


女性店員が言葉を詰まらせ、チラリと藤村さんの方をみた。


「いいよ。僕が出すから」

「あ、すみません。もしかして売りものじゃなかったですか?」


藤村さんが、目の前に来て、俺が言っていた指輪を黒の革製のトレーの上に置いてくれた。


「そうなんです。売りものじゃないんですけど、これを手に取りたいって言うお客様は、今までいなくて驚きました」


確かに、宝石が散りばめられているわけじゃないから、女性客は見向きもしないかもしれない。

結婚指輪を買いに来た客も、一つだけの指輪には目もくれないだろう。


完成された美しさがある訳ではない、少しこの店には不似合いな太めのフォルムに流線形の彫がされた、その指輪が俺はとても気になった。


「俺は、綺麗だと思いますけど…」

「どうぞ、つけてみてください」

「いいんですか?」


売りものじゃないと言っていたから、見た目と違い凄く高級なものかと、緊張しながら藤村さんを見ると柔らかく微笑み、その指輪を俺の手の上にのせてくれた。


少し重みがあるその指輪を手に取り、左手の人差し指につけるとまるで自分の為に作られた指輪の様にピッタリとしていた。


つけた指をまじまじみていると、藤村さんは一瞬驚いた顔をした後、面白そうに笑い始めた。


「え…俺、何かおかしい事でも?」

「あ、いえ。すみません。彼女さんのエンゲージリングを探しに来たなら、もし自分がつけるなら、結婚指輪のはずなのに、お客様が薬指ではなく人差し指につけたので」

「ああ、そう言えばそうですね」


藤村さんにつられて、俺も思わず笑ってしまう。

確かに、そう言われたらそうなんだけど…


「この指輪、人差し指の方がシックリするような気がして」

「気に入っていただけましたか?」

「はい。デザインといいフォルムといい、俺は好きですよ」


指輪をはずし藤村さんに渡すと、藤村さんは指輪を指で挟み、何か思い出すように目を細めた。


「これは僕が、初めて作った指輪なんです」


そう俺に告げた藤村さんと、指輪の輪っか越しに視線が重なった。

【お知らせ】

まったく、まだBLっぽくありませんがw

今週いっぱい、更新をお休みします☆

待っていただけたら、嬉しいです(*^_^*)

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