ep.31
少し話を深めます。
それではどうぞ。
「まさかとは思ったが・・・。
ここまで魔力が増えているとは。」
明日から学校が始まるという今日。
俺は急激に増えた魔力量に四苦八苦していた。
「やっぱり急激な変化に体がついていっていない。
今までが少なすぎたからな。」
「それでも、根気強くやるしかないでしょう。」
悪戦苦闘していると爺が声をかけてくれる。
「分かってるよ。厳しいけど、弱音をはくつもりはないよ。」
「それは重畳ですな。
それと訓練中に申し訳ないのですが・・・。
秋様に来客でございます。」
「客?俺にか?」
「はい。客間でお待ちいただいておりますので。」
「わかった。支度したらすぐ向かうよ。」
「・・・来客ってのはアンタだったか、ババァ。」
「ひえっへっへ!相変わらずの減らず口じゃのぉ!
まぁ、粋がるのも若者の特権!今のうちだけじゃからの!」
「年よりのアンタに言われると説得力が違うな。」
「当たり前じゃ。伊達に年は食っておらぬよ。」
・・・つい最近どこかで聞いたセリフだが。
この人が言うとおふざけにしか聞こえないのはなぜだろう。
来客というのは、学校の校長だった。
まぁ、笑い方とかしゃべり方で一発で分かったと思うがな。
しかし珍しいな。わざわざ一生徒の家まで訪ねてくるとは。
という旨をババァに伝える。
「なぁに、ちょっと野暮用がの。」
「野暮用?」
「お主、「封印」を緩めたの?」
「俺じゃない。あの方の意向だ。」
「・・・・」
ババァは俺の指にはまる指輪をじっと見つめる。
いつもの飄々ちした雰囲気は消え失せ、辺りには「殺気」にも
似た真剣さが漂っている。
「もう試したのかえ?」
「いや、実はけっこう苦戦しててな。
割合でいうと・・・6、7割しか扱えていないな。」
「じゃろうと思ったわい。
急に器が解き放たれ、魔力に満ちているのは良いが・・・。
肝心の魔力の引き出す量がバラバラで、しかも少ない。」
「安定していないか・・・。その通りだな。」
「まぁ、今まであんな「雫」ほどの魔力を全力で扱っていたのじゃ。
三輪車を使っていたものに、急にバイクに乗れ、といっても無理なのと同じじゃ。」
「・・・・それで?
話はそんなことじゃないだろう?」
と、脱線しかけていた話を本題へと戻す。
「そうじゃそうじゃ。すっかり忘れるとこじゃった・・・。
ひとつ単刀直入に聞かせてもらおう。」
お主、『宝刀』はいくつ扱える?
Side:???
「『アレ』は、あとどのくらいで終わる?」
「は。あと3か月くらいだと・・・。」
「3ヶ月か・・・。長いな。」
「お言葉ですが、それは仕様がないかと。
幾重もの警戒をかいくぐり、こちらも目を光らせ続けなければなりませんので。」
「・・・あやつが消えてからもう4年。
今のうちにやれるべきことはやらねばな。」
「ええ。この「復活」がなれば今の「魔法社会は終わり」をつげ、
今一度私たちの天下が訪れるでしょう。」
「これまでは、なんどもあの家に邪魔されたからな。
それで?跡取りの情報は?」
「いえ、まだ私の所には何も・・・。」
「そうか、ならば下がれ。
私は今から色々調べ物をする。」
「かしこまりました。
それでは失礼いたします。」
側近が下がったあと、私は一人部屋の中で頭の中に巡らせる。
私の願いの成就を。
先祖から引継ぎし恨みを。
魔法に対する怨念を。
そして待ち続けやっと訪れた100年に1度しかない
このチャンス。
失敗は許されない。
なにがなんでもなせばならない。
私の代でこの野望に終止符を打つ。
そのためならば手段は択ばない。
「邪魔などさせるものか。
歯向かうならば、真正面から叩き潰してやろうぞ。
・・・なぁ、『天導』よ。」
やっと登場しました。
『宝刀』と『復活』。
この二つがこれからの話のキーワードとなります。
色々な思いが重なり、一つの話を作っていこうと思います。
こうご期待くださいませ。