ep.27
今回は、ナギサとシュウの力の一端を明かします。
「さて、お次は・・・」
「・・・順番的に私?」
「あぁ、そうだな。んじゃ、ナギサ頼んだ。」
「・・・ん。」
と、ナギサは座布団の上で居を直す。
「・・・名前は、月島 渚。クラスは、2組。
色は・・・わからない。ランクは・・・3桁。
多分、この中でも一番役立たず。・・・ごめん。」
と、ナギサは落ち込んだように顔を伏せる。
・・・いや、実際に落ち込んでいるのか。
「ちょ、つ、月島さん!!役立たずとかそんなことねぇって!」
「そ、そうだよ?だからさ、そんな悲観しなくていいって!」
「そうそう!トリプルがなんだ!!
このユーマ(アホ)なんて役立たずじゃなくてただの屑だから!」
「そうそう・・・っていうとでも思ったか!
お前、なんでこんな時にいらんこというんだよ!?」
「ウチは真実を言ったまで!それとも!なんか反論ある!?」
「な、ないです・・・。」
おおう、ムイのやつ気迫で・・・いや勢いでユーマを黙らせた。
てか、ここまで来ると言い合いじゃなくてただの漫才だな。
・・・まぁ、漫才にしてはボケ(?)が多少熾烈だが。
「・・・ふふふ。」
「「???」」
と、ナギサの口からかすかに笑いが漏れる。
「・・・ありがとう。」
自分を気遣ってくれた嬉しさで、ナギサの口からは自然に感謝の言葉が出ていた。
「い、いや!それほどでも!!」
「そうそう!気にしない気にしない!!」
二人とも照れてニヤニヤしている。
・・・なんか気持ち悪いな。
「おい、シュウ。どうかしたのか?」
「ねぇ、シュウくん。ウチらがどうかしたの?」
「い、いや。なんでもないよ。
まぁ、俺がいいたいのは・・・。」
俺はそこで一度言葉を切り、
「ここにいる奴らはナギサのことを「役立たず」なんて思っちゃいないさ。
それに「魔法」が使えなくても、お前には誇れる「力」があるだろう?」
「・・・分かった。」
と、ナギサは自らの目に力強い光を宿す。
「・・・皆知ってのとおり私は「魔法」が使えない。
でも、それでもみんなのサポートは出来るはず。」
「サポート?」
と、マイが首をかしげる。
「サポート・・・とはどういったものでしょう?」
重ねてレイが尋ねる。
「まず、私の持っている力について話す。
私は、『完全記憶能力』をもってる。」
「それって、「一度見たものを全て脳にインプットできる」ってやつ?」
「・・・そう。だから、それを見せる。
マイ、さっきの買い物のレシート・・・持ってる?」
「あぁ、あの無駄に長ーいやつね。珍しいから大事に折りたたんで財布にしまってるけど。」
と、マイは財布から一枚のレシートを取りだす。
「・・・って長くないか?」
マイが手にしているのは、長さ1メートルはあろうかという一枚の紙。
「・・・一体何をかったんだ?」
「あぁ、さっきの買い物はウチの要件も含まれてるの。」
と、ムイが説明してくれる。
なんでも、妃家の食材の調達だったらしい。
普段はお手伝いさんがやってくれるのだが、その人は用事がって買い物に行けなくなった。
ほかの人たちもそれぞれ仕事があった。そこでマイとムイが買い物だけを担当し、
買った荷物は近くまで家の人に迎えに来てもらったらしい。
「それにしても、多すぎないか?」
「仕方ないわよ。ウチらの家には使用人とか結構いるし。」
「うん、こういっちゃなんだけど・・・・
けっこうお屋敷も大きいしね?」
なるほど、それは『八名家』。やはり、家とかも大きいし使用人も多く雇っているだろう。
「・・・そのレシートに書いてあるもの。
上から全部値段と一緒に言っていく。」
「「「「え!?」」」」
と、ナギサがとんでもないことを言い出した。
「まじか、月島さん!?これ、全部覚えてるの!??」
「・・・それぐらいは余裕。」
と、言うとナギサは目をつぶる。
そして、
「○○産トマト2個198円×10。○○産きゅうり98円×10。○○産玉ねぎ120円×10。新鮮卵Lサイズ10個298円×10。・・・・・」
流れるような声でスラスラと買ったものを読み上げていく。
しかも、産地、値段、個数・・・さらには店員がレジに通した順番までピッタリだ。
そのまま3分間ナギサは、自分の記憶を頼りに買ったものをすべて言って見せた。
これには俺たち5人は驚かざるを得なかった。
その驚いた顔をみたナギサは、とても得意そうに笑っていた。
「さて、最後は・・・。」
「みなさんお待ちかねの・・・。」
「おいおい。だれが待ってるんだよ。」
「「「「「ここにいるみんなだよ!」」」」」
おおぅ!まさかここで素晴らしいチームワークの発揮!?
「はい、んじゃトリ。よろしくね?」
マイが笑って俺に自己紹介を促す。
「・・・はぁ。まぁ、順番だしな。
名前は、柊 秋。ランクは3桁。
得意な魔法や、よく使う色はないな。
よし、以上。さて、暗くなったしそろそろ・・・」
「「「「「終わらせねぇよ?」」」」
・・・はい。
てことで、なぜか庭にぽつんと佇む俺。
やはりあのまま逃げれず、その場満場一致で俺も使える魔法を披露することに。
はぁ、さてどう乗り越えようか。
と、悩みつつふとみんなの方を振り向く。
「・・・!」
皆の目に映っていたのは、炎。
それはただ単なる「興味」ではなく。
「本当の俺を少しでも見極めよう」という強い意志。
色んなことを隠している俺。
何の事情も話さず、皆からの問いも有耶無耶にいつもしている。
それでも、皆は俺のことを真剣に見てくれている。
ただ、一つの魔法を見せるだけ、なのにだ。
そこから俺の「本当」を少しでも見出そうとしてくれている。
事情を知って深くは聞けないけど、少しでも自分の力で俺を知ろうとしている。
今まで俺はずっと一人だった。
あの方から再びチャンスを得てから孤独に黙々と修行をこなしてきた。
そんな孤独だった俺と「友達」になってくれた皆。
そんなみんなの真剣なまなざしを見たら。
俺は、
自然と、
言霊を紡いでいた。
「『開け、八葉が一枚。雷に覆われしこの大葉よ。』」
(爺、すまんが頼む。)
(やれやれですが・・・わかりました。お任せください。)
俺の手にまばゆいばかりの光・・・魔力が集まる。
マイの魔法の時にも説明したが、魔力は質が高ければ高いほど
視認できやすくなる。
今の俺が集めている魔力の質は、マイと同等、いや・・・・
「・・・私より・・・・上?」
と、縁側に腰掛けるマイの口から乾いた声が漏れる。
「うそ・・・・、お姉ちゃんより上なんて・・・。」
「・・・シュウ、すごすぎ。」
「シュウ様、流石ですね。」
「・・・やっぱお前はすごい奴だったんだな。」
皆が様々な気持ちを抱いている前で俺は、俺の、俺だけの魔法を放つ。
「迸れ。『術式八葉・武御雷』。」
瞬間、屋敷の庭に雷撃が縦横無尽に駆け抜けた。
お読みいただきありがとうございました。
孤独だった秋には、自分のことを真剣に認めてくれる友人に、少しでも自分の「本当」を見てほしかったのです。
だからこそ、今回秋自身の「魔法」を初披露できました。
ペースが遅く、魔法がなかなか出てこない!と思ってる方申し訳ないです。
そろそろ少しずつでも戦闘シーンやら書いていこうかと思います。
チームのスタート編は次で終わりです。
それからの予定としては、GWの話(時間としてはあまり進んでいません。)
を少し書いてから、いよいよ『魔導闘演武』の学内予選編を書いていきます。
かなりの駄文ですが、頑張って書いていこうと思います。
感想を書いてくれた方、ありがとうございました!
やっぱり作品を読んでもらえるってのはうれしいですね。
他の方々もドシドシ感想、評価よろしくお願いします。
長文失礼しました。