ep,21
「はい、それでは席についてー。
HR始めるわよー。」
ざわざわした教室の中で九条先生の
声が響く。
みんなおしゃべりをやめ、それぞれの席につく。
「よし、それじゃ今日のHRを始めるわね。
話ばっかでつまらないかもだけど、大切なことばかりだから
ちゃんと聞くよーに!
分かった?」
はーい、と何人かが気のない返事をする。
それに九条先生は多少不満の色を見せたが、
構わず話をつづけるようだ。
「ふん!そんなやる気がないのも今のうちだけ!
この話を聞けば、みんな目がギラギラし始めるわ!!」
九条先生は、若干興奮気味で話し始める。
・・・そんな俺たちが興奮するようなニュース?
一体なんだ??
と、俺が一人想像していると、
九条先生がこう言った。
「今年度より、学校の規則が変えられ、
『魔導闘演武』の学校予選に2年生も出場出来るように
なったのよ!!」
と、先生が教壇から身を乗り出す。
一瞬、教室中が静まり返る。
しかし、次の瞬間・・・・・
「「やったぁぁぁぁ!!!!!!」」
ワー!!!!!!
クラスの奴らが、騒ぎ始めた。
廊下の向こうからも騒いでいる様子がうかがえる。
他のクラスでも爆発してるのか。
「はいはい!みんな、うれしいのは分かるけど
ちょっと落ち着いて!!」
先生は、みんなを抑えるのに必死な様子。
・・・今のうちに隣のマイに聞いておこう。
「なぁ、今のってどういうことだ?」
「あー、シュウくんは転校してきたから
知らないんだね。」
と、マイはこちらに身をただし、説明してくれる。
「あのね、『魔導闘演武』は言うならば全国の魔法学校、
それぞれの代表が出場して、学校の威信をかけて
魔法の能力を競い合うの。」
なるほど・・・
各校で選抜された代表に魔法で戦わせ、
学校で順位をつけることによって
魔法力向上を目指す・・・ってことか。
「ほう、それで?」
「うん、それでなんでみんなこんなに喜んでいる
かというと・・・・
去年までは、学校の選抜8チームの決め方は、
3年生から学内予選上位7チーム。
そして、教職員推薦チーム、これは2年生から選ばれるんだけど
たった1チームしか選ばれなかったの。」
そういうことか、納得がいった。
この学年の生徒数は200人(40×5クラス)。
そこから選ばれるのは、たった1チームの6人。
チャンスが圧倒的に少ないのは明らかだな。
「はい、よーく聞いてね!
今年度より学内予選を二つ設けます。
一つは言わずもがなで3年生のトーナメント。
そして新たに2年生の学内予選トーナメントも開催します。」
九条先生がよく通る声で説明をつなげる。
「そして、学内予選上位3チームが、あなたたち学生の晴れ舞台。
『魔導闘演武』の出場権を得られるの。
ただし、生半可な実力じゃ全国にでても恥をかくだけよ?」
と、急に教室に静寂が広がる。
「たとえこの学校のトップクラスだとしても。
全国の舞台ではぼろ負けするかもしれない。
それはあなたたちが恥をかくことになるし、
ひいては学校の名誉も傷つけかねない。
自分の力を過信せず、ちゃんと本当の実力を見極めたうえで
エントリーしなさい。
そのために今回早めの告知にしたわ。
締め切りは来週の金曜、今日が金曜だから
十分でしょ?」
と、九条先生が俺たちに同意を求めてくる。
一週間の猶予をやるから、その間に
腹をくくれ、そう俺たちにいっているのか。
まぁ、とにかく出るからには相当の覚悟がいるな。
「それじゃ、もし出場をしたいチームがいたら私のところに来なさい。
いっとくけど、これは遊びじゃないわよ?
これも授業の一環。ふざけた試合、腑抜けた魔法を見せたら
即、あなたたちの成績を減点します。
普通じゃありえないくらいにね。」
と、先生が最後の最後で脅しをかけてくる。
たかが高校の成績と侮ることなかれ。
この成績が、今後の進路に大きく影響するのは確かだ。
しかも、魔法学校からの進路だ。
失敗すれば、人生で大きく挫折するといっても過言にはならない。
そして何点か連絡をした先生は、これで終わり、
として教室を去り、放課後が始まった。
「どーするよ、シュウ。」
ユーマ、マイ、ムイが俺の席に集まる。
話題はやはり、『魔導闘演武』のことだろう。
「どうするって・・・
俺たちは参加しないのか?」
「参加したのはヤマヤマだけど・・・・」
「ウチらチームすらできてないじゃん。」
あ、そういえばこいつらに話してなかった。
「あの、実はな・・・
チームのことなんだが・・・」
「「「???」」」
「えーーーっ!!?
つ、月島さんが入ってくれるの!??」
「そ、それに四谷って、あの実技のとき
すごかった奴だよな!?」
「シュウくん、い、一体どうやって??」
俺は、3人にナギサといレイをチームに
さそったことを伝えたら、
案の定驚かれた。
「ま、まぁ誘ったら快く応じてくれてな。」
まぁ、ナギサのほうは「快く」とはいかなかったが。
「そ、それなら結構いいチームが出来るんじゃない!?」
と、ムイは少しテンション高めだ。
「それはどうかわからないが・・・
一応、参加資格は手に入れたな。」
「そうだな!よっしゃ!」
「シュウくん。今度二人にあわせてくれない?」
「もちろん。だったら明日なんかどうだ?
ちょうど学校も休みだし。」
「そうだね!私はいいよ!」
「俺も大丈夫だ、明日は予定がねぇ!」
「ウチもおっけー!」
「わかった。だったら場所と時間はまた連絡するな。
俺は、ナギサとレイにこのことを伝えてくる。」
そうやって、俺は教室をでた。
さて、行きますか。