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ep,17

もうしわけありません。

2分割の予定でしたが、かなり長くなってしまいました。

「悪い。俺この後図書館に行かなくちゃいけないんだ。」


残りのチームの人数が2人から減らないが、

もうそろそろ学校も閉められる時間だ。


この前借りた本の返却期限が今日までなので

はやく返さなければ・・・。



「あ、そうなんだ。


まぁ、今日はこれ以上粘っても仕方ないね。」


「そうだな。


んじゃシュウ、玄関で待ってるから早く来いよ?」


「分かった。これを返したらすぐに行くよ。」


「おーう。」


「じゃ、先に言ってるねー。」





「と、ついた。」


急ぎ足できたおかげで結構早く着いた。


さっさと返して帰るか。



なかに入ると図書室独特の雰囲気を肌に感じる。


賑やかなのも嫌いではないが、

やっぱりこういう静かな場所は落ち着くな。


この本の匂いもいいもんだ。


これからもちょくちょく足を運ぼうかな。



なんて考えながら、図書室の隅に配置してある

返却ボックスに本を突っ込む。


「さて、玄関に・・・ん?」



目的を果たし帰ろうとすると、

本棚の後ろに人影が見えた。


そろそろ学校も締まる時間。


もちろん、この図書館にも人はいない。


なのに、一人で図書館にいる人影。


ふと気になり、その影に近づいてみると


一人の小柄な女の子が本棚を見上げていた。



・・・・どうやら上の本を取りたいみたいだ。


上の段にある一冊の本をじっと見つめている。


その真摯な表情につられて・・・



「あの、その本取りましょうか?」


「・・・?」


思わず声をかけてしまった。




こちらを振り返る顔は無表情で、

俺から見た第一印象は幼い感じがする。


しかし、顔の造形バランスはとても整っていて

美少女といっても差し支えないはず。


色白で、雰囲気は少し気だるげだが、それでも

だらだらしてる感じには見えない。



「・・・とってくれるの?」


と、こちらを見つめながら言葉少なに反応してくる。


「もちろん。この本でいいのか?」


と、俺はお目当ての本であろうものに手を伸ばす。


「・・・うん。」





「はい。」


「・・ん。ありがと。」


と、相変わらずの無表情。


でも、少し嬉しそうに見えるのは気のせいか・・?




「どういたしまして。


それより、かなり難しい本を読むんだな。」


彼女が読みたがっていたのは、英語で書かれた

魔法史の本みたいだった。


「・・・そう?」


「??難しいとか感じないのか?」


「・・・あまり。・・・本はどれも面白い。」


「へぇ。よっぽど本が好きなんだな。」


「・・・うん、好き。」



・・・やっぱり無表情だが、ちょっと声色が明るくなってることから

ほんとに好きなのが分かる。



「魔法史・・・ってことは歴史も好きなのか?」


「・・・そう。魔法の歴史は・・・興味深い。」


「そんなものなのか?俺は歴史はさっぱりだな・・・。」


「・・・私も最初はそうだった。


でも、読んだらおもしろった。」


「本当か?だったら俺もこれを機に読んでみるか。」


「・・・おすすめ、聞く?」


「教えてくれるのか?」


「うん。こっち。」



と、彼女は軽い足取りで俺を先導し始めた。




「これ、読みやすくて面白い。」


「ありがとう。さっそく借りてみるよ。」


「・・・」


と、なにか怪訝そうな顔を向けてくる。




「?そうかしたか?」


「・・・ほんとに借りるの?」


「そうだが、なにかいけなかったか?」


「・・・・初対面。」


「??」



「私たちは初対面。初めて会った人の言うことを

簡単に信じていいの?」



と、彼女が疑問をぶつけてくる。


すこし、いやかなり不思議そうだ。



「初対面だが・・・。俺は信じていいかなと思ったんだが。」


「なんで?」


「君の雰囲気、言動からほんとに本が好きなのが分かる。


そんな人がわざわざお勧めを教えてくれたんだ。


借りない手はないだろう?」


「・・・・」


「それとも、実はこれは面白くないのか?」


「そんなことないっ」



と、彼女は俺の発言に速攻反応した。


「な?今の反応でも十分この本を知り尽くしてることが分かる。


だから、ぜひ君のオススメのこの本を借りさせてもらうよ。」


「・・・渚。」


と、彼女がボソッと何か言う。





「?」


「私は月島つきしま なぎさ


「君」じゃなくて、渚。」


「あ、なるほど。これは悪かった。


俺は、柊 秋。


とにかく、月島さんのオススメを借りさせてもらうよ。」



「うん、わかった。」


「これが面白かったら、また教えてくれ。」


「もちろん。」





「そういえば、月島さんは何組なんだ?」


「2組。」


「なんだ、隣のクラスか。俺は1組。」


「そう。」




あれ?2組??


「悪い。一つ聞いてもいいか?」


「なに?」


「体育の時、一度も月島さんを見たことないんだが・・・。」



2年の体育は、2クラス合同で行われる。


俺は、1組だから2組と一緒てわけだ。



でも、何回か体育があったが月島さんを見たことはないはずだ。



「・・・私、あまり授業にでてないの。」


「そうなのか?」


「そう。だいたいここにいる。」



と、月島さんは少し悲しそうに図書館を見まわす。


「先生にはなにも言われないのか?」


「・・・・」



と、口をつぐんでしまった。


「ごめん。言いたくないならいんだ。


深入りしてすまなかった。」



と、謝るとフルフルと首を振る。


「いいの。気にしないで。」


「・・・そうか。」


「・・・・・」


「・・・・・」





と、二人の間が無言になる。






「私、『無能』って言われているの。」



と、彼女がおもむろに口を開いた。


「『無能』?」


「そう。『無能』」


「??」






「私は、あまりうまく魔法使えないから。」


「・・・・」


「昔の事故で、ちょっと異常になったの。」


「事故?」


「そう。そして私は既存の魔法・・・・・がうまく使えなくなった。」





彼女はぽつぽつと俺に語りだす。






彼女は幼いころの大きな事故にあった。


自分はここで死んでしまうんだと、本当に感じた。





もう目をとじて楽になろうとした瞬間。





あたりがまばゆい光に包まれた。


その光こそが「魔法」だった。


彼女の窮地を「魔法」が救ったのだ。





しかし、その事故のせいで彼女は内臓をいくつか損傷した。


その後、移植手術をうけ一命をとりとめた。




移植手術から一時して、彼女の体が不調を起こし始めた。


移植した内臓が彼女の体とうまく同調せず

異常をきたしてしまった。


大きな異常としては、「魔力が操れない」ことだった。






「魔力」というのは、体内で生成されたら

体内に存在する、「魔力回路」を通り任意の部分に運ばれる。



彼女の内臓は、この「魔力回路」に悪影響を及ぼした。


無数に広がる「回路」のうちに害を与え、

魔力がうまく廻らなくなってしまったのだ。



そのせいで、彼女はほとんどの既存する魔法をうまく発動できなった。


まれに発動したとしても、大きすぎたり小さかったりと。


とても魔法と呼べるものからとは程遠かった。





それでも、彼女はその異常に負けないように努力した。


魔力が扱えないなら、「知識」だけでも磨こう。


「魔法」への憧れ、自分を死地から救ってくれた「魔法」への

思いを胸に頑張り続け。


ついにこの魔法学園に入学した。





しかし、待っていたのは辛い現実だった。


この学園は、圧倒的な実力主義。


実力がないものは排他され、力のある者だけが

のし上がっていく。


それでも彼女は努力し続けた。


いつか自分も「魔法」で誰かを助けたい。


だれかにこの「魔法」への憧憬を認めてほしい。











「月島、お前には「魔法」は扱えない。


お前は「魔法」に関しては『無能』だ。


「頭」がよくても「腕」がよくなくては意味がないからな。」





この教師の一言が、彼女の、月島 渚をつらい現実から支えていた

「思い」を木端微塵に打ち破った。


いつもの彼女だったらここで憤慨でもして

負けじと頑張るはずだ。





だが、彼女はもう疲弊しきっていた。


いくら頑張ってもみにつかない「魔法」。


どれだけ努力しても一向に上がらない自らの「腕」。




打ちのめされ打ちのめされ、それでも立ち続けた彼女だったが。


もう立ち上がる気力は残っていなかった。







それから、彼女は図書館にこもるようになった。


あれ以来、クラスメートですらも自分を嘲笑してるように

見えてきたのだ。


だからクラスにも行けない。


もともと社交性があるほうではないので、彼女には特定の

友人といえるものもいなかった。







「だから私はここにいる。


頼れる人も、認めてくれる人もいない私の相手は・・・


この本たちだけ。」


「・・・・」


「いくら頑張っても、努力しても私は『無能』。


私は「魔法」が使えないの。」




俺はなにも言えなかった。


初対面の俺がここでどんな慰めの言葉をかけても

彼女には届かない。


そう、思ってしまった。




『下校時刻となりました。校内の生徒は速やかに帰りましょう。』



と、校内放送が流れる。





「長々とはなしてごめん。


こんなに長く話したのは久しぶり。」


「・・・・」


「・・・なんで初対面のあなたにこんなことまでしゃべったのか

分からないけど。


あなたの雰囲気がそうさせたのかも。」


「それは・・・」


「じゃ、またね。」



と、彼女は有無を言わさず帰っていく。



俺は一人で図書館で佇んでいた。




窓の隙間から入ってくる風の音が、


なんだが泣いてるように聞こえたのは。



きっと気のせいじゃないはずだ。















新キャラの登場です。

月島さんの過去にまでさかのぼったらかなり長くなってしまった・・・

申し訳ないです。

計画がグダグダですが、なるべく丁寧に描写したらこうなりました。

へたくそな文章ですがなるべくわかりやすく書いてみました。

これからも精進します。

月島編、もう少し続きます。


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