ep,15
「ひえっへっへ!
流石に腕が堕ちとるんじゃないかのっ!!」
「くっ!んなわけねぇだろっ!!」
幾重にも刃と刃が切り結ばれる。
くそ、、、いくらババアと言えど相手は超一流。
なかなか隙は見せてくれないか・・・
でも、このまま様子見でもジリ貧になるだけ。
だったら!!
『開け、八葉が一枚。雷に覆われしこの大葉よ』
「ほう、ここでその技を持ち込むか・・・
じゃが!」
俺の『術式』の展開を見てババアが肉薄してくる。
・・・物凄い疾さだ。
「・・・くっ!」
やばい。術式の展開が間に合わない・・・っ!
このままじゃ!
「展開途中は無防備じゃからの!」
と、ババアは俺の目の前で剣を振りかぶる。
「もらったっ!!」
「・・・・なーんてな」
「!?」
と、俺はババアの背後を取る。
やっと隙ができた!
これならっ・・・!
「・・・なーんての。お見通しじゃて。」
「!?うわっ!」
と、側面から思いっきり風の弾丸をぶつけられる。
いつのまに??ちゃんと背後はとったはずなのに!
「そこまで!」
と、審判役の九条先生から止めが入る。
「ひえっへっへっ!
今回も儂の価値のようじゃのぅ。」
「ちっ!」
くそ、俺の策も読まれてたわけか。
やっぱ、このままだと足元にも及ばないな・・・・。
「しかし、あそこで『術式』をおとりにし
背後を取るとは・・・
なかなか知恵が回るようになったのぅ。」
と、倒れたままの俺に近寄りながらババアが言う。
「あんたがこの『術式』の特性を知ってるからこそだろ。」
「そうとも言えるが・・・。まぁ、初見の相手でも魔力の
雰囲気からして危険度はもろわかりじゃろ。
儂以外の相手には通用するじゃろう。」
ババアが感心したように言う。
「それに、そのあとの『水写』。
タイミングもぴったりじゃった。
お主の策を読み切れとらんかったらもしかしたら
くらっておったかものう。」
『水写』というのは、青系統魔法の一種。
所謂、「変わり身」に似たもので、
相手に水面に映った自分を本体と錯覚させる魔法だ。
「へぇ、あんたが俺をほめるとは珍しいな。
明日は雨か?」
「ん?明日は嵐じゃろ?それくらい珍しく頭が回ったものじゃ。」
く、、、言いたい放題言いやがって。
いつか絶対負かしてやる!
「と、今回の模擬戦はこんなもんじゃろ。
ほれ、もう教室に戻ってよいぞ。」
「なにが模擬戦だよ。単なる老人の軽い運動だろ?」
「ひえっへっへ!それはそうかもしれんのう。」
Side:九条
「・・・さて、これであやつの実力はわかったじゃろ?」
「・・・はい。」
信じられない。
彼の実力、真実はこれだったの??
校長に言われた頼み事。
それは二つ。
一つは、「柊を校長室まで連れてくること。」
一つは、「模擬戦の立ち合いをすること。」
正直、何を言ってるのか理解に苦しんだほど。
なんで、一生徒と魔法学園の校長とあろうものが
模擬戦なぞしなくてはいけないのか?
・・・まぁ、最高責任者である校長の命には
逆らえないんだけどね・・・。
そして、半信半疑で柊くんを連れてきて。
模擬戦の監督をしたわけだが・・・。
「正直、率直な感想として「ありえません」よね?」
「ひえっへっへ。そうじゃろ?あんな戦いを目の前で
繰り広げれられて。
逆によく正気でおるものじゃ。」
あれは、私が『MAT』で立ち会った時の柊くんじゃなかった。
なにがランクDよ!
あれがDだったら、本当のAとかどんな化けもんよ!!
校長が余裕そうなのも顧みてもあの戦闘力はB・・
いえ、Aはいくんじゃいかしら?
「それと、彼が展開しかけたあの『魔法』・・・。」
「ん?お主、気が付いたのか?」
「ええ。あれくらい至近距離で展開されようとすれば・・・。」
はっきりいってあの『魔法』はヤバイ。
仮に放たれたら、私でも受け止めるので精一杯かも。
「まぁ、あれでも出力、魔力質は7割カットしておったがの。」
「あ、あれで30%!??」
そ、それこそありえないわよ・・・。
彼の真の実力っていったい?
「校長、なぜ彼は力を隠しているので?」
「あの「お方」の意向じゃ。」
「あの「お方」?」
「詳しいことは何も言えん。故に、お主にこうやって
あやつの実力一端に触れさせたわけじゃ。」
「・・・・」
何か深い理由がありそうね。
それこそ、私程度が近づくのもおこがましいほど。
「わかりました。今は詮索しないようにします。
それと、彼のことは・・・」
「うむ。くれぐれも内密にの。
今はじゃが。」
「?なにか含みがある言い方ですが。」
「そろそろあやつの力を隠し通すのも限界なのじゃよ。
だから、そろそろしかるべき場であやつの力を
解放しなければならなぬ。」
「・・・まさか。『復活』と関係が?」
「ほぅ。お主『復活』のことを知っておったか。
さすがは、『九』という数字を冠する家の出じゃな。」
「やめてください。そんな古びた言い伝え・・・。
しかも、今の私は一介の教師です。
『師家』からもそのように振る舞えと言われています。」
「ひえっへっへ!そいつは悪かったのぅ。」
全然悪びれてないじゃないですか。
しかも、伊達に年を召してませんね。
『数字』の意味を知っているとは・・・・。
まぁ、これは古すぎて知ってる人はごくわずかですからね。
「お主の言う通り、『復活』と関係は大きい。
だからこそ、あやつの存在は必要不可欠なのじゃ。」
「それほどまでに??
・・・・まさか、彼は!?」
「・・・・その問いには今はこたえられぬ。」
まさか、そうだったとしたら・・・。
「分かりました。そういうことであれば尽力しましょう。
私にも無関係てわけではなさそうですし。」
「うむ。理解があって助かる。」
「それでしたら彼は・・?」
「うむ。」
「来月に開催される、『魔導闘演会』の学園予選に出場してもらう。」
色々、混入させていただきました。
そろそろ、秋くんについて真相を少しずつ明かしていきます。
これからも末永くよろしくお願いします。