ep,12
「うーん・・・」
「まだ迷ってるの?ユーマ。」
「だってよー・・・。」
「ユーマ、一つ言っておくけど。
あんたがどの武器を選んでも、使うのはあんただからね。」
「??どういうことだ?」
「あんたがどんな獲物を使っても、急には強くならないってことよ!」
「わ、わかってるよ!!ただ、なるべくいい武器をだな・・・」
「あんた、武器を選り好みできる実力ないでしょ??」
「う・・・、こいつ心をえぐってきやがる・・・。」
と、マイとユーマがまだ言い合っている。
「ユーマは、なにで悩んでるんだ?」
「お、シュウ。そっちはもういいのか?」
「俺は、もともと買うつもりないしな。
ムイはもういいか?」
「うん!ウチは満足♪」
「どうしたのムイ、なんだかご機嫌だけど・・・?」
「んー?ちょっとねぇー!」
「ふーん・・・。
あ、聞いてよシュウくん!ユーマったら大した実力はまだないのに
時間すごーくかけてるのよ!?」
悪口を言ってるように聞こえるが、「まだ」って言ってるってことは
ユーマの潜在能力を多少認めてるってことだな。
「ユーマの武器は?」
「俺は、魔法銃だな!」
魔法銃。その名の通り魔法を弾丸として打ち出す武器だ。
てことは、ユーマは後衛タイプか。
「それが違うの。」
「違うって?」
「ユーマは、ただの後衛じゃないわ。
ユーマは、ちょっと変わった戦い方をするの。」
ムイがそう教えてくれる。
変わった戦法か。それは拝見するのが楽しみだ。
「マイは・・・、弓を使ってるのか?」
「・・すごい。なんでわかるの??」
「うーん、たたずまいと雰囲気?かな。」
「そ、それだけでわかるものなのかしら?」
「まぁ、判断基準はそれだけじゃないがな。」
「その理由はとても気になるけど・・・。
シュウくんの言う通り、私は弓使いよ。
一緒に戦うときは、後衛からのサポートは任せてね?」
「おう、あてにしてる。」
「お!この指輪よくないか!??」
「ん?」
ユーマがショーケースの前でなんか言ってる。
「どのことだ?」
「これだよ、これ!」
ユーマは、ある指輪を指している。
『制魔の指輪 3級』
と書いてある。
「お客様、お目が高い!
この指輪は、有名な錬金術師がこしらえた逸品でございます。
少々、お値段の方は張りますが・・・
それを踏まえてでもいいものだと断言いたします!!」
俺たち、魔法師が装備する武器、装飾品、防具などにはすべて
等級がふられている。
最低品質が7級。
最高品質が1級。
その上にも、特級、超級、神級が存在する。
・・・まぁ、超級以上になると国宝クラスになるがな。
それにしても、こんな普通の店に3級クラスが置いてあるのは珍しい。
ちなみに、『制魔の指輪』とは文字通り『魔力を制限する』指輪だ。
3級のものとなると、約半分は制限できるだろう。
『制魔の指輪』は、もっぱら修行のために使われる。
限られた魔力で戦うすべを見つけるのに有効である。
「うーん、どうする・・・買おうか・・・。」
どうやら、ユーマは買うつもりだ。
たしかに、値段は少し高めだが中々手に入るものでもないし。
これがあればより質のいい鍛錬ができるだろう。
「手持ちはギリギリだからなぁ・・・。」
「買っちゃいなよ、ユーマ。
まぁ、お金なら少し貸してあげるよ??」
「マイ、ほんとか!??」
「よかったな、ユーマ。」
「おう!よし、これでみっちり鍛錬こなしてやるぜ!!
すいませーん、これ・・・」
「これをくれ。」
?
俺たちの隣から、一人の男が割り込んできた。
顔は、ふつう。
少し長い髪を全部後ろでまとめている。
身長は、180くらいか?体格もかなりいい。
「え・・・あのぅ・・・。」
あとから割り込んできた客に対して
店員もおろおろしている。
「聞こえなかったか?これをくれ、といったんだ。」
「しかし、お客様。こちらの方々が先でしたので・・・」
「あぁ?」
と、不機嫌な顔をこちらに向けてくる。
・・・よくみたらうちの制服じゃないか。
「てことで、お前ら。
これを俺様に譲れ。」
「はー????」
こいついったい何を言ってるんだ?
あとから割り込んで、しかも命令口調で譲れだと?
「お前、なんだよその言い方!頼み方ってもんがあるだろ!??
しかも、俺たちが先だったじゃねぇか!」
ユーマが男相手に突っかかる。
そりゃそうだ、自分が買おうとしたものを横取りされかけてるのだから。
「なんだ?お前・・・って。なんだ1組の吉柳じゃねえか。」
「・・・なんで俺の名前知ってんだよ・・・」
「そりゃ、お前有名じゃねぇか。『落ちこぼれ』ってな。」
「な・・・!?」
「だって、お前『トリプル』だろ?しかも、『八名家』の『桐生』と
おなじ読み方なのに、お前自身はヘボときた。」
「ちょっと!」
ここで、マイが止めに入る。
「いったい、どういうこと!?
今のは、ユーマ自身と何も関係がないでしょ!??」
と、男はユーマからマイに目を移す。
「これはこれは・・・、『シングル1』の妃姉ではありませんか。
どうしてこんな落ちこぼれといっしょに?」
「そんなこと、あんたに教える義理はないわっ!
あと、その落ちこぼれっていうの取り消しなさい!!」
「あー?なんでだ?俺様は事実を言ってるだけだが・・・?」
「人のこと見下しておいて何様よっ!」
「おっと、こっちは妃妹。なんで、こんなクソ野郎と
一緒にいるんだか。」
「なんだと!?」
「てかさ。」
「ああん?」
ここで、俺も話に『参加させてもらう。
「お前、いったいだれ?」