ep,11
「シュウー、帰りどっかに寄っていかねぇか??」
「ん、別にかまわないが。たいして用もないしな。
マイもいっしょにどうだ?」
「え??私もいいの??」
「逆にいけない理由がないだろう。
な、ユーマ?」
「もちろん!んじゃ、あいつも誘わないか??」
あいつ??
「あ!!そうだね!
だったら、二人とも玄関で待ってて!すぐに追いつくからー!」
行ってしまった・・・。
マイには「あいつ」で通じたようだ。
「なぁ、あいつって?」
「ん?あぁ、来ればわかるよ。
んじゃ、先に行こうぜー」
「お待たせー!!」
「ちょ、お姉ちゃん!!どこに行くのよ・・・って!
・・・あぁ、なるほどね!」
ユーマと玄関で待って10分ほど。
マイが「あいつさん」を連れてこられた。
・・・よく見たら、マイとそっくりだな。
「まともに話すの初めてだよね??
ウチは、妃 無衣。
あの『八名家』の妃家の次女でーす!
気軽にムイってよんでね??」
「ん、俺は柊 秋。
そういえば、話すのは初めてだよな・・・。
俺のこともシュウって呼んでくれ。」
「・・・ふーん。お姉ちゃんが言ってた通りだ。」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん!なんでもなーい!!」
?おかしなやつだ。
とはいえ、姉妹だからと言ってこれはあまりに似すぎだろう。
違いといえば、身長と髪型くらいか?
マイのほうが身長は高く髪も長い。
ムイは少し小柄で、髪は肩のあたりで切りそろえている。
「ふたりとも、同じクラスだったよな?
てことは、二人は双子なのか?」
「あー、違う違う!!
ウチが3月生まれで、お姉ちゃんは4月生まれなの!」
「なるほど。」
「さて、ユーマ。
今日はどこに行くんだ?」
「んー、俺は武器が見たいんだよな。」
「あ、私もそろそろ補助を新調しないと!」
「んじゃ、ショップに行くってことでいいか??」
「おう。」
「賛成!」
「はーい!」
それぞれが肯定の意を示し、4人でショップに向かった。
「うーん、こっちのもいんだが、これも捨てがたい・・・。」
「ちょっと、ユーマ。静かに決めれないの??」
「仕方ないじゃねぇか!目移りするんだよ!!」
と、ユーマが優柔不断さを見せてる間。
俺は、ムイと商品を見て回っていた。
魔法学校の生徒は、入学と同時に武器を2種類持つことになる。
主要武器と、補助武器だ。
文字通り、メインで主に戦い、リズムを変えたり、もしもの時のために
サブを使うってパターンが多い。
そろそろ、授業でも武器を扱うことが多くなるだろう。
「ムイは、武器は何を使うんだ?」
「ウチは、だいたい長物かなぁ。ウチ自身にリーチがないからね!」
「なるほど。てことは、補助は短剣か?」
「すごい!よくわかったね!??」
「まぁ、主要と補助のリーチを使い分けるのは基本だからな。」
「むー・・・。ウチが初心者とでもいいたいの??」
と、ムイがふくれっ面を向けてくる。
・・・まぁ、そんな顔で見られても可愛いだけなんだが。
「いや、そういうわけじゃない。
ムイは、どっちかっていうと魔法専門だろ?
そういう武術系に時間を割くよりかは、魔法に時間を割くだろうからな。」
「んじゃ、なんで魔法専門ってわかるの?」
「じゃあ、ムイ。ユーマはどっちだと思う?」
「ユーマは・・・。まぁ知ってるから言うけど、武術系だよね。
まぁ、知らなくても雰囲気でわかるけどね・・。」
「それだ。」
「え??」
「今、ムイは雰囲気でわかるって言っただろ?
俺のもそれに近い推測なんだ。」
「そんなものなのかな?」
「まぁ、ムイの場合はその雰囲気が濃く表れてるけどな。
よっぽど、魔力に対する鍛錬を積んでるんだろう。
俺も、その努力を見習わなければ。」
「・・・・・」
「どうした?」
「おかしい・・・。」
「??」
「おかしいよ、シュウは。
ふつう、ウチの名前を聞いたら「「妃家」だから。」
って思うのが普通じゃないの??
なのに、それをウチの努力だとか、鍛錬だとか・・・。
どうして、そんな考えが持てるの??」
と、ムイがとても真剣な顔で聞いてくる。
・・・まぁ、無理もないだろう。
『八名家』のお嬢様は、その「家」を通してしか見られないだろう。
だから、俺のような考えが珍しいのかもな。
「ムイ。俺は間違ったことを言っているか?」
「え?」
「お前の立ち振る舞い、雰囲気、行動。どれをとっても一流に近いもの。
魔法に疎い俺でもわかる。」
「だから、それは「妃」だから・・・」
「だったら、お前は一切努力してないのか?」
「そんなことないけど・・・」
「だったらそれはお前自身の力だ。
お前が努力した末に勝ち取った力だ。
それを俺は、お前の持つ血筋のせいにしないし。
「妃」だからって見るつもりもない。」
「・・・・」
「まぁ、俺は才能はあるが努力を怠ったせいで腐った奴らを死ぬほど
見てきてるからな。」
「・・・・」
「こんな答えじゃ不満か?」
と、ムイの顔をまっすぐ見据える。
俺の本心が伝わるように。
「・・・っ!!」
と、ムイは顔を真っ赤にしてそらした。
「ど、どうかしたか?」
「な、なんでもない!!
予想外の答えが返ってきてびっくりしただけだから!!」
「そ、そうか・・・。」
クサイことをいってひかれたかと思ったが、どうやら違ったようだ。
少し安心した。
「・・・だから、お姉ちゃん・・・になったんだ・・・・」
「ん?なんか言ったか??」
「な、なんでもない!!さ、ほかのところも見に行こっ?」
最近、耳が遠くなったのは俺の気のせいだろうか???