ep.10
「んで、なんの用だ?ババア。」
俺は今、校長室にいる。
さっきの時間に呼び出されたため、こうしてわざわざご足労したわけなんだが・・・。
「ひえっへっへ!
会ってそうそうババアとは言うようになったの、小僧。」
「うるせぇ。あんたのせいでダチにいろいろ勘付かれちまっただろ。」
きっと、ユーマやマイなら俺のことに少し違和感を持っただろうな。
・・・まぁ、あいつらが態度を変えないなら、
俺も変える必要もないだろう。
俺もあいつらとは仲良くしたいしな。
「ほう。友達とな・・・。
一人で孤独に修行していた小僧が友達とな・・・。」
「・・・なんだよ?」
「いや、今回はしっかり守れるのかと思っての・・・。」
「・・・・」
「・・・・」
ギンッッ!!!!!
俺の刀と、ババアの刀がぶつかる。
「ほう。召喚速度は速くなったの・・・。」
「あぁ、孤独に修行したおかげさ。」
「それでも、まだまだ甘いのは変わりないがの。」
と、ババアは俺に話しかけつつ、刀をしまう。
「我を切り殺せるのはいつになるかのぅ・・・。」
「さぁな。んで、要件てのは?」
「ん?おぬし、しっかり指示は守ったかの?」
「無論だ。あんな簡単な内容、造作もない。」
「ひえっへっへっへ!
そうかそうか!一流の魔法師でも手こずるモノを造作もないじゃと!?
ひえっへっへっへ!!」
「相変わらず気味の悪い笑い方だな。」
「んー?そうかの??まぁ、こんなに笑ったのは久しぶりじゃわい!」
・・・・
こんな飄々とした雰囲気でも、中身は本物の超一流。
今の俺では、まったく歯が立たねぇな・・・。
やっぱ、すげぇな。このレベルになると。
「話はそれだけか?」
「まぁ、そうじゃの。あとはおぬしの顔をちと見たくなっての・・・。
あのお方にどれだけ近づいているのかも知りたかったしのぅ・・・。」
「それで?」
「まだまだじゃの。もっと精進するんじゃの、小僧。」
「ふん、上等だババア。」
Side:校長
ふぅ、やれやれ。
あやつめ、まったく手が早い。
それに成長もな・・・。
さっきの切り結ぶとき、あやつの刀を召喚するのは以前とは比べものにならんくらい速くなっとった。
しかも、あやつが召喚した刀・・。
あの一振りは・・・。
「宝刀・・・。」
かつて魔法界に名を轟かせた『剣皇』、『剣戟の王』が振るっていた伝説とまで呼ばれた刀。
5種ある内の一振り、『紅爪』。
あのレベルの刀を召喚できるのは・・・、まぁこの世界には5人とおらんじゃろうな。
あやつ、いつのまにあんなに成長したのじゃろうか?
「まったく・・・。あきれるわ・・・。」
今、訳あってあやつの力は封印しておる。
しかし、封印されてあの力じゃと・・・。
尊敬を通り越して、畏怖すら感じるわ・・・。
「やはり、あやつやりおるわ・・・。」
儂は机の上においてある成績表を手に取る。
それは、あやつの成績表。
儂は、あやつが試験を受ける際に一つ指示を出した。
ただ漫然と試験を受けてしまったら、それこそ時間が勿体ない。
だから、儂はあやつに
「すべての試験で、ギリギリD評価をもらえ。」
という指示をだした。
そしたらあやつ見事に完遂しよったわ。
しかも、やとわれ用務員の話も聞く限り、本当のギリギリを極めたといえる。
「友か・・・・。」
あやつは一度、本当につらい経験をしておる。
それこそ、自分の身を切る思いをしおった。
じゃが、あやつはチャンスをつかんだ。
もう二度と自らの友を失わぬよう・・・
これから、あやつは、シュウはもっとつらい思いをするかもしれん。
じゃが、あやつの選んだ道。
儂らにできることは、あやつができるだけ道をそれぬよう精一杯支えるだけじゃ。
のう、三代目よ・・・。