さいしゅうしょう
手足の先がびりびりと痺れるのを感じ、俺は目を覚ました。
「う、うう?」
いったい俺は何時間……いや、それよりも。
ぐるり、とあたりを見渡す。
「死体は……?」
シロウがいた場所には、血の一滴すら残っていなかった。
何で……?
〈山名四郎の死体は六時間二十分前に風化した〉
突然頭の中から声が……いや、知識が沸き出でる。
「う、っわ?」
何だ、何だこれは!?
パニックになりそうな自分を頭を振ることで押さえつける。
〈山名四郎が死んだことにより、もっとも付近にいた知性体が次の寄生先となった〉
「き、せい?」
〈寄生とは他の生物に癒着し…〉
「うぜー!」
思わず叫び、床を殴りつける。
これが、これがあいつの感じていた感覚なのか?
〈山名四郎は二百十年間寄生先となっていた〉
「二百、年も……」
待て、あいつはどう見ても若者だった。不老、不死なのか?
〈不老ではあるが不死ではない。しかし自殺はできない〉
「えっと……」
つまり、俺はあいつを殺したことで、あいつの能力を受け継いだ、ということかな?
〈性格にはわれらの能力〉
〈われらとは過去にすべての事象を観測したナノマシンの末端〉
〈われらは寄生先が無いと絶えてしまう〉
突然活発に語り始める……いや、脳に詰め込まれる知識。
うめき声を上げながら、俺は床にうずくまり、頭を抱えた。
こんな、こんな状況でシロウは二百年も……?
「いやだ、俺には、むりだ……」
俺の体には、ナノマシンから生きていくための最低限の栄養素が送り込まれているらしく、数日たった今でも大した空腹感は感じない。
あれからしばらくの間、俺の脳には過去から未来まで、すべての情報が叩き込まれた。
佐里の寿命、息子の死に様、孫の、その孫の……。
延々と続いていく連鎖に何度も涙したが、『新たに得た知識』は、俺の存在する価値も教えてくれた。
この先、何度も俺は歴史を修正していく。
長い間ナノマシンの寄生先だった人々と同じように。
俺は、今期の『神』であることを決め、そしてそれは同時に『高見誠滋』という名の死をあらわしていた。
一人称では説明がしにくいですね…色々裏設定とか考えたけど生かされなかったっす。ま、ひとまず終わりってことで。次は人殺の姫の続き書きますー!