第さん章―前夜
佐里;主人公、セイジの妻。前章から十二年後、結婚。子供はナシ。
あの男、シロウは何者だったのか。
明日で、あれから十五年になる。
就職も結婚も、結局はシロウの予言どうりになってしまった……。
では俺は明日、死ぬのか?それも既に決まっている、と?
「ふざけた話だ」
呟いて、缶に残ったビールを飲み干す。
まだ、俺は28だ。
でかい病気もなく、いたって健康。殺される程の怨みも、たぶん無い。
「――くそっ」
こういうのもトラウマというのか? ここ数か月マトモに眠った記憶がない。
眠るとかならず悪夢を見てしまい、疲れしか残らないのだ。
冷蔵庫からもう一本缶ビールを取り出す。
いくら飲んでも、不安は消えてくれない。
――実際のところは、覚悟はしている。
死んでしまった時のことを考えて遺書も残したし、過剰なくらいに保険には入っている。
本当に明日、事故か何かで死のうとも、佐里ならば保険金でなんとかやっていけるだろう。
喉奥にビールを流し込み、一息つく。
「腹は、決まったかな」
うむ。
いいだろう。
人間いつか死ぬんだ! なるようになるさ。 一人ごち、寝室にむかう。
「ん、佐里。まだ起きてた、のか?……って」
襖を開けた先で佐里の目の前にあるのは、薬局の袋と、見覚えのある器具。 たしかあれは ――妊娠検査薬。
「さ、り?」
「……」
佐里は壁の方を向いていて、表情がわからない。
まさか、まさかだよな。何で今なんだ。違っていてくれ!
「ふっふふふー! みなさいセイジ! ……陽性!」
内なる叫びも届かずに、ビシィっ、と器具をかかげて振り向いた佐里は、満面の笑みを浮かべていた……。
「――まじで!?やったな、おめでとう!」
ああ、演劇をやっていて良かった……。
少なくとも今は一緒に喜べるふりができるから――。
そしてその瞬間。
俺はシロウに会いに行くことを決めた。
運命を、変えるために。
一気に時をぶっ飛ばしましたが、どうでしょうか?セイジと佐里の出会いとかは、結構どーでもいいかなと考えたんですが……。かなり違和感あると思いますが、ついてきてください!