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会話文だけで物語は成立するのか

作者: 聖魔光闇
掲載日:2011/06/13

二人で話をしています。

「ぶっちゃけた話……、誰もやった事が無いような、作品を書いてみたいんだよね」


「ふ〜ん。でも、誰もやった事の無いって、難しいんじゃねぇの?」


「そなんだよね。でも、皆がやってるけど、誰もやった事が無いかもしれない事ならあるんだよね」


「うん? 何それ?」


「簡単だよ。簡単じゃないけど……」


「どっちなんだよ! 気になる言い回しすんなよな!」


「会話だよ」


「ぁあ!? 会話ぁ!?」


「そう会話。会話文だけで、長文を書くんだよ」


「そんな簡単な事でいいのかよ?」


「簡単そうに感じるだろ?」


「感じるも何も、簡単じゃねぇか!」


「そう思うかい?」


「ああ、簡単だよ!」


「それが、そうでもないんだよね」


「何、椅子に踏ん反り返って「そうでもないんだよね」だ!」


「お前だって、さっきから人の話聞く態度じゃないじゃん」


「どこがだよ! ずっとお前の、目ぇ見ながら話してんじゃねぇかよ!」


「目見てって、机に座って片膝立てて、上から見下すように見てるじゃんかよ」


「うっせぇな!」


「言われて、座り直さなくていいよ」


「なんなんだよ!! どっちだよ!」


「だからって、机に座らなくていいからね」


「あ〜! もう、うっせぇな! 椅子に座ったら、座り直さなくていいって言うし、机に座ったら、しなくていいって言うし……。あ〜、もう! はっきりしろよな!!」


「まあ、俺はどっちでもいいんだけどさ」


「あ〜! 分かった分かった。で、……会話文での長文のどこが難しいって言うんだよ!?」


「あ、話、元に戻ったね」


「戻さねぇと、ずっとお前、俺の座る場所の話すんだろ!?」


「だって、お前が話聞く態度だって言うからじゃないか!?」


「だ・か・ら、それは目ぇ見て……って、もうその話はいいよ!」


「面白いなお前。結局、椅子にちゃんと座ってるし」


「もうその話は、どうでもいい!! 会話長文の話だ! 会話長文の話!」


「逆ギレは、よくないよ」


「キレてねぇよ!」


「キレてんじゃん」


「うっせぇ! キレてねぇって言ったら、キレてねぇんだよ!」


「アハハハ! そんなに真剣にならなくても」


「あ〜。……お前、さっきの話すん気あんの!? それともねぇの!?」


「ん? そうだね。話戻そっか」


「「戻そっか」じゃねぇよ! さっきから、脱線してんのは誰のせいだよ!」


「お前」


「ぁあ!? 俺? 俺じゃねぇよ! お前だろうがよ!!」


「だから、そんなに真剣にならなくても」


「真剣にもなるわ!! あ〜、汗かいてきた……」


「エキサイティングしているみたいだから、そろそろクールダウンしようか……」


「…………」


「あら? 黙っちゃった。ま、いいか。……でね、会話文での長文なんだけど、会話だけで構成すると、背景が見えないでしょ?」


「まあな。話だけだからな」


「でも、小説って事は、背景や感情ってのも、表現しないといけないんだよね」


「そりゃぁそうだわな。辺りの様子が見えないんじゃ、会議の議事録見てんのと、たいして変わんねぇからな」


「分かってるじゃない。だから、簡単だけど、簡単じゃないんだよ」


「そうか? 簡単そうだけど」


「今の話聞いてた?」


「あぁ聞いてたよ。お前が踏ん反り返ったまま、饒舌に話しているのを、注意を受けたから、ちゃんと座ってな」


「そだったね。ホント、ちゃんと座ってるや」


「気付くポイントは、そこじゃねぇだろ!?」


「じゃ、何が難しいか分かった?」


「背景とか、感情だろ!?」


「正〜解〜! よく出来ましたぁ!」


「よく出来ましたじゃねぇよ! 手ぇ叩くな!!」


「正解者には、拍手だよ」


「クイズじゃねぇだろがよ!」


「ほらぁ、すぐ真剣になる」


「うっせぇよ! お前が悪ぃんじゃねぇかよ!」


「俺?」


「そう、お前!」


「俺?」


「お前だ! お前!」


「俺?」


「もういい! うっせぇ!」


「アハハハ。真剣になった」


「分かった。真剣になって悪かったな!」


「別に悪くないよ」


「もういいから、俺はちゃんと話聞いてただろ!」


「うん。聞いてた。聞いてた」


「何笑い泣きしてんだよ!」


「ゴメン。ゴメン」


「ゴメンじゃねぇよ! 続きを話せよ!」


「ん、うん。分かった」


「で……、何が簡単じゃねぇんだよ!?」


「背景や感情が表現しにくいって事は、小説として成り立ち難いって事になるんだよね」


「それが?」


「「それが?」じゃないよ。成り立ち難いって事は、書き難いって事じゃないか!」


「そだな」


「もう! 分かって相槌打ってる?」


「分かって、相槌打ってる」


「本当に?」


「本当に」


「オウム返しじゃなくて?」


「オウム返しじゃなくて」


「うわぁ! その返事ウザイ」


「お前よりマシ」


「あれ? 俺の聞き間違い?」


「いや、正常だろ!?」


「オウム返しじゃなくなった?」


「オウム返しじゃなくなった」


「マジ、ウザイ」


「マジ、ウザイ?」


「話戻す!」


「ああ、そうしてくれ」


「書き難いんだよ。書き難いって事は、難しいって事。簡単じゃないって事なんだよ」


「それは違うと思うな」


「どうしてさ?」


「書き難いってのは、分かった。でも、書き難いってだけで、簡単じゃねぇっていう事とは、イコールで結んじゃいけねぇ」


「何を根拠に?」


「よく考えてみろよ。書き難いだけだ。書けないんじゃねぇ。書けないんじゃねぇって事は、書く方法があるって事だ。その書く方法が分からねぇから、簡単じゃねぇ・難しいって思っちまうだけで、書く方法さえ分かれば、そんなに難しい事じゃねぇんじゃねぇのか?」


「よく長々としゃべったねぇ」


「真面目に聞けよ!」


「真面目に聞いてるよ」


「じゃあよ。皆がよく知ってる話で試してみろよ」


「よく知ってる話?」


「そうだな。桃太郎とかどうだ?」


「長くない?」


「誰が全文書くんだよ!?」


「全文じゃないの?」


「たりめぇだろ! はしりだよ! 冒頭部分とかよ」


「分かった。じゃあ、やってみるね」


「おう! 見ててやるよ」


「う〜んと……。昔、昔あるところに……」


「おいおい。それじゃ、会話になんねぇだろ!?」


「じゃ、どうすんのさ?」


「ちょっと貸してみ」


「分かった。はい」


「…………こんな感じでどうよ!?」




『婆さんや。今日も山へ芝刈りに行ってくるよ』


『そうですか。では、私も洗濯に行きましょうかね』


『気をつけるんじゃぞ』


『お爺さんこそ、気をつけてくだされ』


『うむ。分かった。では、行ってくるぞ』


『はい。いってらっしゃい。……では、私も行きましょうかね』



『おや? あそこに見えるのは、何じゃろうか? ……ぉお、桃じゃ! 大きな桃じゃ! これは、洗濯などやっておる場合ではないな。ほれ、こっちゃこい。ほれ、こっちゃこい。おうおう、立派な桃じゃ。どれ、持って帰って、お爺さんと食べようかねぇ』



『何じゃこの大きな桃は!?』


『お爺さん。そんなに大きな声を出さなくても、私は聞こえていますよ』


『じゃが、この桃の大きさは……』


『そうでしょう? 川で洗濯しておりましたら、山の方からゆっくりと流れてきましてね。お爺さんと食べようかと、持って帰ってきたのですよ』


『そうじゃったか。それにしても、驚いたのう』


『そうでしょうねぇ。私も見付けた時は、驚きましたから。お爺さんの気持ちも、分からないではないですよ』


『そうか。じゃったら、早速切ってみるかの』


『分かりました。では、準備してくるので、ちょっと待っててくださいよ』


『…………。婆さんや、まだかいのぅ』


『もう少し待ってくださいよ。その大きさじゃから、包丁をきちんと研いでおかないと、いけないですからね』


『…………!! 婆さん! 婆さんや!』


『お爺さん。子供じゃないんですから、静かに待っててくださいね』


『婆さん違うんじゃ!』


『どうしたんですか? そんなに慌てて』


『桃が……。桃が!!』


『桃がどうかされましたか?』


『桃が……。勝手に動いとるんじゃ!』


『お爺さん。桃は逃げませんから、勝手には動きませんよ』


『違うんじゃ! 婆さん、ちょっと来てくれんか!?』


『お爺さん! そんなに引っ張ったら、危ない。私は、包丁を持っているんですよ』


『分かっておる。じゃが、急いでくれ!』


『はいはい。分かりましたよ。……って何が動いてるんですか?』


『ありゃ? 違うんじゃ婆さん! さっき、確かに動いたんじゃ!』


『そうですか。なら、そうしておきましょうか。でも、もう動きませんよ。今から、切りますからね』


『うむ』


『そんなに唾を飲み込まなくても……』


『うむ』


『では切りますよ』


『ちょっと待て、婆さん! 動いておる! 中から何か出てきそうじゃ!』


『あれあれ、本当に動いてますねぇ』


『婆さん! 何を落ち着いておるんじゃ!』


『ほれ。何か出てきますよ』


『桃が! 桃が、勝手に割れよった!』


『おうおう、これはまた可愛いらしい赤子が出てきおったわ』


『桃から何故赤子が出てくるんじゃ!』


『この子は、子供のできない私達への、仏様からの贈り物じゃ』


『だから婆さん、何故そんなに落ち着いておるんじゃ!』


『そうですねぇ。名前どうしましょうか?』


『わしの話を聞いておるのか!?』


『桃から出てきた男の子なので、桃太郎というのは、どうでしょう?』


『いや、名前以前にだな……』


『桃太郎。勇ましい名前ですねぇ』


『だから婆さん、わしの話を聞いてくれ!』


『よしよし、桃太郎や。桃の残りを食べましょうかね』


『おーい! 婆さんやーい! 耳、聞こえておるかぁ!?』




「す、すげっ!!」


「ふふん! どーだ!」


「本当に、会話だけで冒頭部分が見える」


「さっきまで踏ん反り返っていたお前は、どこいったよ! そんなにノートを見続けるなよ!」


「お前こそ、ちょっとは偉そぶっても、いいんじゃないか? 椅子に座ったままでよぅ!」


「もう、その話はいいよ」


「ちゃんと、話になってんじゃんよ!」


「お前、それ見る前と後で、性格変わってねぇか!?」


「そんな事ないよ」


「そんな事あるよ!」


「どこが!?」


「そこが」


「でも最後、お爺さんとお婆さんの話噛み合ってないよ」


「わざとだよ! この方が、コメディーだろ!? ってお前、話上手い事すり替えたな」


「へへん」


「そこは、威張るトコじゃねぇ!」


「分かった」


「あっさり引き下がられても、張り合いがねぇ!」


「まあ、そんなに熱くならないで」


「お前と話してると、いつも俺が不利だな」


「真剣になりすぎるから」


「……やば! また、お前のペースに巻き込まれるトコだった」


「チッ!」


「お前、今舌打ちしたろ!? やっぱし、性格変わってねぇか!?」


「ま、それはともかくとして、お前の書いた書き方なら、会話文だけでの長文も、簡単じゃないって事はないのかもしれないね」


「また、ややこしい言い回しをしたな」


「そう?」


「そう。って答えると、また長くなるから、話を進めよう!」


「なんだ、つまんない」


「お前の娯楽か!」


「そう」


「……。で、簡単じゃない事はないんだったら、難しいけど、書けない訳じゃないって事だよな!」


「そうそう。その通り」


「じゃ、新たに何か話考えてみろよ!」


「明日まで待ってくれる?」


「分かった。明日な。楽しみにしてるぜ!」


「じゃあ、今日は帰ろうか?」


「長い放課後だったな」


「そう?」


「もう、その手には引っ掛からん!」


「つまんな〜い」


「つまんなくて結構!」


「もう!」


「じゃあ、明日な!」


「うん。バイバイ」






「おはよ!」


「お! はよっ! ってお前、出来たのかよ!」


「うん。また、放課後のお楽しみ」


「分かった。じゃ、また放課後な!」




『雨だねぇ』


『雨だな』


『やまないねぇ』


『やまないな』


『ずっと降ってるねぇ』


『ずっと降ってるな』


『いつまで降るんだろうねぇ』


『いつまでだろうな』


『もう三年だねぇ』


『そんなに長い事降ってないだろ!』


『来年で三年じゃんか!?』


『突然、学年の話かよ!』


『大変だねぇ』


『勉強も難しくなるだろうしな』


『傘無いから』


『雨の話!?』


『忘れてたもんねぇ』


『だって、登校前は降ってなかっただろ?』


『進路相談会の事』


『え、そっち?』


『君、どうする?』


『俺? 俺は就職しようかと思ってるけど……』


『そっか。じゃあ、来年でお別れだね』


『お前、どうするんだよ』


『僕は来年、留年するからもう少し学生でいるよ』


『え、もう留年決定なの?』


『これから先、長そうだもんねぇ』


『そりゃ、まだ十七だからな』


『なかなか、やまないし……』


『雨の話に戻ったの!?』


『ビニール袋でもあったらなぁ』


『この土砂降りじゃ、ゴミ袋でレインコートは無理だよ』


『鞄濡れなくて済むのに』


『あぁ、鞄の心配かよ』


『君、どうする?』


『何が?』


『質問に質問で返すのは、感心せんなぁ』


『お前、いつの人間だよ!』


『ま、いっか』


『だから、何が!?』


『じゃ、僕帰るね』


『おう! って何処にだよ!?』


『僕を待ってる人がいるんだ』


『だから、何処にだよ!』


『待っててね。今、帰るから』


『おい! 大丈夫か? ここ、お前ん家だろ!?』


『ただいま! 姉ちゃん! ……あれ? 君、帰らないの?』


『って家に入るのかよ!』


『ん? どうしたの?』


『何でもないよ!』


『じゃあ、また来年!』


『来年?』


『うん。僕、出席日数が足りてないから、どれだけ学校行っても、来年は二年なんだ』


『留年って今年?』


『ううん。一月一日を越えるから来年』


『何だよそれ!』


『じゃあね。バイバイ』


『お〜い! 言いたい事言って、家に入るなよ!』


『何で?』


『うわっ! ビックリした! まだ、そこにいたの!?』


『うん』


『傘くらい、貸してくれよぉ』


『傘貸せるんだったら、袋渡してるよ』


『それもそうだな……って、おい! くそぉ、本当に帰りやがった。マジかよ! 走って帰るか! って、ん? 雨、やんでるじゃないか!』




「何だこれ?」


「会話文だよ」


「オチは?」


「特にない」


「真剣に読んで、損したじゃねぇか!」


「だからお前、真剣になりすぎなんだよ」


「普通、真剣に読むだろうがよ!」


「普通、真剣に読むの?」


「そりゃそうだろ!!」


「そうだね。今日も、ちゃんと座ってるし」


「座り方の話は、もういい!」


「あ、そう? 残念」


「残念。じゃねぇよ!」


「話変わるけど、明日はお前が考えてきてよ」


「変わりすぎだろ! てか、俺が考えるのかよ!」


「お前の方が、面白い話書けそうだし」


「分かったよ! つーか、この話いつまで続くんだよ!」


「ここで終わるよ」


「俺の書いてくるヤツは、いいのかよ!?」


「それは、読者にお任せさ! お前が面白い話、書けたかどうかってね」


「そんな適当でいいのかよ!」


「いいんじゃないの?」


「あ〜! マジやってらんねぇ!」


「だからお前は、真剣になりすぎなんだよ!」


「うっせぇよ!」






長いめの会話文で構成したので、読みにくくなかったですか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 会話文だけでも、一応小説として成立するんですねぇ。 読みにくい、というよりどちらと言えば読みやすい、でしたねー。 結構、面白かったです♪
2011/07/07 17:52 退会済み
管理
[一言] 初めまして、K1.M-Wakiです。 同じことを考えて書いている人がいるとは思いもしませんでした。 私も会話だけのショートショート集「怪話篇」を投稿しました。 暇があったら読んでみてください…
[一言] 二人の会話、楽しませていただきました! 桃太郎冒頭部分のアレンジも含めて(^^) 会話のみの小説というと、『竹泡対談』という掌編を思い出します。 ライトノベルの、しかも電撃文庫MAGAZI…
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