契約(3)
「…わたしのこと可愛いと思う?」
「そりゃ…もちろん」
「あなたの好み?」
「…まあ…かなり…」
「ふぅん…そっか。それをわかっててもダメなんだ。将来後悔しても遅いんだよ。童貞のまま60歳ぐらいになって俺の人生なんだったんだーってなっても後戻りはできないんだよ?一度でいいから美少女とエッチしたかったってなっても無理なんだよ?それでも断るの?」
いきなり怒涛のように言葉を浴びせられた。
その女の子の瞳はまるで哀れんだ者を見るかのようである。
でもたしかにそう言われれば将来後悔しそうな気もしてきた。
このまま生きてても将来はそんなに楽しいこともなく、むしろ辛いことばかりであろう。
幸せのまま安楽死させてくれるならそのほうが良いのではないのか。
「…いまちょっと心に迷いが生じたでしょ?」
ニヤリとした表情で女の子が見つめてくる。
「い、いや…そんなことは…」
「図星ね。そんなに深く考えないで本能のままに決めちゃえばいいのに!」
だんだん自分の考えがわからなくなってきた。
果たして自分はどうしたいのか…。
「さあさあ、そろそろ決断の時よ。契約する?どうする?」
「うんと…えーと…」
「さあ!さあ!」
「…わ、わかった!…よし!契約する!」
悠斗がその言葉を発した瞬間、女の子の雰囲気が変わった。
「ではこれより契約に入ります」
「えっ、なんかちょっと…いきなり真面目な感じで…」
悠斗の戸惑いに関係なく、女の子は目をとじ集中力を高めているようである。
と、手を上にあげると手のひらが眩しい光を放ちだした。
悠斗は目がくらみ少しだけ目をそむける。
そしてもう一度女の子を見ると、その手には漫画やイラストで西洋の骸骨の格好した死神が持ってるような大鎌が握られていた。
「ではあなたの魂いただきます」
「え、ちょ…ま、まっ…」
悠斗が最後まで台詞を言う前にすぐに大鎌が振り下ろされた。
その瞬間、悠斗の意識は途絶えてしまった。