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黎明の百鬼夜行戦記  作者: 沼口ちるの


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終章:終わらない行進、変わらない絆

あの決戦から数ヶ月。


新宿の街は、何事もなかったかのように日常を取り戻していた。


空に開いた穴も、巨大な蛇の影も、今やネット上の都市伝説として語られるのみだ。


「……あー、遅い! 晴明、いつまで待たせるんだ!」


昼下がりのハチ公前広場。


苛立った声で俺を呼び止めたのは、凛だった。


かつての九尾の狐の面影を残す銀髪はそのままに、今は流行のタイトなニットを着こなし、完全に「現代の美少女」として周囲の視線を独り占めにしている。


「悪い。大学の講義が少し長引いてな」


「言い訳はいい! 今日はエリザベートたちが予約した店に行く日だろう。ほら、もうみんな集まってるぞ」


凛に腕を強引に引かれ、辿り着いたのはお洒落なテラスカフェだった。


そこには、かつての「百鬼夜行」の幹部たちが、驚くほど自然に現代に溶け込んで座っていた。


「主様、こっちこっち! 今日のショウ、可愛いでしょ?」

赤いリボンのショウが、新調したフリルのブラウスをなびかせて手を振る。


「晴明サマ、遅刻の罰として、これ、一口ちょうだいね」

レンがストリート系のキャップを逆さに被り、俺の分のパンケーキを平然とフォークで刺す。


「主君……。私の隣、空けておいたわよ。……早く座りなさい」

ミズキが氷のようにクールな表情を保ちつつも、ほんのりと頬を染めて椅子を引く。


「もう、みんな抜け駆け禁止だよ! 主様はアタシの匂いが一番好きなんだから!」

コハクが猫のようなしなやかさで俺の反対側の腕に抱きつき、リリスとエリザベートがそれを見て妖艶に微笑む。


「ふふ、人間になっても、貴方の魂の輝きは変わらないわね。むしろ、より美味しそうになったかしら?」

「本当、飽きさせない男。今夜は、誰が貴方の隣で眠るか……血を流さない程度の戦いが必要かしらね」


かつての式神や海外の魔。


今やただの少女となった彼女たちだが、俺を奪い合う勢いだけは、千年前の合戦よりも凄まじい。


「おい、やめろ。公衆の面前だぞ」


俺の困り顔を見て、彼女たちは一斉に顔を見合わせ、そして楽しげに笑い声を上げた。


霊力はなくなり、呪符を操ることもできなくなった。


だが、こうして温かな体温を感じ、喧騒の中で笑い合える日々は、平安の世に俺が夢見た、どの極楽浄土よりも輝いている。


「さあ、晴明。今日はどこへ行く? 貴方が連れて行くなら、世界の果てまでついていってやるぞ」


凛が俺の顔を覗き込み、いたずらっぽく笑う。


俺は彼女たちの手を引き、陽光が降り注ぐ街へと踏み出した。


怪異がいなくなっても、俺たちの行進は終わらない。


この賑やかで、騒がしくて、愛おしい「百鬼夜行」は、新しい日常という物語を、これからもずっと刻み続けていくのだから。



【後書き:凛】


ふん、最後は結局こういう形になったな。


主……いや、晴明。貴方がモテすぎるのは、千年前から変わらない私の悩みの種だ。


でも、まあいい。


耳も尻尾もなくなったが、貴方の手を握った時のこの温かさは、妖怪だった頃には知らなかったものだ。


これはこれで、悪くない。


読者諸君、私たちの戦記はここで幕を閉じるが……。


晴明を巡る女たちの戦いは、ここからが本番だ。


負けるつもりはないからな、絶対にな!


それじゃあ、またどこかの街角で。


私たちの幸せな「行進」を見かけたら、心の中で応援してくれ!

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