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陽気な死者たち

作者: 那由他

ある日 母の所に行くと母が大騒ぎをしていた。

「タロウが帰ってきた !帰ってきただ!!」

タロウ そっくりの茶色の毛玉がくるくると家の中をまわり

「タロウか?」

「ワン」

ちゃんと答えたそうだ。

前に住んでいた市よりも3つ 離れているのに、 こんなところまでを追いかけてきてくれたんだね。


ありがとう タロウ。



死者たちは元気である。



「お父さんは美佐子さんが亡くなった途端 吹っ飛んで行った」

「はぁつ!!」



美佐子叔母さんの具合が悪いことも死の床についていることも父の墓前には知らさなかった。 でも亡くなった途端に分かったのだろう。



『美佐子! 美佐子つ!! 大丈夫か!?』

『お兄ちゃん お兄ちゃんやないか!?うちはとっても辛くて苦しくて痛かったんや』

『もう大丈夫や俺がおるで。もう苦しくないだろう』

『本当やな。お兄ちゃん! 会いたかったでぇ(泣)』



多分このような会話だったと思う。


あんなに再会を望んだ兄弟が、再び会えたのは40年近く 後だった。



父はすぐ下の妹をとても可愛がっていた。

自分は食うや食わずでも、才能がある妹を高名なフランス刺繍の先生にに弟子入りさせて。

やがて一枚の額は 300万の値がついた。

美佐子伯母さんは生涯それを誇りにした。

それを一番見てもらいたいと思っていたのは父にだろう。



生前の父は毎年毎年スーツを仕立て神戸に行くんと話していた。 そして 毎年神戸に行かない。 家にいたいから。本当に行きたかったのは神戸ではなく本当に会いたかったのは美佐子伯母さんなのだろう。


今でも父は墓を抜け出して 美佐子おばさんに会いに行く。 何をしゃべっているんだろうな? 私が小学生の時にもらったレース糸を、最近ちゃんと編んでこととかしゃべってるのかな?


体がなくなってもあなたの最愛の人は必ずそばにいる。


どうかこの文章があなたの救いなるように

「あんたのおじいちゃん 駅前におったで!」

おじいちゃんは駅前のホームに座って 美人ウォッチングをするのが大好きやったまさか 今でもしてるんか?!

…はい、してました

 それがおじいちゃんの幸せだから

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