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ショートショートショートショート!  作者: 楠羽毛
恋する人、愛する人
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13/23

コンタクトレンズ

「……つけたら、しばらく、座っていて下さい。慣れるまで」

 はじめてのコンタクトレンズ。そうっと、目にあてる。びくりとふるえるまぶたを気合でおさえて、眉に力をこめながら。

 直前で、指がとまる。やっぱり、こわい。

 深呼吸。

「やめとく?」と母。眼鏡も似合うじゃない、と、さっきも言われた。小学生のころからずっとかけている、四角いメタルフレームの、かわいくない眼鏡。

 気に入っていないわけではない。けれど、やっぱり。

 もう一度、右目に指をぎゅっとさしいれる。なんのことはない、ちょっとしみるような感じが一瞬だけして、ソフトレンズが指から離れる。一瞬、違和感で頭がまっしろになる。

 思い出す。

『眼鏡、外したほうがかわいいんじゃない』

 ただの気まぐれだったのだと思う。どういう会話のなりゆきだったのかも覚えていない。ただ、あのひとが、そう言ったのだ。

 それで、決心がついた。

 思いきって、左目にも。眼球にそっと触れてから、まばたき。何度も、何度も。

 顔をあげる。心配そうな母の顔が、にじんでうつる。目が慣れていないのか、それとも、涙があふれているせいか。

 リラックスして、数秒。だんだんピントがあって、視界がよくなってくる。

 ガラス張りの壁。そのうしろは、広い歩道。日曜の昼だ。三軒むこうに映画館があるので、人通りは多い。

 ふと、知った顔が目にうつる。おもわず、凝視してしまう。

 あのひと。と、知らない連れ。ふたりのあいだの距離。

 ぼとりと、涙がおちる。よかった、と思う。今このときで。母に心配をかけずにすむ。

https://twitter.com/kusunoki_umou/status/1418045650856562691?s=20&t=gbnvNvG86z4wPAN4GRYFbA

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