初恋は実らなかったが、それで良かった
思いつきで、ばばっと書き上げたので細かな話は書いておりません。ガッツリ恋愛など書いたことがないので……さらっと読んで下さったら嬉しいです。
私の名はエリック・ハミルトンだ。ハミルトン公爵家の長男として生まれた。私は恥ずかしながら幼い頃はとても弱く泣き虫だった。5歳になる頃、親に連れられ王妃様が催した王城の庭園でのお茶会に出席をした時、私は運命の出会いをした。
私は、そのお茶会で何がどうしてかは分からないが1人泣いていた。そんな時、金色のフワフワの髪の毛に青色の可愛いドレスを着た女の子が私に話し掛けてきた。
「どうしたの?」
「……ひっくひっく…あのね…」
何を話したかはもう忘れたが彼女と私は近くにあったベンチでいっぱい会話をした。確か彼女は家族の話や生まれたばかりの弟の話や日常の話をしたと思う。そんな何気ない会話が楽しく夢中で会話をした。
そこに王子が来ると知らせが入り、慌てて2人はベンチから立ち上がり皆のところに戻ろうとしたとき私は転んでしまった。痛みと転んだところを見られたという自尊心でまた、私は泣いてしまった。
そんな私を見た彼女は私の頭をなでてくれ「そんなことで泣いちゃ駄目だよ」と言った。
「泣いたら、今日のことが全て辛い思い出になっちゃう。私は今日エリック君と話せて楽しかったよ?だから泣かないで?エリック君は私との会話を辛い記憶にしちゃうの?」
「しない!」
1人で泣いている私に声をかけてくれたのは彼女だけだった。それに、同い年の子と会話を話したのは初めてだったが楽しかった。そんなことを、今後嫌な思い出にしたくないと思ってそう言った。
「じゃぁ、泣いちゃ駄目だよ?強くならなくちゃ」
「強く?」
「そう、強く!それにちょっとしたことで泣いてたら日々つまんないよ?」
言葉が出なかった。当時は朝から嫌いな食べ物がでただけで癇癪を起こし泣いていた。
「それに、強くなったら格好いいよ?私の大好きなパパ、強くて格好いいんだよ!」
「……強くなったら僕も格好よくなるかな…?」
「なるよ!なるなる、さっ、それより早く皆の所行こう?」
そう言って彼女は私の腕を引いて皆の所に走って向かった。
私はそれから父にお願いをして剣の稽古をつけてもらった。私の父はこの国の騎士団長をしていてとても強い。それから、母が体や魔法を鍛えるだけでなく勉学も必要と言うので勉学にも励んだ。またいつか彼女と会ってあの時と違う私を見て欲しいと思った。
まぁ私は彼女に惚れたのだ。初恋である。
そんな彼女は今日、この国の王太子殿下と結婚する。私はそれに招待され、出席している。殿下の側近として、そして2人の友人として。
彼女と再会したのは14歳の少し暑さが引いてきた秋頃。貴族や魔力の強い者は魔法を学ぶため学園で魔法を学ぶため学園に入る。私達はそこで会った。
彼女はまた一段と綺麗になり学園では皆の視線を独り占めしていた。
久しぶりに会った彼女は私のことを覚えており、昔の話に花を咲かせた。そんな彼女はある人をよく見てその人に話し掛けていた。それが今日結婚する相手の王太子殿下。
彼女は王妃様のお茶会のあと妃候補の1人として王城に上がっていたそうだ。その頃私は父に扱かれてたり、王太子殿下の側近となるよう王城に趣、殿下と共に過ごしたりと忙しい日々を過ごしていたので周りのことはほぼ見ていなかったから知らなかった。寧ろようやく最近周りを見られるようなってきたところである。
王太子殿下が妃候補と方達と何度かお茶会をしていたのは知っていたが誰かなど、興味のかけらもなく聞いていなかった。聞いておけば良かった。聞いていてどうしようもないが…昔の私は剣を振るうことばかりだった気がしないことでもない……
この感情を拭いきれぬまま、私は2年過ごした。誰にもこの思いは伝えていない。いや伝えれるわけがない。彼女の相手は王太子殿下だ。
そんな私に気が付いたのが今私の隣に居るモモカだ。彼女は異界渡り鳥として我が国に現れた。年は私達と同い年でこの世界では珍しい白魔法を使える。国は彼女を保護し、私達と1年学園で過ごした。殿下達を支える中彼女を護衛したりもした。そんな彼女は私によく笑いかけた。ちょっとしたことで喜んだり悲しんだり、目を離した隙に何処かで迷子になる。彼女から目を離せない。私はカルガモの親のような気持ちになった。
そんな彼女が私に好意を抱き始めた。知ったの半年前。「随分前からアプローチしていたのに!」っとむくれる彼女が可愛く思えた。
半年前に私達は学園を卒業し、その時に彼女から思いを告げられたのだが、たまにお茶をしたりはするが進展も何もない。私は殿下の側近として日々忙しく過ごしていたので彼女のことまで気が回っていなかった。
が、今日この挙式後のパーティーでパートナーを彼女と組んだのだが………色んな男の視線が彼女に集まってとても気分が悪い。非常に苛々する。
「…エリックに女の人の視線が集まってる……私が居るのに…エリック格好いいもんね…私なんて平たい顔で美人じゃないし似合ってないって言いたそうな目が突き刺さる」
いや、それは私の台詞だ。唇を尖らせるその顔を今誰にも見せないで欲しい。色んな男からの視線が私に突き刺さる。
私は彼女の腰を私に引き寄せる。
「!!エリックど、どうしたの?」
「そろそろ殿下達のダンスが終わる。お相手お願いできるか?」
「…足踏んだらごめんね?」
そう言って上目遣いで頭を傾げる彼女をこの腕の中に閉じ込めてしまいたくなる。ああ、私の心はもう彼女に落ちていたのか。
「……今日は私からは離れないように」
「???」
気づいてしまったら、もう止められない。止められないくらい心から溢れてしまう。今この瞬間彼女を見ている物に伝えたい。「モモカは私のだ」と。
ダンスを踊っているときのモモカの笑顔に私も自然と頬が緩む。急に彼女の頬が紅潮しぎこちない動きになりそうだったので、そうならないように体を近づけ踊る。どうしたのか話し掛けると「辛い」と言うので「休もうか」と提案しダンスの輪から抜けようとすると、モモカは慌てて「疲れたんじゃないの」と、では何が?っと聞くと、視線を泳がせ少し俯いて、「エリックへの思いが溢れて辛い」と言うのでどんな思い?っと聞くと「意地悪!!」っと言って拗ねてしまった。拗ねた君も素敵だ。
ダンスの曲が終わり少し疲れた彼女を椅子にかけさせ、シャンパンを取りに行く。急いでシャンパンを取りに行き戻ると案の定彼女は男にダンスの申し込みをされていた。腹の中が黒くなるのを感じたとき、視線を感じそちらを見ると殿下がこちらを見ており、意地悪そうな顔でニヤリと笑った。
それを無視し彼女の元に戻り、男を適当にあしらい彼女とバルコニーに出た。
「風が気持ちいい、でもちょっと寒いね」
今は春になったがまだ少し寒さが残っているので誰もバルコニーには居なかった。今日の彼女のドレスは肩がでているのでそっと上着を掛ける。
「…あ、ありがとう」
きゅっと私の上着を握る彼女。少し俯いたかの彼女の頬はダンスをした後だからなのかまだ赤みを帯びている。自分の上着を羽織った彼女は元々小柄だが余計に小柄に見え、胸を締め付けられる。
「エリック冷えるし、やっぱり中に戻ろ」
そう言って中に戻ろうとする彼女の腕を引き、腕の中に閉じ込めた。ぎゅっと抱きしめた彼女からほのかな甘い香りがして首もとをちょっと嗅いでしまった。それに驚いた彼女は硬直して動かない。
「悪い」
そう言って彼女から離れようとすると、何かが引っかかって離れられなかった。何か見ると彼女の手が私の服を掴んでいた。
「…あ、あの…えっと…」
しどろもどろになった彼女がぱっと私の服から手を離し俯いてしまったので、彼女の手を取り屈んで「すまん」と謝りながら彼女を見上げると、真っ赤になった彼女の顔が私を見た。その顔に胸を締め付けら抱きしめたくなったが、ぐっとその衝動を抑え彼女の言葉を待った。
「ちょ、駄目今絶対顔真っ赤だし、変な顔出し恥ずかしいから見ちゃ駄目」
そう言って私から手を離し顔を隠そうとするので、隠そうとする手を掴んで立ち上がりながら顔を覗き込んだ。
「変じゃない。寧ろ可愛くて腕に閉じ込めてしまいたい」
そう言うと、もっと赤くなる彼女。
「っ!!何かいつもと違うよ、エリック!」
「いやか?こんな俺は?」
「!!!…い、嫌じゃ…ない…寧ろ」
少し俯き加減だった彼女が私の顔を見たとき我慢が出来ず、彼女の唇にキスを落とした。
驚いた彼女の目は見開き私は彼女を抱き締めた。
「……今度休みもぎ取るから、ヴァレンタイン侯爵の元に伺うよ」
「?…何で?」
そっとモモカを離し顔を覗き込み、伝える。
「モモカを貰うため、俺はモモカとこれからを共に歩みたい。駄目か?」
「駄目じゃない!…寧ろ…よろしくお願い…します」
そう言って私の胸に飛び込んできたモモカをまた抱き締める。
モモカの養子先であるヴァレンタイン侯爵家はモモカを実の子のように溺愛している。すぐには了承を得られないかもしれないが、来年には…式を挙げられたらいい。他の男に取られる前に、牽制も忘れず…
だが今はこの時間を堪能したい。
読んで下さりありがとうございます