第9節 力を求めるミズチ 堕ちるオオトリ
侍女神は言った。
「この樹はかつて天地が定まらぬ頃よりここに在ったもののようです。今は朽ち折れてしまっておりますが、かつては天界に届くほどに大きくそびえたつ大樹だったようです。」
「では、この樹は死んでおるのか?」
「はい。ですが、どういうわけかその力までは失われていないようです。」
「朽ち折れておるのにか。そのようなことがあるものかのう。」
「何か定められた役目があるのかもしれませんね。」
「そういうものか。」
「はい。そういうものです。」
「悪しき性ではないのだな。」
「はい。と、言うよりも善悪では測れないものと見受けます。」
我らの基準では測れない何か。そういう力を秘めた樹だということか。
「ならば我がこの樹の力を得ることができるであろうか。」
「わたくしには判りかねますが、この地の王になられるのでしたら、あるいは。」
「では、そなた我の国づくりに助力願えぬか。」
「はい。太陽神様の御子神様のお頼みでしたら喜んで。」
天から墜とされ落下し続けるオオトリ。
オオトリは己の行いを悔いるどころか神々に対する憎悪を膨らませていた。
「よくも妾にこのような仕打ちを。許さぬ、許さぬぞ。必ずや展開に復帰しこの恨み晴らしてくれよう。」
しかし、爪と羽根を失ったことで天に昇る力が失われた。
このまま地上に留まれば、いずれその神威を失いただの大鳥としてその生涯を閉じることになる。
(それだけは避けねば。)
まずは天に昇るための力を得なければならぬ。だが、どうすれば……。
「そうじゃ、兄神じゃ。地上の世界には天に昇れなかった哀れな兄神がおったはず。兄神の助力を得られればあるいは天に昇る力を得られるかもしれぬ。」
だが兄神は地の底に潜ってしまった。
(泥と土の底に妾自らが赴くなどあり得ぬことじゃ。どうにかして、兄神の方から妾に会いに来るよう仕向けねばならぬ。)
どれだけ落ちてもいまだに見えてこない地上の世界で力を得る思索を巡らせていた。




