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【完結】神殺しの皇女外伝 -神代記-  作者: 埼山一
第四章 地底
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第86節 宰相 ミズチの証を求む

「このままでは(らち)が明かないと考えた私は自らの目で真偽を確かめることにしました。」


 鏡の考察を一区切りした宰相は話を戻してそう言った。


「ほう。では、うぬ自らが足を運んだのだな?」

「はい。」

「それで、うぬの目には畑で倒れていたと言う者はどう映ったのだ?」

「それが……。」


 宰相は一度口を閉じた。何を言うべきか迷っているようだった。


「それが、私には分からなかったのです。」

「なに?」

「……先ほど貴方は、自分はミズチだとおっしゃいましたね?」

「うむ。確かに名乗った。」

「実は私は、その言葉を聞くまで貴方(あなた)がミズチ様のようにも、全くの別人のようにも見えていたのです。」

「どういうことじゃ?」


 ミズチの問いに宰相は考えこんだ。

 自分でもその謎に対する答えがまだ出ていないのだろう。


「……私はこの部屋に入ってくる時、そこの戸を開けて入ってきましたよね?」

「ん?おう。」


 ミズチは唐突な宰相の問いに(うなず)いて、入口を確認した。

 彼が部屋に入ってきた瞬間を見ていたわけではないミズチだが、この部屋に出入口は一つしかないのだから間違いないだろう。


「私はこの部屋の前に立った時、中にいるのは確かにミズチ様だと感じていました。しかし部屋の中に入り、貴方の姿を認めた時、私は目の前にいるのは全くの別人だと、そう感じてしまったのです。」

「ほう?」


 ミズチは宰相の証言に興味を持った。


「実は今もそうなのです。目を閉じている時には、そこにいるのはミズチ様だと分かるのですが、目を開けると……。」

「我がミズチだとは思えぬ。と?」

「……はい。」


 宰相は困惑を隠さずにそう答えたのだった。




「ふうむ……なんとも面妖なことがあるものよ。」


 宰相の話を聞き終えたミズチは感慨深くそう漏らした。

 蟒蛇(うわばみ)から人へと変態を遂げてここに至っているミズチの方がよっぽど面妖なのだが、残念ながらそこを指摘する者はこの場にはいなかった。

 すると宰相は、一層真面目な顔をしてミズチに詰め寄って、


「ですからもう一度お尋ねしたい。貴方は間違いなくミズチ様本人でよろしいのですよね?」


 と、尋ねたのだ。


「む。うむ。我は間違いなくミズチである。」


 ミズチは胸を張ってそう答えた。

 しかし宰相は、それだけでは納得できないようで。


「ではその証となる物を。」

「あ、証か?」


 突然そんなことを求められて困ってしまったミズチ。


「どうしてもか?」

「どうしてもです。私は私が主と認めた者に迷いなくお仕えしたいのです。ですから是非に!」


 ミズチはますます困った。そこまでして自分に仕えたいと言う宰相の忠誠心はもちろん嬉しいのだが、ミズチはこのクニに帰って来て以来、今までずっと眠っていただけなのだ。そんな物の用意があるわけがない。

 しかし他でもない宰相の求めとなれば無下にするわけにもいかず……。


「宰相様。そのような物をお求めにならずとも、この方がミズチ様だと確かに確認できる方法がありますよ。」


 ミズチがどうしたものかと頭をひねっていると、そこに助け舟を出す者が現れたのだった。


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