第84節 変態?変身?変化?
「おや?お目覚めでしたか。」
「おお。宰相殿。」
ミズチは一人部屋に入ってきた友人を認めるとそう返した。
「留守の間済まなかった。それで、我はどれぐらい眠っていたのだろうか?皆はどうだ?かわらず息災だろうか?」
ミズチは矢継ぎ早に質問を重ねた。
しかし宰相は落胆の表情を見せるばかりで……。
「なんだ?どうした?」
宰相の異変に気付いたミズチは声をかけた。
すると宰相。
「やはり貴方は……ミズチ様だったのですね?」
「何を言っている?当然、我がミズチである。うぬ、もしや我が姿を忘れてしまったのではあるまいな?」
ミズチは宰相が冗談を言っているのだと思い、自分もそう返した。
しかし宰相はミズチの返しを聞くと、笑うどころかますます落胆してしまい……。
「そうですか……。」
「どうしたのだ宰相殿?もしや、具合でも悪いのか?」
ミズチは狼狽した。
宰相と話している間もずっと寝た姿勢のままだったが、これは早く起きた方がよい。
しかし、どれだけ頑張って体を起こそうとしても、モゾモゾするのが関の山だ。
すると宰相がこんなことを言う。
「そう言う時は腕を支えに使って体を起こすのです。そうすれば上手く起き上がれますから。」
「おお。なるほどな。やってみよう。」
宰相の助言に従って体を起こしにかかったミズチ。
なるほど。言われて見れば簡単なことだった。確かに腕を支えに使えばこうも楽に体を起こせるとは。
「……。」
違和感を覚えたミズチは動きを止めた。
そして――
「な、なんじゃこりゃあーっ!?」
ミズチ渾身の驚きの声が宮殿内にこだましたのだった。
「は?え?なんじゃこれは!?一体どういうことだ!?」
ミズチはいまだかつてないないほどに狼狽していた。
「腕!?我の体に腕!?わ、われ――我の体、今どうなっておるのじゃ!?」
「落ち着いてください。」
「宰相殿!我、今どうなっておる!?」
「ですから一度落ち着いて。ほら深呼吸。スー……ハー……」
宰相の見本に倣ってスー……ハ―……と、深呼吸するミズチ。
ミズチがこんなに幼く取り乱すことなど、ついに見たことのない宰相だったが、そこは名臣。ミズチに釣られることなく落ち着かせたところなどはさすがだった。
「落ち着きましたか?」
「あ、ああ。すまぬ。取り乱した。」
醜態をさらしたことを詫びるミズチ。それからまじまじと自分の体に現れた両手を眺める。
どうやらわざわざ人に確認しなくとも、自分の姿形が今までとはまったく違うものになっていることを自覚したようだった。
「しかし我はどうしてこうなってしまったのかのう?」
「さあ?それは私にも分かりません。」
「そうか……。」
二人して似たような顔をする宰相とミズチ。
今のミズチは人だった。
長い手足に長い髪。
そして立ち上がらずとも分かるぐらいにはっきりと大柄で、造りの繊細な優男。
それが今のミズチの姿だったのだ。




