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【完結】神殺しの皇女外伝 -神代記-  作者: 埼山一
第三章 神殺しの皇子
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第73節 邂逅前

 オオトリがお目当ての人の子を見つけるのにそう時間はかからなかった。


(ほほ……そこに居ったか……。)


 見つけるなり羽ばたき一つで人の子の上空までやってきたオオトリ。そして遥か眼下(がんか)で地を()うしかない哀れな人の子の様子を(うかが)う。


(ほおう……これはまた随分(ずいぶん)(なり)が変わりおったものよ。)


 オオトリは童女(わらしめ)だとばかり思っていたあの人の子がすっかり成長していることに、わずかに感慨に(ふけ)っていた。

 オオトリにしてみればあの童女に出会ったのはつい先日の出来事である。しかし、それは悠久の時を生きる神の中でも殊更(ことさら)に長い時を生きる命運を持って生まれたオオトリであればこその感覚。

 人の子どもが成長し、大人へとなろうとするには十分な時間が経っていた。

 そう思い直したオオトリ。


(ふうむ……それにしても、おるのは一人だけじゃな……。)


 オオトリはあの時二人組だったあの童女らのもう一人が見当たらないことに気付いていた。

 今見えているのは一人だけだ。彼女のすぐ(かたわ)らにもう一人いるにはいるのだが、あれは完全な成人。しかも男だ。あの時の童女であろうはずがない。


(まあそれもまたよい……いや。むしろ好都合と言うべきか……。)


 オオトリはそんなことを考えていた。

 実はこの人の子探し。単なる余興(よきょう)、まったくの気まぐれのつもりだったが、いざやってみるとミズチの神威(かむい)をきちんと取りこめているかの確認になると気付いたのだ。

 舞い上がり、探し、そして移動する。

 たったそれだけのことでも、ミズチを食らう前と後ではまるで違うことをやっているように感じる。

 体が軽い。視界が開ける。今までよりも一回り大きな世界に身を置いたようで実に心地よい感触だった。

 これがミズチの神威を手に入れた成果だと言うのであれば、もう一度くらいその快感を楽しんでもいいだろう。




 そんなわけでオオトリが自分の神威に酔い痴れていると――


(ふうむ……それにしてもあやつ……なにをしておるのか……。)


 オオトリは人の子の様子にちょっとした不審を覚えていた。

 人の子は先ほどから森の中を彷徨(さまよ)っている。しかし道に迷っているという様子ではないのだ。

 なにか目的のありそうな確かな足取りにもかかわらず、あっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ。百歩進んだと思えば二百歩引き返す。そんなふうにウロウロしては、連れと思しき男と一緒にドンドンと森の深い方深い方へと踏み入ってゆくのだ。


(ふむ……探し物?……いや、しかしこのような森の中で一体何を探そうというのかえ……?)


 興味を覚えたオオトリ。そして彼女そのまましばらくの間、人の子の様子を観察することにしたのだった。


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