第5節 無知なる者 知恵ある者
クニの作り方が分からない。
母神の雫から生まれた天津神である以上、いつまでも下界に留まっていれば次第に消耗して力を失い、何れは下界の生物として死んでしまう。
それを避けるためには長き眠りにつくか、この不思議な地の主となって力を得るか、である。
「ううむ。しかし、どうすればよいのか……。」
徒に動き回っていても妙案は出ない。
ここは一度、眠りについて好機が訪れるのを待つのがよいか。
上策とは言えないが、眠ってさえいればとりあえず力を失うこともないのだ。
ミズチはやむを得ぬことと納得すると、光る根の麓に陣取りとぐろを巻いてしばしの眠りにつくべく目を閉じた。
天界はにわかに浮足立っていた。
太陽神が最も信頼を置いていた侍女神が、一体どんな悪心を抱いたものか、太陽神の宝物である首飾りを燃やしてしまったのである。
その彼女もまた、たまたまそこに居合わせて止めに入ったオオトリともみ合いになった末にオオトリの火に当てられて焼け死んでしまった。
太陽神は無二の友とも呼べるほどの仲だった侍女神に裏切られたことですっかり気落ちしてしまわれ、部屋に籠りがちになってしまわれた。
事を重く見た神々たちは集まり協議を開始した。はじめ太陽神を励ます方策を協議していたのだが、次第になぜ侍女神が悪心を起こしたのかが議題になった。
これらの証言はすべてその場に居合わせたオオトリの口から出たものであり、確かに残された証拠と一致しているのだが一つだけ気がかりな点があった。
それは悪心を起こした侍女神が如何にして火を扱ったのかという点だった。
彼女はその性質から光と水、土を好み、火を嫌う。そんな彼女がどんな悪心に囚われれば己の危険を顧みずに火を使って宝物を燃やそうとしたのか。
真実がわからぬまま太陽神を励ますことはできぬ。まずは事の真相を突き止めるべしというのがこの協議の結論になった。




