第4節 地にクニを建てる 天のトリは焦る
地の力を得るにあたってすべきことがあった。
それはこの地にクニを作り、そして王となり大地と民を統べることである。地と民の主となって、はじめてその力を我が物とすることができる。
「しかし、クニを作るとはどういうことか?どうすれば王になれるのであろうか……。」
考えたこともなかった。頭をひねってみてもわからない。本来であれば母神に仕え、母神のために働いていればそれでよいはずだったのだ。
物は試しと例の農夫たちに、
「わしはここにクニを建て、お前たちの王となろうと思うがどうか。」
と問うてみたが、
「はあ?そうけ……。そりゃあ、ご苦労なこって。」
とその感触は芳しいものではなかった。
ミズチはこれまでにも幾度となく非礼無礼な態度を取る農夫にカッとなり、手にかけようとするのだが、相手は霞のごとき者であるが故にどうすることもできず、次第に馬鹿馬鹿しく感じるようになり、気が付けば怒ることも稀になっていった。
オオトリの日々が退屈なものであることに変わりはなかった。
はじめ、不手際が目についた作業に助言をして回っていたものの、そのような仕事ぶりの連中は自分の言うことが理解できないのか、いくら言ってもその手順を改めようとしなかった。
次第に自ら実践して見せて、そのようにさせてみるようになったのだが、物覚えが悪いのか作業が捗ることはなかった。
(やはり、そんなものであろうか……。)
その内、助言をして回るのも馬鹿馬鹿しく感じるようになり、神殿の内外を無為にうろつき回るようになっていた。
そしてある日のこと。オオトリがいつものように神殿を徘徊していると母神の部屋に飾ってある珠玉の首飾りが目に留まった。
(何と美しい。あれが母神の美しさの一助となっているのではないか?)
引き寄せられるように母神の部屋に入ると、恐る恐る首飾りに触れる。
(これを身につければ妾も母神の如くなれるのだろうか……。)
玉に魅入られたオオトリは、「ほう……」とため息を漏らす。
オオトリの漏らしたため息は熱を帯び炎の塊となって首飾りに当たった。
首飾りはたちまちのうちに燃え上がり、零れた玉がパラパラと床にばらまかれる。
(しまった。)
玉の輝きに夢中になるあまりの己の失態に焦燥する。
今なら誰にも見られていない。そう思いその場から逃げ出そうとしたが、踵を返せばそこには一柱の侍女神の姿が。
オオトリの足元には焼けて零れ落ちた玉が転がっている。
首を傾げ何があったのか理解していない侍女神にオオトリはこう言った。
「これはそなたがやったことじゃ。妾が母神に成り代わり罰してくれよう。」




