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【完結】神殺しの皇女外伝 -神代記-  作者: 埼山一
第二章 新たなる時代
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第36節 暗躍する翼

(ほほ……感心なものじゃな。まさかきちんと覚えておったとは……。)


 オオトリは人の子の集落の慌てふためく様を眺めながらそんなことを思っていた。

 だがそれもそのはずで、どうせ覚えていないだろうと踏んでいたオオトリ演じる神聖の星のことを人の子らは連綿と語り継いでいたのだ。

 神聖の星とは災厄もたらす大神(おおかみ)の復活の前兆。それを忘れることなく語り継いでいたとは、人の子と言うものも案外賢い者らなのかも知れない。


(だが、それでも所詮人の子は人の子に過ぎぬがな……。)


 オオトリは嗤う。どんなに(さか)しらに振舞おうとあんな毛の薄くなったサル程度の連中、自分の都合の良いように使い倒してやればいいのだ。

 オオトリは聞き耳を立てた。天界のそれに比べれば粗末な馬小屋にしか見えないような宮殿で行われる合議の内容など、遥か天空高くを舞い続けていようともオオトリの耳目をもってすればその内容は筒抜けなのだ。




「どうするべきか――」

「古の言い伝えでは――」

「そもそも本当にマガツホシを見たのか――」

「お前、大ババさまを疑うつもりか――」

「――――!」

「――!」




(まあ、そんなものじゃろうな……。)


 侃々諤々(かんかんがくがく)でちっとも前に進まない議論を聞きながらオオトリは思う。――やはりこんな単純な連中は自分がいいように使ってやってこそ、彼らにとっても本望と言うものだろう。それがたとえ死を意味することであっても、この天上天下にあってこの上なき高貴な御子神(みこがみ)たる自分に使われて死ねるのであれば喜んで命を捧げるべきなのだ。


(まあよい。こちらは放っておいても良さそうじゃ……。)


 オオトリは見切りをつけた。

 もしおかしな方向に決定が下されるようなことがあれば、その時はまた自らの手で修正してやれば良いと思っていたオオトリ。だが、そのおそらく必要はないだろうと踏んでまた一つ計画を進めることにした。


(別にどちらに転んでも良いのじゃ……。どうせその時はまた、妾が直々に導いてやるだけのこと……。)


 そうだ。前回人の子を使い走りに仕立てようと企んだ時、散々手前勝手に喚き続けて話を先に進ませようとしない人の子に業を煮やしたオオトリだ。あの時はオオトリが不埒に振舞った人の子一人を焼いて見せたら、途端に言うことを聞くようになっていた。だから今回も人の子がどういう結論を出そうが、その手を使ってやれば連中を翻意させるなど簡単なことなのだ。


(それでも、力を使わずに済むのであればそれに越したことはないのじゃがな……。)


 オオトリは飛び去った。

 そして向かう。少し前に海浜の集落で見かけた若者の元へと。


(さて、次なる手を打たねばならぬが。あやつは上手く妾の掌で踊ってくれるかのう……。)


 あの若者、オオトリにとっても未知の存在だった。その後の観察によって人の子であることは間違いなさそうだと見当は付いたが、ならばなぜただの人の子が天津神らしき神威を持ち合わせているのか。


(まあよい。重要なのはあやつが妾の役に立つかどうかだけ……。)


 オオトリは、いかにしてあの者を操るかを思案しながら、宙を舞い征く。


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