第34節 凶津星ふたたび
オオトリが妙に気になる人の子を付け回すようになってから何十回かの夜。長久の生を約束されたオオトリにとってこのぐらいの日数は時の内にも入らない程度のものでしかない。オオトリは、ある時は天空高くから、またある時は地に降り立ち物陰の遥か向こうから絶えず彼を監視していた。
神鳥の目を以ってすれば人の子に気付かれぬように観察するなど造作もないこと。そうやって数十日に及ぶ観察の結果オオトリは一つの結論に達していた。
(間違いない。こやつ、天津神の神威を持ち合わせておる。)
そう。この人の子、どういうわけか天津神の神威に近い気を放っていた。勿論、人の子に見極められるような大きなものではない。もしこの者が誰の目にも明らかなほどに強烈な神威を放っていたとしたら、それこそこの者の行く先々でその都度大変な騒ぎが巻き起こっていたことだろう。オオトリ自身が天津神であるからこそ見極められたと言ってよい。
そこでオオトリは考えた。
(ふむ……。まあよかろう。見たところ正真の人の子であることは間違いないが、またそれなりの神威も持っておるようだからのう。)
どれだけ探しても国津神は見つからなかった。もしやオオトリが永い眠りについているうちにそういった国津神はことごとく討ち滅ぼされてしまったか、あるいは衰退の一途を辿って滅び去ってしまったのかも知れない。
いずれにせよ国津神が見つからない今、ただの人の子だろうが力のある者を使うしかないのだ。
オオトリはそう決めた。そして決めるや否や一旦その若者から離れ夜を待つ。
そして夜。
(さて、人の子らはきちんと妾のことを語り継いでおるのかの……。)
語り継がれていなければそれでも別に良い。また一からあれらを教育してやるだけのこと
――愚昧としか言いようのない人の子に期待などしていないオオトリは日が沈むなり天高くに舞い上がった。
(さあ、これが妾の復讐劇の始まりの狼煙よ。盛大に行こうではないか。)
オオトリは征く。強い輝きをまとった怪しげな星として宙を征く。
(人の子がこの星のことを憶えておればよし。そうでなければまたやり直すまでのこと……。)
ほほ……と嗤いながらオオトリは夜の闇が支配する天空をただ一羽翔けつづけていた。




