第27節 儀式終了
「ミズチ様。お疲れ様でございました。」
無事儀式を終え、自分の元へと足を運んできたミズチを侍女神は労った。
「うむ。して、どうであった。」
「あら?どう。とは?」
ミズチの曖昧な問いに、何を聞かれているのか分からない。侍女神はそんなふうに聞き返した。
「いや、だから、我が儀式の様子はどうであったかと……。」
「あら、いやですわミズチ様。儀式が上手くいったかどうかはむしろミズチ様ご本人の方がよくご存じなのでは?」
「いや。そうなのだが、そうではなくてだな……。」
ミズチはそこまで言いかけて結局諦めたのか「まあよい。」と言っていた。
その姿は心なしか拗ねているようにも肩を落としているようにも見える。
「うふふ……。」
侍女神はちょっとした意地悪のつもりが、ミズチの珍しい態度を目にして、思わぬ収穫を得た気分になって微笑ましく思っていた。
一方、そんなやり取りを傍で見ていた宰相は、本当に儀式が終わったのか判断がつかず、話しかけてよいものか逡巡していたようだったが、気を遣うように口を開いた。
「あの……儀式は滞りなく済んだ。ということでよろしいのですか。」
「おう宰相殿。無事終わったぞ。どうだ見違えたであろう。これで我が神威はこの三つの器に乗り移ったことになる。」
「はあ。いやしかし……何かが変わったと言うようにも見えないのですが。」
「むう。そうなのか?むう、なにぶん我も初めてのことであるからな。」
ミズチは困って侍女神に助けを求めた。侍女神は「あら、わたくし?」と言ってから「ん~」と少し考えて続けた。
「そうですね……。わたくしもこれほど大きな力を持った方の神威譲威の儀式に立ち会ったことはありませんので確かなことは言えませんが、まあ……おそらくは、大丈夫ではないかと。」
「そうか。そなたもそう思うか。」
「ええ、多分。」
何とも曖昧な答えなのだがミズチはその回答に満足したようだった。
「というわけじゃ宰相殿。これで我はしがないただの蛇になったのだぞ。」
「いえ、さすがにただの蛇ということはないでしょうが、なるほど。承知いたしました。」
ミズチの姿は依然として頭三つに尾が二つ。燃え盛る鬼灯のような目玉が計六つに大きく裂けた口も三つ。その口を開けば覗き見える牙の数こそ計十一本に減りはしたが、さらには苔生すほどに山の如く大きな体。これでただの蛇とはどうしてあっても言いようがなく、宰相は苦笑しながらミズチの諧謔を承知していた。




