第26節 鳳の覚醒
オオトリが目を開けるとそこは暗闇の中に無数に聳え立つ枯れ木の群れの真っ只中だった。
(なんじゃここは……。)
妾は一体どうしてこんなところにいるのだろうか。
見渡す限りの木、木、木。そのすべてが異常なほどに枯れ乾いて、ぽろぽろと朽ちかかっており天を仰げばその姿を隠しつつある月夜神が遥か高くにあって、オオトリを少しばかり照らしていた。
(そうか。妾は……。)
冷めきらぬ微睡みの中で思い出したのは、おのれの助言を聞き入れようとせぬ八十神どもの不遜で愚かしい姿と、彼らが糸を引いていたらしいによる天界放逐劇。更には地上における人の子の下品で無知蒙昧で不敬も甚だしい下卑た態度と兄神の狂荒気に晒された翼の負傷。
どれもこれもはらわたが煮えくり返るほどの怨めしい出来事ばかり。
(ええい。忌々しい……。)
思い出すほどに沸々と湧き上がる怒りに、一気に覚醒したその燃ゆる眼をカッと見開けば辺りににわかには数え切れぬほどの無数のヤマドリが寝静まっているではないか。
自分が眠っている間に何があったのかは知らないが、これらの鳥どもは自分を中心にして群れを形成してしまっているようだった。
(これではまるで妾がこの羽虫どもの統領のようではないか。)
不愉快に感じたオオトリは猛る感情に任せて静まっていた己が炎をその身に纏うと、そのまま辺り一帯を焼き払ってしまおうとして――しかし、それを踏み止まって考えた。
(このヤマドリ共。何故このように群れておる。)
本来のヤマドリは群れない。
我が強く飛ぶのが下手で地上で出くわしては己が縄張りをかけて始終争ってばかりいるのがヤマドリのあるべき姿というものだ。
事実、オオトリが眠りに就く前にオオトリに魅かれたヤマドリが集まってきた際は、これらは顔を合わせれば諍い合うというありさまで、あまりの鬱陶しさに辟易していたものだった。
それが今やオスもメスもなくオオトリを中心にして一個の集団を形成するに至っている。
不可思議なこともあるものだとそんなことを考えながらも、やはりこのような木端羽虫どもは不要な存在と思い定めたオオトリは、今一度焼き払ってしまおうとしていた。




