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第24節 儀式の準備
それから――ミズチの神器となるべき三つの器は揃った。
ミズチの牙骨。この地を支える巨木の枯根。侍女神の毛髪。
それぞれがミズチの力を移し封じるのに十分な神威を備えていると思われた。
「本当によろしかったのですか。」
「何がじゃ?」
「あれほど太陽神様にお会いしたがっていましたのに……。」
ミズチは牙の抜けた口で答えた。
「よい。我はここに以来、大層な幸福に包まれておる。これ以上を望んだら、返りて呪いへと変わるであろう。」
「そうですか。」
侍女神はミズチの回答に微笑んだ。
すると、祭壇を整えていた宰相がやって来てミズチに告げた。
「準備は整いました。これでよろしいですか。」
「む。うぬも忙しい中、よくやってくれたな。」
そう、彼はこのクニの宰相として忙しく働き回る中、わざわざ暇を見繕ってはこちらのことにも手を貸していたのだ。
「いえ、こんな珍しいものを見られる機会、そうは訪れないでしょうから。」
動機はただの興味本位だと宰相は言った。
「はは、言いおったわ。うぬもだいぶ打ち解けてきたのう。」
「は。これは失礼をば……。」
「よいよい。それでこそというものじゃ。」
固い言い回しはいつもの通りだが、それでも本音で話せるようになってきた宰相にミズチは喜ぶと、一人祭壇へと足を運んだ。




