第22節 地底大王の思慮
時は流れ、ミズチと侍女神が地の底に打ち建てたクニも今となっては国家としての体を成すに至り、彼らはすっかり平穏平和な地の底での生活にも慣れてしまっていた。
「――と、こういう者を指すのです。お分かりいただけましたか?」
「なるほどのう。宰相とはこうした者であったか。」
侍女神の説明にミズチはただただ関心していた。
「ううむ。それならば、宰相殿は真にその任に最適な男よな。」
「ええ。あの方は地上のクニでも相当重宝されていたと思いますわ。」
今、このクニの体制は次のようになっていた。
ミズチはこのクニの大王の座に収まり、クニの向かうべきところを考える。
侍女神は変わらず侍女神であり、ただしその仕える先がミズチになっていた。彼女はまた、ミズチ大王の相談役でもあり教育係でもあった。
そして宰相殿。
この宰相殿、今やこのクニに於いても立派な宰相殿であり、ミズチと侍女神の提案した施策について、己が考えをはっきりと述べては是なるものは直ちに実行し、非なるものは容赦も斟酌もなく却下した。
「我は実に得難い者を得たのだな。」
特に宰相殿の働きぶりには頭が下がるとミズチは思った。
(しかし……。)
侍女神と宰相殿。
この二人がこのクニに来るきっかけとなったのは、あの我が妹神・オオトリの身勝手な振舞いだったことに思い至ってミズチは複雑な気持ちになった。
そう、あのオオトリはつまらぬ失敗を隠すというただそれだけのためだけに侍女神を殺した。
のみならず、更にあやつはわしを呼び出すためだけに地上の森に火を放ってはそこに暮らすものを怯えさせ、そしてそれを我の仕業などと吹いて、これを収めたくば贄を以って我に祝詞を捧げに行けなどと言い放った。
そして我はあやつに逢うために地上に上がり、計らずもそこで暮らす物たちに甚大な被害を与えてしまった。
「……。」
「ミズチ様?」
突然思案に暮れたミズチの様子を不審に思った侍女神が声をかけた。
「……のう、侍女神よ。」
「はい。」
「……あ、いや。なんでもない。」
思案の先にある物に迷いを感じたミズチは相談を持ち掛けようとしながらも、結局やめた。
「……二人に相談したきことがあるのだが……いや、夕餉の際にでも話そうと思う。」
「はい。」
今すぐ話しても思いつきの域を出ない。せめてもう少し物事を整理してから。
そう考えたミズチは夕餉までには整理もついているだろうと思い侍女神に告げた。




