第2節 天の世界 地の世界
地中を深く深く潜ってゆくと開けたところに出た。
(地の底にこのように開けた場所があったとは……。)
そう思い当たりを見回していると彼方に野良仕事をしている人影が見えた。
「そこの者たちよ。この地は何という名であるか?」
「はあ。地に名前などねえ。お前さまも妙なことを聞きなさる。」
「では、ここを治める者はどこにいる?」
「お前さまもよくよくものを知らんと見える。」
農夫はそう言うと農作業に戻ってしまった。
農夫の無礼な態度に怒ったミズチは
「まだ、話は終わってない。」
と農夫の頭からかぶりついた。
しかし何の手ごたえもなく、気づけば今しがたそこにいたはずの農夫が彼方で鍬をふるっている。
「面妖な……。」
奇妙な事態に毒気を抜かれてしまう。
「ここはいったいどういうクニであるのか……。」
天上に上ったオオトリはがまず向かったのは母神のおわす神殿だった。
「よくぞ我が元に帰りました。我が娘よ。」
労いの言葉をかける母神の姿を見たオオトリは嘆息した。
(ああ、何と美しい方なのだ。妾もいずれああなりたいものだ。)
「ところで、そなたには兄神がおったはず。彼はどうしているのか?」
「兄は翼を持たず天に昇ることができなかったので地に潜ってしまいました。」
兄は地を這い生きる運命なのだ。自分とは違うあの姿を思い起こして身震いする。
「そうか。それは残念なことじゃ。」
我が子に会うことが叶わぬと知って影を落とす姿に母神の慈愛の深さを知る。
(それにしても……。)
母神を取り巻くように居並ぶ庶士百官。何れも母神の信を得ている者たちなのであろうが……。
(このような者たちに囲まれて、母神もなんと哀れなものよ……。)
オオトリは母神に頭を垂れながら、彼らを如何にして使いこなしてやろうか、と考えていた。




