第15節 地底の秋 オオトリの秋
地の底にも不思議と四季というものは存在するようで、カッカと太陽にも似た何かが激しく照り付ける季節が過ぎると、草葉の陰からリンリンと涼やかな合唱が聞こえる季節になった。
すなわち今は収穫の季節。
「今年の分はこれぐらいでしょうか。」
無事税を集め終え、最後の一つとなった作物を侍女神が「よいしょ。」と言う掛け声とともに倉に積み上げるとすべての徴収作業は完了した。
税はすべて合わせても倉一棟の半分といった程度の量。ミズチたちが食べる分を除いてしまえば事業に回すほどの余剰はなさそうだった。
「少ないのう。もう少し取れんのか。」
体躯の大きさから倉に入れないミズチは鎌首をもたげて中の様子を窺って嘆いた。
この量では倹約に努めなければたちまちひもじい思いをすることになりそうだ。
「仕方ありませんね。民の暮らしが優先です。そもそもいきなりやって来て税を納めろという方が無茶なのです。」
きちんとした量が取れるようになるには数年かかると言う。
天界の主、太陽神の傍近くに仕えていた侍女神は、何も分からぬミズチよりもいくらかはクニの仕組みをわかっていた。
太陽神は自ら政務を執り行うことはついになかったが、常々「民を慈しめ」と口癖のように言っていたため侍女神もその精神を引き継いでいる。
「だが、これでは何もできぬぞ。向こう一年は何もせぬのか。」
人手を動員したとしても、これではすぐに倉は空っぽになってしまう。
何かをしたくても、ない袖は振れない。
民があれほど楽しみにしていた祭りもできない。
「いえ、税を取った以上はできる限りのことは致しましょう。」
「どうするのじゃ。」
ミズチの問いに侍女神はにっこりと笑顔を向けた。
(待ち遠しいのう。)
あれから、どれだけの日数が過ぎたのか。
人の子らは集落にオオトリの話を集落へと持ち帰ると、自分たちの手に余ると思ったようで近隣のより大きな集落に助力を頼んだようだった。
クニと呼べるほどの大きさの集落にある人の子らは散々に議論を尽くして上を下への大騒ぎの果てに、ついに一人の柱を建てると見事祭祀をやりきって見せた。
(これで兄神に会える。)
そうして、兄神の協力を得られれば妾は再び天に舞い戻り、天子の地位に返り咲くことができる。
(見ておれよ、八十神どもめ。妾の無念、必ずや思い知らせてくれる。)
オオトリは己を放逐した神々への復讐の成る瞬間を想像しては、昏い笑みを漏らした。




