第14節 喜色のために 悲色のために
民の去ったあと二人きりになったミズチと侍女神は話し合っていた。
「いきなり祭だなんて言い出すので驚いてしまいましたわ。」
「すまぬ。やはり、いかんか。」
「いいえ。民を労わることのできるすばらしい案です。わたくしはすっかり失念しておりましたわ。」
「そ、そうか。」
相談なしに行った急な提案にも、侍女神は驚きこそすれど決して怒ってはいない。それどころか内容を褒めてくれる。侍女神の心の大きさに安心するとともに嬉しさがこみあげてくるミズチ。
「では、早速準備するか。」
「でも、そうですね。祭りをするにしても費えがないと何もできないわけですし。」
「むう……。やはり税か?」
「はい。」
「我は、何人であれ財を奪われるのは嫌なものだと思っていたのだが。」
祭と聞いたと途端に、是非もなく税や労役に同意した民を思い出す。
「税というものは、正しく皆のために使うのであれば、あって誰かが困るという物ではありませんから。」
うふふと笑う侍女神の応えに、ミズチは目から鱗が落ちた思いがした。
「頑張って集めましょうね。」
「うむ。そうしよう。」
引き続き微笑みを向けてくる侍女神にミズチはそう答えた。
――慮外者。よるでない。――
不用意に近づいてきた男に炎を以て威嚇する。
男は寸でのところでそれを躱すことができず、炎に巻かれてドタンバタンと転げ悶えたかと思うとやがて動かなくなった。
(自ら火に飛び込むとはなんと愚かな。)
まるで虫ではないか。話が終わった後であれば、あれに事を託しても良かったのだが、あれは人の子の中でも特に出来が悪かったのだろう。
そう思わないことにはこれから人の子などに大事を託すことなど出来ない。
その様子を見ていた人の子らは恐々としてひたすらに平伏する。
――それらの災禍は全て邪神の仕業によるもの。――
オオトリは何事もなかったかのように仕切り直し、近ごろ頻発する天災の理由を騙った。
――憐れなる人の子らよ。そなたらはこのままでは座して滅びを受け入れるよりほかにないぞえ。――
先程の威嚇が効いたのか今回はざわつくこともなくピンと張りつめた空気が辺りを支配している。
(なんじゃ、最初からこうすればよかったのじゃ。)
この方が、話がすいすい進んでよいではないか。
「そ、それはどうにかならないのでしょうか。」
――そなたらの人の子を柱と成して地の底深くに赴かせ、祝詞を以てかの大神を鎮めよ。――
柱と聞いてまたしてもざわつきだすこれらに大炎を上げて黙らせる。
――良いな。必ずや、やり遂げるのだぞ。――
「ははー。なんもかんも仰せのままに。」
一同平伏して従うことを約束され、オオトリは満足した。




