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【完結】神殺しの皇女外伝 -神代記-  作者: 埼山一
第一章 天と地と
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第13節 地底の色めき 地上のざわめき

「ま、祭りもするぞ。」


 すっかり蚊帳の外になってしまったと感じたミズチは声を上げた。


「お祭り……?」


 突然のミズチの提案に彼の方を見て首をかしげる侍女神。


「そうじゃ。集めた税を使って毎年一度は祭りをするのじゃ。盛大にやるぞ。楽しいぞ。」

「ま……祭り!そりゃ本当け?」


 ミズチの思い付きに、ことのほか食いついた民たちが一斉にざわめき立って詰め寄った。


「勿論じゃ。だから張り切って税を納めろよ。」

「そりゃいつやるのけ?明日か?」

「あ、明日は無理じゃ。そうよな……。」


 その恐ろしき巨体を気にする様子もなくグイグイと詰め寄る民の勢いに押されてジリジリと退がるミズチ。


「祭りをいつやるかはまた今度、皆で寄り集まって良き日取りを決めましょう。それよりもまずは税や労役をどうするかと言うことが大事です。」


 侍女神はパンパンと二つばかり手を合わせただけで、ざわついた民衆を引き締めた。


「そりゃあもう、なんだって喜んで差し出すだよ。」

「本当によいのですか?」


 念押しする侍女神。


「ええだ。ええだ。それよりも祭――」

「はい。それについてはまた今度皆さんに相談しますから。それでは今日はこれで解散です。お疲れ様でした。」


 侍女神は祭りの無計画さを民に悟られぬうちに解散を宣言した。




 細い月の明かりが薄い影を作る夜。すっかり準備を終えた人々は祭壇の前に一堂に会し、地の怒りを鎮めるための祭祀を始めた。

 秘かに物陰より様子を窺うオオトリは頃合いを見計らうなり一羽ばたき。当たりを照らす松明の火を消し去る。


(妾のごとき天貴の御子神が下賤な人の子の前に姿を現すなどあり得ぬことよ。)


 突然のことに戸惑う人々。


――そこな人の子らよ。――


 夜影に紛れて声をかける。

 慌てふためく人々。


――そこな人の子らよ。――


 もう一度声をかけるとわずかばかりの火を纏っておのれの神聖さを殊更に強調する。

 岩陰、木陰。様々な物が障害となってオオトリの姿を直接視認できる者はいない。


――妾は憐れなる人の子に天の言葉をもたらすため遣わされた神聖の星。――


 突如現れたヒカリに怯えながらも誰何する人に応える。

 「天の言葉」、「神聖」、「星」とそれぞれ好き勝手に騒ぎ出す人々。


(まったく群がる羽虫の如くうるさいのう。これでは話が進まぬ。)


 しかし、これから彼らに大事を託すのだからこれぐらいは許すか、と寛容の心を以て鎮まるのを待つ。

 その内に一人が、


「近頃夜に見えるあの箒星のことではねえか。」


 と声を上げると他の者も同意する。


――然様。それこそが妾じゃ。――


「そのお星様がどう言ったご用件でありましょうか。」


 頭領と思われる者が代表して問いかけてくる。


――そなたら、近頃正体の知れぬ災厄に困っておるのではないか。――


「は?ははー。なんもかんもお見通しで。実はこんところ我らのムラ近くの森で――」


――よい。そのようなことまで言う必要はない。――


 頭領は、ははーと頭を下げて続ける。


「もしやそのことについて、何かご存じでございましょうか。」


――うむ。それらは全て、地の底深くに眠る災厄の邪神が目覚めしことを告げる凶兆。――


 それを聞いた人々はまたしても「災厄」、「邪神」、「凶兆」と好き勝手に騒ぎ出す。

 人々に静まれと号令をかける頭領。


「それではこのところの野火はすべてその邪神様って奴の――」


――然様。それらは全て災厄の邪神の仕業による……――


 すると何を思ったのか恐れを知らぬ男が一人、ふらふらとこちらに近づいてきた。


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