第12節 地底の徴税準備と地上の祭祀準備
民らの一風変わった考え方はさておき、ここでは腐るに任せるほどに作物を多く作っていることは分かった。
ならば無理に搾り取らなくてもそれらを集めるだけで事足りるのではないか。そう考えたミズチらは近隣の民を集めると納税の協力を仰いだ。
「なに?余った物は倉に入れろだぁあ?」
「うむ。作りすぎてしまった作物、産物はあすこの倉に放り込んでほしいのだ。」
口の悪い農夫にもすっかり慣れてしまったミズチは気にも留めずに彼の問いに答えた。
倉は既にこの地にあった。倉だけではなく宮殿や、兵舎と思しき建物が一ヵ所に集まって備え付けてあった。まるでこの地を治める何者かが現れるその時を待っているかのようにじっと静かに佇んでいた。
そもそもいま集まっている場所がその宮殿だった。
「そんなことして何になるだ。」
「うん?あ~……。」
ミズチはつい先だって侍女神から聞いたことが未だ消化できていないためすぐに言葉が出て来ない。
「集めた税を使って灌漑を行います。」
「はあ~。そんなことしてくれるのけ。」
「はい。他にも水害対策や道の整備なんかも行いますよ。」
「そりゃあ、ありがてえなあ。」
ミズチに代わって説明をする侍女神の言葉に民たちは口々に歓迎の意を表す。
「その代わり、人手が必要なことにあなたたちを駆り出すかもしれませんよ。よろしいですか。」
「いやあ、でもおらたちもやることがあっからなあ。いつでもってわけにはいかねえぞ。」
「はい。冬などの農閑期にお願いすることになると思います。」
「それだったらまあ、協力してやらねえこともねえが……。けんどなあ……。」
「ぜひ、お願いします。」
自分がここの王となるべくやっていることなのに、自分そっちのけで話が進んで、すっかり置いてきぼりを食らったミズチは、侍女神の頼もしさに感心するとともに、その巨体ほどの存在感が示せなくなっていた。
翌日。また翌日と夜毎に森に火を放っては消すことを繰り返すオオトリ。
そのたびに少しずつ集落に近づいては人々の恐怖を煽り立ている。
(そろそろ頃合いかのう。)
人々が理屈の分からぬ災害に怯え、天の怒りを鎮めるべしという結論に至るまでにそう時間はかからなかった。
空高くより秘かに人々の様子を監視していると、先に舞い降りた山の麓に何やら祭壇のようなものが設えられているのが見て取れる。
そして彼ら全員をどれほどの期間養えるであろうかほどの大量の供物が着々と運び込まれている。
(まったく人の子というのも、こうして見ればなかなかに愛いものよのう。)
こちらの思い通りに動いてくれる人の子の素直さに憐憫を覚えずにはいられない。
しかしオオトリの目的は彼らが精いっぱいに考えた見当はずれな供物などではなかった。




