第104節 三つの物
その後――
風のうわさでミズチの正体が蟒蛇だと聞いた。などと言う見え透いた嘘も、簡単に看破されてしまったムジナ。
これ以上虚偽を重ねるとかえって立場が危うくなる。そう考えたムジナは、己の事情をすべてさらけ出したのだった。
そして――
ミズチに誘われ、宮殿の奥にある小さな部屋へと足を運んだムジナ。
その部屋には調度の類は何もなく、ただ片隅に無造作に捨て置かれている三つの物があるだけで……
「この部屋がなんだと言うんだ?」
ミズチの意図がまったく読めないムジナは、そう尋ねた。
すると、黙って部屋の隅に置かれた三つの物を指差すミズチ。
「それがどうした?」
「生刀、生弓、建琴」
ムジナの問いに、ぶっきらぼうに答えるミズチ。
そんなこと見れば分かる。――当たり前のことしか言わないミズチに、ムジナは胡乱な目を向けた。
どうやらミズチは、この三つを自分にくれる気のようだ。だが、なぜそんなことを?
「……」
しかしミズチは、それ以上口を開こうとはしなかった。
それどころかムジナの視線を完全に無視して、ただただ先の三つの物に視線を向けている。
もしかしたら何か重要な意味が? そう考えたムジナ。そうして彼は、その三点に手を伸ばしたのだ。
見たところ大した価値もなさそうな刀と弓と、そして琴。
それが証拠に、もう長いこと手入れがされていないようで、三つとも吹けば舞うような分厚い埃にまみれている。
それでもムジナは、その一つ一つを手に取って注意深く観察することにした。
まずは刀。これはどこにでもあるような造りの刀だった。
三尺足らずの直刀で、残念なのは酷く錆びているらしいこと。らしいと言うのは、鞘から抜こうにもガリガリと嫌な感触があって、引き抜くことが躊躇われたからだ。
まだもらえると決まったわけでもないのに、万が一にも折ってしまってはさすがに申し訳が立たない。そう考えたムジナは、無理に引き抜くのを諦めて次の物に手を伸ばした。
二つ目は弓。こちらも刀に負けず劣らず酷いものだった。
どうやら材はイチイのようだが、弦が切れているのは言うに及ばずで、それ以上にひどいのが弓全体を覆うカビ。
ハッキリ言って手に取ることさえも躊躇われるぐらいの状態で、とても実用に耐えられるような代物ではなかった。
そしてムジナが最後に手に取ったのは琴だ。
これについては、さすがに珍しい物だと思ったムジナ。少なくとも自分の故国では琴は生産しておらず、また、交易で手に入れようとすると、それなりに値が張ることも知っていたのだ。
しかしその琴も、ご多分に漏れず酷い痛みようで……
「これが一体何だと言うんだ?」
三つすべての品定めを終えたムジナは、ミズチに向き直ってそう尋ねた。
「分からぬか?」
「分かるわけがない。いいから言え」
先ほどから歯切れの悪い物言いをするミズチにイラつくムジナだ。
するとミズチ、とんでもないことを言い出して……




