第10節 智を授かる兄 兄の智を推し量る妹
侍女神の助力を得て国づくりを開始したミズチ。
民はすでにそこにあってそれぞれの使命を全うしている。
「まずは、税を取る仕組みを作りましょう。」
侍女神が言う。ミズチは税とは何かと問う。
「税とは、クニを発展させるために為政者が民から徴収する金品、でしょうか。」
「なるほど、ではこれより出来上がった作物は全て取り上げてしまうか。」
「いけません。」
侍女神が口を尖らせて咎める。
「税というものは取り過ぎてはいけませんし、取られても良いと思える見返りが必要です。」
「見返りとはなんじゃ?」
「個人ではできないような皆のためになる大きな事業を行うのです。」
具体的には灌漑のために水を曳く水路を建設したり、水害を防ぐための堤防を築いたりするのだという。
「なぜ取りすぎてはいかんのじゃ。」
多く税を取れば、その分皆のためになる事業ができるではないか。とミズチ。
「食べる物がなければ民は死んでしまいますよ。民が死に絶えればクニは滅びます。」
呆れるでもなく優しく諭す侍女神。
「ではクニとは民がいて初めて成り立つものなのか。」
「そうとも言えるかもしれませんね。」
民が死ぬとクニがなくなる。なるほどそういう事か。と得心するミズチ。
「では、どのように税を取ればよい?」
「そうですね。それでは……。」
まずはこの地に暮らす民がどのように生活しているのかを調べましょう。と侍女神は言った。
ついに地上が見えてきた。
飽き飽きするほどに落下を続けていたオオトリは姿勢を直してバサと翼をはためかせると、ふわりと地上に降り立った。
「兄神に会わねばならぬ。しかし地の底に潜るなど……。」
泥土にまみれた不浄の世界に自ら足を運ぶなどあり得ぬ。
そもそも地の底に何があると言うのか。愚かな兄神のすることは妾には理解できぬ。
そう考えていると、とあることがひらめく。
「地の底。不浄。そうか。」
兄神はそこを目指していたのか。
「なるほど、さすがは我が兄神。侮りがたい智者じゃのう。」
兄神の思惑は知れたが、であれば、なおのこと妾がかの地に赴くことは憚られる。
兄神、地の底、不浄の地……、思案を続けていると天啓が舞い降りた。
「そうじゃの、ではこの地に住まう者の力を借りることとしようかの。」
妾の智も兄神には負けておらぬ。
これならば確実に兄神に会える。オオトリはにやりと笑った。




