海洋恐怖症・続
この仕事をしていて、一番大変なこと。
被験者がこの状況で、どんな殺しかを考えられる余地を持たせて実験を考えることである。
今回の被験者5098番に対し、前回も前々回も、殺すと決めてから殺害まで、一年近く期間を設け、条件や対象の状況を限定させている。
それでも5098番は、感情的に殺す殺意を持って計画を立てたりせず、しっかり殺意の低下を目に見える数値として結果を出している。
人を殺そうとする殺意を低下させ、感情をしっかりコントロールできるようにしてあげる。
この実験を行う前に、我々のチームが最終目標として目指しているゴールだが、我々の担当している5098番はとても良い結果だと思う。
やっと我々の研究が人を救える。
この実験を行うにあたり、我々全員、罪悪感なる感情を感じないように改良した。
仮想現実とはいえ、何回も被験者に人を殺させる訳だ。シナリオを作り、被験者に殺人を強要させる。
今まで通りの感情を持ち合わせていると、おそらく我々の方が壊れてしまう。
そこで私を含めチーム全員、VRによる実験を行い、
罪悪感を消した。
実験開始から2ヶ月ほど経った頃、5098番は実験成功と呼べるまでに、殺意という強い感情をコントロールできるようになった。
そろそろ世間に発表しようと思っていた。
ただ、殺意を感じないということは、息をするのと変わらなく、何も意味もなく人を殺せるようになるということだ。
担当していた私の相方が、目の前で首を絞められ殺されるのを見ながら、恐怖に震えながらそう思った。
「なぜだ!私は君がより良い人間になれるように協力してやっているというのに」
「なるほど。君は実験として人を殺させていたことに対しての罪悪感はないわけだな」
罪悪感……
そうか、感情を一つ消すなら全て消さないと世界は変わらないのか……
白い床に自分から流れる赤い液体が広がるのを見ながら意識がなくなるのを感じた。
バンッと2発響いた後、刑務官は囚人として実験に参加していた5098番と、研究者として参加していた7002番と7059番の死体を確認した。
記憶を消して、実験に参加し、1000万円か。
この世の中の犯罪量を減らすために、感情を無くす実験はいつになったら、生きて成功と言える人が現れるようになるのだろう。




