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第五六話 成らず者


「――なっ、なんだとっ!?」


 宮中にある自身の部屋にて、伝令の言葉を聞くやいなや上擦った声を上げる大臣。


 その内容とは、鍛冶師ハワードがダンジョン化したユミルの神殿を攻略したものの、コアとなった枢機卿のシュラークを殺す形となってしまったというものであった。


(ククッ……私の予想とは少し違う形になったが、やった、やったぞ……! 枢機卿シュラークは信徒たちの人望を集めているだけでなく、ユミルや女狐リヒルの親友でもある。これでハワードの命運も終わりだっ……!)


 大臣はにんまりとした笑顔を浮かべてみせる。


(しかし、俄かには信じられん。まさか枢機卿のやつがコアだったとはなあ。あんなクソ真面目な男が心に闇を抱えておったとは……。まあ昔から真面目なやつほど怒らせたら怖いというから、得てしてそんなものか――)


 そこではっとした顔になり、前にいる兵士を見やる大臣。


「――そ、そうだ。それで勇者パーティーはどうなったのだ……?」


「はっ。なんでも、全員負傷しているためどこかで治療中とかで……」


「なっ……なんたる無様なことかあっ! もしコアがユミルでもシュラークでもなく、どうでもいいやつだったらどうなっていたかっ。想像するだけで吐き気を催すわっ……!」


「じ、自分に言われましても――」


「――だったら今すぐ消えてしまえぇっ、このアホ面めがあぁっ!」


「いでっ……!? は、ははあっ……!」


 大臣が伝令の頭を蹴り上げて追い出すと、これでもかと宙を睨み上げた。


(まあよい……。功名心に駆られたハワードに邪魔をされる格好になったから勇者パーティーは力を発揮できなかったということにすればよいのだ。これでリヒルの婚約者として勇者ランデルを推薦できるし、もしそれを断った場合、シュラークを殺すことに躊躇した心優しいランデルを選ばず、婿になりたいあまりシュラークを残虐に殺したハワードを選ぼうとするつもりなのかと責め立てればよいっ……!)




 ◆ ◆ ◆




「「「「……」」」」


 宮殿の地下にある、この上なく圧迫感のある薄汚い場所にて、勇者パーティーの面々が揃って鉄格子の前で沈痛の表情を浮かべていた。


「ちっ、畜生……なんで僕がこんなところに入れられなきゃいけないんだよ。おい、僕は勇者だぞ? 将来は絶対この国の王様になる立場なのに……! 今に見てろよ、ここから出て王様になったら、閉じ込めたやつらを家族ごと全員皆殺しにしてやる……!」


「ランデル、落ち着いて頂戴……」


「ルシェラ……これが落ち着いていられるかって! 今頃リヒルちゃんと盛大な結婚式を開いてるはずだったのになんでこんな目に……ちっくしょおおおぉぉっ……!」


「はあ……ま、見事に嵌められちゃったわね……。でも、まだ……まだ終わったわけじゃない……」


 ルシェラの目が怪しく光るも、その声はまったく力感がないものだった。


「はぁ……? もう終わったに決まってんだろうが……。俺らはあの大柄な信徒に何もかも見られてたんだぞ……」


 うずくまった状態で気怠そうな声を発したのはグレックであり、顔は青白く目元には誰の目にもはっきりとわかるほど隈ができていた。


「それは……そうだけど、モンスターだって信徒の姿をしてたんだから、最後までしらを切るしかないわ……」


「てかもう、それしかないよね……。僕たちは最初から最後まで、敵が信徒じゃなくて信徒姿のモンスターだと思ってたんだ、うん……!」


「……えぇん、お腹空いたよぉ……どうして……? ひっく……どうしてあたしたちがこんな酷い目に遭わなきゃいけないの……? なぁんにも悪いことなんてしてないのに……ただ楽しく遊んでただけなのに……えぐっ……」


「「「……」」」


 エルレの泣き声によってさらに重い空気に包まれる勇者パーティーだったが、まもなく乾いた足音が近付いてきて一転することとなる。


「――おっ、おいそこの兵士っ! ここから出してくれ!」


 一人の兵士の姿が見えた途端、血相を変えたランデルが鉄格子にしがみついて唾を飛ばしながら大声を上げる。


「僕たちは、何者かに嵌められたんだっ……! 信徒たちを虐殺したなんて言われたけど、あれはモンスターだと思ったからなんだ! 実際、モンスターも信徒姿だった! だから、頼むから信じて――」


「――お前たち、今すぐここから出るのだ」


「「「「お、おぉっ……!?」」」」


 勇者パーティーは互いに驚いた顔を見合わせたのち、口元に薄らと笑みを浮かべてみせるのであった……。

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